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突然の訪問者

 またまた、退屈な授業の連続攻撃を無事振り切った居眠り野郎、才谷和樹。今日はいつにも増してグッタリとしていた。理由はただ一つ。この日の朝に話は戻る。

 いつもはアラームの音を三十回ほど聞いたところで布団からずりずりと這い出てその騒音を止めるが、この日は陽の光を浴びて自然に目が覚める。こんな素敵な目覚めをするのはいつぶりだろうか。なんでこんな目覚め方ができたのか。理由は簡単だ。ここがキャンプ場だからだ。和樹はスマートフォンの表示を見る。【月曜日】。月曜日?月曜日といえば、俗世では平日と呼ばれる曜日だ。そしてそれは当然の如く高校生である和樹にも当てはまる。何も考えずにキャンプに来たが、よく考えればあの日は日曜日だった。当然次の日は学校がある。時間は五時半を回ったところだった。結論から言おう。まだ間に合う。


「早くしろ父さん!俺の皆勤賞無くなったらアンタのせいだからな!!」


「運転者を焦らせるもんじゃないよ!」


「おじさんがんばれー。」


「いや、千影も学校行けよ。」


こんな感じでかなりギリギリでの到着となり、そこから退屈な授業六連発を喰らった結果がこうである。というかこんなにダラけている和樹が皆勤賞を狙っているなんて珍しいと思っただろう。こいつも同じことを思っていた。


「へー。才谷って皆勤賞狙ってんの?意外じゃん」


部室でお茶を飲みながら秀が茶化すように聞いてくる。


「まあなー。深い意味はないんだけどな。なんとなくだ」


「深い意味なくないでしょ、才谷。」


美月も話に参戦してくる。


「どういうことだよ才谷?」


「才谷はね、小学校の頃お母さんに皆勤賞を褒められて以来、ずっと頑張ってるのよね」


和樹の母親はもういない。だが、生前その母親が褒めてくれたもの。その一つが皆勤賞だった。


「まあもうこだわる理由にはならないけどな。疲れたし明日休もうかな。」


「こら、才谷。お母さんが可哀想よ。それに私はアンタのそういうところ、…その、結構好きなんだから。」


和樹は少し驚いて美月の方を見るが、彼女は頬を膨らませて窓の外を見ていた。ヒューヒューと秀がうざったい中、美月が一言言った。


「才谷、私たちってアンタの家行ったことないわよね。お母様にお線香もあげたいし、一度連れて行ってもらえないかしら」


和樹はまさかの発言に少し驚いた。


「おお、いいね!才谷の家って喫茶店なんだろ?なんか上手いもの出してくれよ!」


「秀、失礼でしょ」


「いいぜ。なんなら今日来るか?晩御飯とか一緒に食べようよ」


偶然全員の予定が噛み合ったことにより、まさかの本日開催となった才谷家突撃。まあ、父親には普段から秀や美月の話してるし、第一いきなり現れた謎の女・ミチュすらも受け入れたんだから大丈夫だろう。


 カランコロンカラン、といつも聞いている音が鳴り響く。だが、秀と美月には新鮮に響いたようで目を輝かせていた。


「いらっしゃいませ。おや、和樹。お友達かい!」


「お邪魔します。いつも和樹くんと仲良くさせていただいてます、高城美月です。」


「え、あ、唐木秀です。」


「これ、よろしければお菓子買ってきたので皆さんでお食べください。」


美月ってこんな喋り方できるんだ。ギャップ萌えかもしれない。


「父さん、二人が母さんに線香あげたいってさ」


「おお、そうかい!ならこっちだよー」


秀と美月が父に連れられて奥へと向かう。喫茶店の隅っこでは千影が小さくなっていた。緊張しなくても大丈夫だよ、というアイコンタクトを送ったが多分伝わっていない。そういえばミチュがいない。買い出しにでも行ったのかと納得して、秀たちの後を追う。

 手を合わせ終わると、せっかくだからご飯を食べていきなさいという流れになった。やっぱり。そしてその流れで千影も一緒に食べることになったのだが、これが地獄の始まりだった。


「え、えーと。こちらが俺の所属してる文学部のメンバーの」


「部長の高城美月!よろしくね千影ちゃん!」


「ヒラ部員の秀でーす。よろしく」


「えー、そしてこちらが俺の幼馴染の」


「千影ー。」


それだけ言うと千影はハンバーグを頬張り出した。なんというか、千影は別に人見知りとかではない。本当に他人に興味がない、そして自分のことを他人に知ってもらおうとも全く思っていないのだ。結果、夕食会は千影以外のトーク会となり、たまに美月が千影に話を振るも大した会話も続かず、微妙な空気のまま終了した。


「気をつけて帰れよ」


「ありがとう。お邪魔しました。」


「また明日なー!」


美月と秀は帰ってしまった。


「私も帰ろうかなー。じゃあねー。」


千影も帰宅だ。さっきの食事会は明らかに地獄の空気だったが、千影は全然そうは思ってないらしく。いつも通りコロコロと帰って行った。


「誰か来てたんですかー?」


その時、どこから出てきたのかミチュが奥から現れた。


「おーいミチュちゃん、どこにいたんだい?ご飯はもう済ませちゃったよ!」


「私も食べてきました。ご心配をおかけしました。」


だが、家の出入り口はこの喫茶店の扉しかない。これが開けばカランコロンカランと音がするはずだ。ミチュはいつ外に出たのだろうか?そもそも本当に外に出たのだろうか?わからないことは多いが、この日は朝からの疲れが激しく猛烈な眠気に襲われ、そのまま床についた。

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