episode27
「そろそろ文化祭の出し物、決めないとね!」
HRにて2年A組の教室に響いた明るい声。
いつものように、誰かが口火を切るとすぐに意見が飛び交い始めた。
「やっぱり劇じゃない? 今年も!」
「うん、梨々香と蘭が主役なら間違いないし!」
「去年のシンデレラ、めっちゃ盛り上がったもんね!」
口々に上がるのは、去年と同じく“梨々香と蘭が並ぶ舞台”の話題。
演技経験があるわけでもないふたりが、舞台に立てば空気が変わる――そんな特別感を、誰もがまだ憶えていた。
けれどその中心にいたふたりの表情はあの時とあまりにも対照的だった。
「――あの、梨々香は今年、生徒会長としてすごく忙しくて……」
一歩早く、麗が立ち上がる。声は落ち着いていたが少しだけ焦りが混じっていた。
「それにテニスの大会も控えてて、さすがに難しいと思う」
「あ……うん、ごめんなさい。今年はちょっと……」
梨々香もその言葉にすぐに続いた。笑顔は崩さなかったけれど、瞳の奥には少しの迷いがある。
みんなの期待も、思い出も、全部わかっている。それでも――。
「私も……ダンスの方が忙しくなってて」
蘭もまた、少しだけ間をおいて口を開く。
静かな声。でも、確かに“やんわりとした拒絶”のニュアンスがそこにあった。
沈黙。教室には一瞬、寂しいような空気が流れる。
けれどそれを察した誰かが、ぽつりと口を開いた。
「じゃあ、メイド喫茶とかどう?」
「それいい! 手が空いてる子だけで交代すればいいし!」
「じゃあ、それで決定ー!」
軽やかに話は流れていく。明るい声が教室に戻る。
だけど――
その中心にいたはずのふたりは、言葉を交わすことなく、ただ静かに座っていた。
放課後テニス日部室内--
部活が終わり梨々香が一息つきながら着替えているその時、「織谷さん」と声がかかる
後ろを振り向けばそこには田中先輩の姿があった
嫌な記憶を思い出し身構えながらなんですか?と聞けば
「あなた生徒会長ってことは審査委員よね?
先に整理券を渡すからうちのクラスに来なさい」
文化祭審査委員長である自分がスムーズに団体を回りやすいように配慮した言葉に梨々香は呆気に取られる
「わかりました、お気遣いありがとうございます」
そう言いながらチケットを受け取ればニヤリと笑いながら去っていく田中先輩
理解不能な行動に眉を顰めながら着替える梨々香だった




