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光速を超えて

 ある日、世界は変わった。日本のある研究者が、長年フィクションだけの存在だと思われていた発明を実現させてしまったのだ。それが『タイムマシン』であった。

 和樹がこれを知ったのは、美月、秀と久々に飲み会をした時の居酒屋に設置されているテレビだった。なんの前触れもなくある日突然発表されたその発明は、世界を大きく揺るがした。あらゆる人種、職業、性別、宗教の人々が熱狂し、より良い未来がきっと訪れると、そう信じていた。だが、世界はそう甘いものではなかった。

 当然だが、タイムマシンなんていうものを全人類が使えるようになってしまっては今までの歴史がめちゃくちゃになってしまうだろう。そのため、この問題は国際会議の決議によって、この場で許可を得た人物や団体のみが使用できるように決定された。だが、それが問題だった。

 タイムマシンでの幸せに胸を膨らませていた人民は、結局これでは何も変わらないと不満を露わにしたのだ。世界中で大規模なデモが発生した。そして、その流れをさらに大きくしたのがある大国の存在だった。その大国は、タイムマシンの使用権などを独占するべく世界中の大規模なデモ隊を取り込んで戦争を始めたのだ。

 その国の軍事力はあまりにも高く、一番最初にタイムマシンを生み出した国である日本では全く歯が立たなかった。

 焼け野原になった旧大都市をただ茫然の眺めていた美月は、なぜこうなってしまったのだろう、とそれだけを考えていた。秀はいち早く海外へと亡命することができたが、和樹は帰らぬ人となってしまったのだ。世界をより良くするために生まれたはずのタイムマシン。その発明が、世界を悪い方に大きく変えてしまった。そんな美月に話しかけてくる誰かがいた。


「あなたは美月さんだよね。私のこと、覚えてる?」


「……わかりません。誰ですか…」


「残念だ、私の名前は色谷。タイムマシンを作った張本人さ。」


「色谷…?」


ボロボロの白衣にボサボサの髪。そんな彼女はどこか遠い場所を見るような顔をして、こう言った。


「和樹を助けたいんだろう。これは提案なのだが、君は過去にいく気はないかい?生憎私はここでやらなければならないことがたくさんある。本当は私だって和樹を助けたい。」


「あなたは一体誰なんですか!何者なんですか!」


「ただの和樹の友達だよ」


「……本当に助けられるんですね。わかりました。私、行きます。でも、どうすれば良いんですか」


「そうだね。なんとかしてそれを過去で模索してほしい。………最悪の場合、過去にいる私を殺しても構わない。そうなれば、タイムマシンはこの世界に生まれず戦争も起きないだろう。」


「そ、それでいいんですか」


「構わないよ。和樹が帰ってくるなら。でも、もしも良ければ他の方法も考えてみてほしいな。」


「でも、タイムマシンは特別な許可がないと使えないって」


「私は発明者だぞ?一個くらい隠し持ってるさ。ただ、プロトタイプだからなあ。もしかしたらうまく時間遡行できないかもしれない。それでも行ってくれるかな?」


美月は心に決める。絶対に過去に戻って、大好きだった和樹を助けよう。例え、この色谷という女を殺すことになっても。

 だが、色谷の説明通りそんなにうまくはいかなかった。その銀の筒のような見た目をしたタイムマシンは八、九年ほど遡ったところで警告灯が点り始める。それと同時に大きなアナウンスがかかり、美月は顔を顰めて悪態をつく。結局十年ほどしか遡ることはできなかった。過去に戻れば戻るほど時間があるので、色谷が生まれた直後くらいまで行くつもりだったのだがそれは無理だったようだ。

 山奥に不時着したタイムマシンと美月。だがそこから見えた夜景は心を震わせた。確かにあの戦争で失われた輝きだったのだ。本当に過去に来たんだ。こうして始まった美月の想いは、光速を超えて和樹に届く。

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