チャプター1 「誕生」
いよいよ「セーラー服と雪女」
からのスピンオフの本命です。
真田雪子の生い立ちに迫ります。
勝和でもなく、翔和でもなく、証和でもない。
それはもちろん、我々の良く知る昭和でもない。
「照和」40年2月11日。
早朝に雪子は生まれた。
幸いなことに五体満足、元気一杯である。
帝王切開の難産であったが、母の恵も無事息災であった。
先ほど駆け付けた父の真田英二も、ホッと胸を撫で下ろしたところである。
「雪子、私の雪子。元気に生まれて来てくれてありがとう。」
嬉し涙の母と父に向かって、早くも笑顔を見せる雪子であった。
この時すでに、雪子は自分のことを第三者のように俯瞰できていたと言う。
それがどういうことかも解らないうちにである。
それどころか、以後大人になるまで、自分の人生のどの時期も並列に感じ取ることが可能であり、過去、現在、未来の区別が意味を為さなかったという。
そして、いつでも好きな時期の自分に、意識をシンクロする能力があるのだと、本人は語っている。
しかし、それさえも、彼女の能力のほんの一角に過ぎない。
長じてからは、次第に自分の時間軸とは別の並行世界にまで意識を飛ばすことが可能になっていったのだ…それにちょっとした念動力も。
ここからは、彼女の能力の開花の過程を、その成長とともに、かいつまんで語っていきたい。