喜べ伍長、新しい仕事だ
初カキコ…ども…
列車がダグラス市に到着し、強盗団の身柄を引き渡したあと、市内の保安官事務所にて。
「サムター伍長、それに砲兵隊の皆、ご苦労だった!」
リー軍曹が労いの言葉を掛け、報酬が入った袋を手渡す。むこう3か月は働かずに過ごせるくらいの報酬だ。
「みんな、お疲れ様。それでは解散!」
ともに護衛をしていた砲兵隊とともに保安官事務所から出ようとするが……
「サムター伍長、ちょっと話があるんだが、良いかな?」
リー軍曹に引き留められた。しかも名指しで……何か嫌な予感がする。いらぬ心配だと良いが……
「喜べ伍長、新しい仕事だ」リー軍曹はそう言いながら事務所のイスに座り、執務用のデスクに手を乗せた。
……嫌な予感が当たった。このクソ軍曹のせいで数時間前まで銃撃戦をさせられていた。メチャクチャ怖かったんだが。銃撃戦など、向こう半年はやりたくない。――今度こそ断ろう。
「……これから風邪ひいて寝込む予定なので、仕事の話は無しでお願いします」
よし帰ろう。可及的速やかに帰ろう。クソ軍曹に背を向け、事務所のドアノブを握る――それとほぼ同時に「ジャキッ」という音が後ろから聞こえた。
「風邪なら鉛玉を使うのはどうだ?楽になれるぞ?」
冗談が過ぎるぞ。このクソ軍曹。
「……鉛玉は体に合わないので遠慮しておきます」
そう言って背を向け、再びドアを開けようとする
「なら銀の弾丸はどうかな」
リー軍曹が机の上に弾丸を一つだけ置いた。その弾頭は鉛のそれよりも輝いている………なんで銀の弾丸なんて持ってるんだよ、このクソ軍曹。
「鉛と銀、好きな方を選べ」
どうやら、今回も拒否権は無いらしい。
「……やっぱり受けさせてもらいます」
また、仕事を受けてしまった。次はどんな地獄に連れていかれるのやら。
「君なら受けてくれると思っていたよ!!!」
――クソ軍曹め。いつか脳天ぶち抜いてやる。
そう言いたくなる気持ちを抑え、冷静に質問する
「それで、今回の仕事内容は何ですか?」
「お尋ね者を探してきてほしい。ジェイムズ兄弟という2人組でな、3件の駅馬車強盗の容疑で指名手配中だ」
そう言ってリー軍曹はジェイムズ兄弟の指名手配書を渡してきた。手配書にはこう書かれている。
“兄ジェイムズ・エド、弟ジェイムズ・フォード。3件の駅馬車強盗、2件の殺人の容疑で指名手配中。2人とも右手に十字架のタトゥーが彫られている”
列車強盗といい、駅馬車強盗といい、一体全体なんでこのクソ軍曹はきつそうな仕事ばかり持ってくるんだよ……
そんな嘆きなど知ったこっちゃない、と言うようにリー軍曹は続ける
「どうやら、ここダグラス市のどこかに潜伏しているらしい。生死は問わないが、できることなら生かして連れてくるように。これは俺の勘だが、あいつらにはまだ余罪がありそうだ」
マジか。近所に凶悪犯がいるのマジか、ダグラス市。怖ぇー。
「ダグラス市はこの辺ではかなり大きい都市だからな。お尋ね者が潜伏するにはもってこいの場所らしい」
***
ひと通りの説明を聞き終えた後、サムターは保安官事務所から数ブロックほどの距離にある酒場へと足を運んでいた。今日の疲れを癒すためである。
――疲れた。今日はとてつもなく疲れた。
列車強盗と銃撃戦を繰り広げ、列車に乗り込んできた奴らと至近距離で戦い、挙句の果てに新しい仕事まで襲ってくると来た。……なんて日だ。そう嘆きつつも、情報をまとめる。
――リー軍曹の話によると、ジェイムズ兄弟はどちらも身長170㎝ほどでカウボーイハットに茶色のベスト、黒いカウボーイブーツ、右手に十字架のタトゥー。タトゥーは特徴的だが、それ以外はありふれた格好だ。正直言ってこの情報は役に立たない。あまりにもありふれすぎている。
現に俺の後ろのテーブルで飲んでいる2人組は指名手配書に書かれているのとまったく同じ格好をしている。身長170㎝程でカウボーイハットに茶色のベスト、黒いカウボーイブーツ、右手には十字架のタトゥー……んんんんん?
……2人の右手には十字架のタトゥーが彫られている。
おいちょっと待て。アレ、ジェイムズ兄弟じゃないか!?
酔っぱらっちまったのか?そう思ってソーダ水を頼み、一気に飲み干す。これで酔いは醒めたはず。
再びジェイムズ兄弟?を凝視しながら指名手配犯の特徴と照らし合わせる。……特徴は一致している。
いやいや人違いかもしれない。人違いであるはず。そうに違いない。もう少し観察せねば……
「なぁ兄貴」
「どうした?フォード」
あの2人は兄弟で、弟の方は「フォード」という名前らしい。名前まで一致している。もしかして、こいつらが……
――しばらく2人のことを観察していると、店に3人のグループが入ってきてジェイムズ兄弟?と同じテーブルについた。
「よう、エドとフォード」
新しく入ってきた男の1人は不機嫌な様子で話している。他の2人も不機嫌な様子だ。
「随分と不機嫌そうだな、ジャクソン。仕事が上手くいかなかったのか?」
「ああそうだとも!聞いてくれよ!保安官の野郎、俺らに大砲ぶっ放しやがった!」
サムターはジェイムズ兄弟?に怪しまれないように酒を飲みつつ聞いていた。だが「ジャクソン」という男の話を聞いた途端、口に入れていた酒を吹き出してしまった。
「お客さん、大丈夫か?」
酒場の店主がサムターのことを心配して話しかける
「大丈夫だ」
……そう口には出したが、内心ではまっっっっっったく大丈夫ではない。
なんでだよ!マジでなんでだよ!
意味不明な偶然が連発しているのでさっきから驚き続けている。そろそろ驚くのにも疲れ始めている。
――さっきのジェイムズ兄弟?の会話から分かったことが2つある。
まず1つ、新しく店に入ってきた3人は昼間の列車強盗だったらしい。
それともう1つ。ジェイムズ兄弟?の兄の方の名前は「エド」というらしい。兄のエドに弟のフォード……もう確定だろコレ。
ジェイムズ兄弟を見つけることはできたが、大きな問題が一つだけある。
コレ、どうやって捕まえりゃ良いんだ?
――ジェイムズ兄弟と列車強盗3人。1対5である
この文章の下に星マークがありませんか?
色がついた星の数だけ、幸運が訪れると思います。知らんけど。




