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焔に咲く九尾の華  作者: 焔夜 夕
第二章 音もなく、這い寄るもの
6/9

【腐り根、洗えども】

その日の夜更け、里の人々が寝静まった頃。

野狐(やこ)の姿で里へ降りた私は、畑をひとつひとつ、見て回った。


鼻先を土に擦り付け、地の底から湧き出すようなどんよりとした気を、

そっと吸い込む。

次から次、一晩のうちにすべての畑を吸い切り、

最後に里長の家へ向かった。


庭に入り、縁側から、漂う気配をたどって寝室を探す。

濁った気配があるので、すぐにわかった。

しかし、人の気配がして、庭木に身をひそめると

寝室から、惣真さんが出てきた。


『こんな遅くまで看病を…?体調が悪化しているのかしら…?』


心配を胸に、完全に人の気配がなくなるまで身をひそめ

そっと前足で寝室の障子をあけて、里長の様子をうかがう。

寝息はかすかに浅く、どこか苦しげだった。


近づいて、鼻先をそっと胸に当てる。

昼よりも重く、黒くなっている気に驚きながら

私はそれを吸い込んだ。

体にどんよりとたまった気で、めまいがする。

あまりの量に吸いきれず、鼻先を離して様子を見ていると

呼吸はだんだん深くなり、規則的な寝息を立て始めた。

少し残ってはいるが、あとは体力でなんとでもなる程度だ。

しばらく様子を見て、私は里長の家を後にした。


神社に戻り、拝殿の静かに燃える狐火へ黒い気を吐き出す。

ごぉっと音をたてて、猛々しく燃え盛り、

やがて、黒いものを焼き尽くして、再び静かに眠るように、元の大きさに戻る。

私も、そのまま疲れ果て、少し白んだ空を薄目に見ながら、

深い眠りの湖の底へ沈んだ。

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