episode22
──放課後、生徒会室での仕事を終えた後。
梨々香は手帳を広げ、スケジュールを確認していた。
(今週も……来週も……ほとんど埋まってる)
書き込まれた予定の中に、ひとつだけぽっかりと空いている日付があった。
「10月31日 ――予定なし」
ハロウィン。その日だけ、何の予定も入っていない。
(……蘭と遊びに行こうかな)
その瞬間、胸の奥がふっとあたたかくなる。
もうずっと、まともに話せていない。蘭のダンスのことも、事務所のことも──本当はちゃんと聞きたかったのに、時間がないことを理由にして遠ざけていた。
(会って、話したい。ちゃんと、面と向かって
それに休日にどこか出かけるなんて何気に初めて)
思い立つと同時にスマホを手に取り、蘭にLINEを送る。
「ハロウィンの日空いてる?
空いてたら一緒にいたい。」
送信してから、すぐに既読がつかないことに気づく。
(忙しいのかな)
自分も人のことは言えない。でも、今はただ少し、寂しかった。
1時間後、よ蘭から返事が届く。
「空いてる。それに話したいことがある」
それだけだった。
句点もなく、いつもの絵文字もない。
どこか、距離を感じるような文面。
(話したいこと……)
何となく、胸の奥に小さな棘が刺さった気がした。
不安が喉の奥に滲み、息を詰まらせそうになる。
──そんな時、
「織谷先輩、今いいですか?」
背後から後輩の声がして、梨々香は思考を止めた。
笑顔を作って振り返る。
「うん、大丈夫。どうしたの?」
(今は、考えても仕方ない……)
無理やりに心を切り替えて、梨々香は後輩の方へ歩み出した。




