episode4
梨々香side
「今日は来てくれてありがとう。蘭に見てもらえて嬉しかったよ」
夜、自分の部屋でそうLINEを送った。スマホの画面を見つめながら、何度も打ち直して、やっとの思いで送った一文だった。
でも、返ってきたメッセージはそっけないものだった。
「お疲れさま。すごくいい試合だった。」
たったそれだけ。絵文字も、スタンプもない。気を遣わせてしまったのかな……?
梨々香は少し蘭に対して申し訳ない気持ちになった。
次の日、隣の席の蘭に話しかけた。でも返ってきたのは少しそっけない返事。
廊下の向こう、教室の隅――気づけば何度も目で追ってしまう。
話しかけようとするけれど、蘭の返事はどこかよそよそしくてつんとした態度。
悲しいというより切なくて胸の奥がきゅっとなる。
それでも、他のクラスメイトには普通に接している蘭の姿を見るとどうして私にはあんな態度なのだろうと心がざわついた。
私は蘭にとって特別な存在じゃなかったのかな。
やっぱり私がうぬぼれていただけだったのかな……
あの時、あの笑顔は、私だけに向けられていたんじゃなかったの……?
公園にも、蘭はもう来ない。
毎日のように見ていたダンスも、あの背中も、見えなくなってしまった。
ひとりきりの帰り道、空はどこまでも青くて高いのに胸の中には雲が立ち込めたままだった。
「蘭のダンス。もう一回みたいなぁ」
そうつぶやいた声も誰にも届くことはなかった




