episode24
「忙しいなら……私、時間つくるから!」
梨々香の声は震えていた。
それでも、蘭の手を離すまいと必死だった。
蘭の瞳が揺れる。けれど、その奥に宿った感情は、もう止められないほどに溢れ出していた。
「――いつも、そう言って……結局、他のことばっかじゃん」
抑えていた想いが、堰を切ったように口からこぼれ落ちる。
「部活に生徒会、恋愛なんて、二の次なんでしょう? いつだって、完璧な梨々香でいたいだけで……」
「違う!」
梨々香の声が重なる。
「蘭だって、ダンスのことなんも言ってくれなかったじゃない。 一緒に生徒会、やってくれればよかったのに……」
涙がにじんだ瞳で、梨々香は蘭を見つめる。
梨々香の口から溢れる言葉はもう止まらなかった
「私の家のこと、知ってるくせに……。なんでわかってくれないの」
蘭は目を見開き、そして小さく、笑った。
その笑みは、寂しげで、でもどこか安堵したようでもあった。
「……やっぱり、私たち……別れた方がいいみたい。お互いのこと全然理解できていないもの」
蘭の声は、まるで自分に言い聞かせるように優しく響いた。
「……やだ」
梨々香は蘭の腕を掴もうとする。
「やだよ、待って……蘭……っ!」
でも、蘭はもう背を向けていた。
そして、ハロウィンの喧騒に紛れるように、人混みの中へ――
「蘭!!」
梨々香の叫びも、仮装の笑い声や屋台の呼び声にかき消されていく。
追いすがる足が止まる。視界が滲み、もうその姿は、どこにも見えなかった。
取り残された夜の街で、梨々香はただ立ち尽くしていた。




