列車護衛②
「敵の射程圏内に入りました!乗り込んでくるものと思われます!」
砲兵隊も軽12ポンド砲の装填作業を中断して拳銃を手に取っている
カンッ!カンッ!パリンッ!
車両に弾が撃ち込まれ続けている。何発かは窓に窓に直撃し、社内に風が吹き込む
「俺は車両の左にいる奴らの相手をする。サムター伍長は右の奴らを頼む」
「イエッサー!」
客車の右側に取り付けられたドアを開けて外をのぞき込む
「6……いや8人だな」
(……あのクソ軍曹、敵が多い方を押し付けただろ)
――カンッ!
「――うぉっ!」
ドアに弾丸が直撃した。あと1mずれてたら俺に当たってた……。さっさと片付けないとクソ軍曹の文句も言えずに死んじまう
車両の床に伏せ、ライフルを構える――やはり揺れのせいで狙いが定まらない……当たりますように!
引き金を引く――ほぼ同時に強盗が馬から崩れ落ちる
「っしゃ!ワンヒット!」
カンッ!カンッ!カンッ!
喜ぶのもつかの間、反撃が来た。幸い、すべて車両に当たるだけで俺自身には当たらなかった
「――やっぱり伏せとくのが正解だったな」
エンフィールド銃は重心の先端側から弾を込めなければならないので、伏せながらだと装填が難しい――ドアから少し離れた場所起き上がり、弾を装填。再び伏せの体勢で敵を狙う
――銃口から白煙が噴き出したが、強盗も馬も健在……弾が外れたようだ。エンフィールド銃は命中精度が高いほうなのだが、揺れのせいで狙いが定まらない
「敵兵、乗り込んできました!」
最後尾の車両にいた砲兵隊が叫んだ
「クソッ!思ったより早かったな。リー軍曹!俺は砲兵隊のカバーをします!」
「了解した!」
ライフルから拳銃に持ち替え、砲兵隊のいる車両に移動。すぐに座席側に転がり込む。座席は硬いので、数発当たった程度ではびくともしないはず……どうやら砲兵隊も同じようにして持ちこたえているようだ
パァン!パァン!パァン!
「クソッ!右手をやられたッ!」
砲兵隊が一人やられたらしい……だが今の銃撃で敵味方の位置が何となくわかった。敵は車両の最奥。右側の座席に2人、左側に1人だ。
援軍に来たとはいっても膠着状態だな……試しにコイツを使ってみるか――20㎝程の大きさでダーツ状の物体を強盗団に向けて投げた。……ケッチャム・グレネードだ
――ケッチャム・グレネードは無事に強盗団の所まで飛んで行った
「ん……?なんだこれ?ってグレネードじゃねぇか!」
「正解。お前も『内戦』帰りか?」
「てめぇ!ぐぅッ!」「よくもッ……グフッ……」
まずは1人。撃鉄を再び起こし、続けて2人目。これで右側の座席にいる敵は処理完了。次は左側の1人だ。3人目に銃口を向ける
「何なんだよお前!……一瞬で……」
「武器を捨てろ。牢屋までご同行願いたい」
「クソッ!」
強盗が武器を捨てた。よし、制圧完了!
――俺はケッチャム・グレネードを投げた。中の火薬を抜いたやつだが。そもそもケッチャム・グレネードは北軍のゴミ爆弾だ。まともに起爆しないからな……南軍からするとありがたい武器だった
閑話休題
ケッチャム・グレネードに気を取られている隙に敵に近づく。で、制圧する……ただそれだけの簡単な作業で済んで良かった。そうでなければあのイカれ軍曹のせいで死んでた……
「――リー軍曹、乗り込んできたやつらは全員処理しました。1人は生け捕りです」
「おぉ!そうか!こちらも2人倒した。しかも撤退を始めたらしい。流石のあいつらでもダグラス市には近づきたくないようだな」
……何とか生きて帰れた。そう思うと、急に体の力が抜けそうになる――いかんいかん。まだ強盗に銃を突きつけてる最中だったわ
「そこの砲兵、こいつを縄で縛ってくれ――」
強盗を縛りあげ、これで一安心。やっと仕事が終わった。体の力が抜けるような感覚がして、客車のイスに座り込んだ。
……疲れた。ものすごく疲れた。乗り込んできた強盗どもに近接戦を仕掛けて制圧したのだ。給料が倍にならないものか……
「……なぁ、さっきの保安官補佐、その帽子……南軍のものだよな?
「そうだが……どうかしたか?」
縛り上げられ、拳銃を持った砲兵隊に監視されている強盗が尋ねてきた。
(今からひと眠りしようと思ってたんだけどなー……。めんどいなー……)
「どこの部隊に所属していた?」
「北ウィルギニア軍第1軍団で歩兵をしていた」
「『勇者』と呼ばれていたことは?」
「……どこかの戦場で会ったか?」
『勇者』としての俺について知っているらしい。世間に名を知られるにしても、政治家とか将軍とか、そういう立派なので名を馳せてみかったなぁ
「直接会ったことは無い。北軍にいた頃に『勇者』について聞いたことがあってな……それに、この辺りで用心棒をしているっていう噂話も聞いたことがある。まさか本当だったとはな……もっと殺人鬼みたいな奴だと思っていたんだが……」
前にも言ったが、俺は殺人鬼なんかじゃない。その辺にいるフツーの合衆国市民なんだよ!フツーのお兄さん……というにはもう若くないけど、フツーのおっさんなんだよ!
――そう叫びたかったが、我慢した




