episode2
放課後の部活が終わり、テニスバッグを肩にかけながら校門を出る梨々香の後ろ姿を横浜麗はじっと見つめていた。今日もまた梨々香は一緒に帰ろうという麗の誘いを断って一人どこかへ行く。
「……ねえ、梨々香って、最近部活終わりいつも忙しいよね?」
休憩中に軽く聞いてみたときも、梨々香は「ちょっとね、」と曖昧に笑っただけだった。
自分に隠し事をしている、そう確信した麗は放課後校門の影に隠れて梨々香の後をつけることにした。
足音を忍ばせてついていくと梨々香はいつもより遠くまで歩いていき小さな公園の一角で足を止める
そこにはクラスメイトの一人、一条蘭の姿があった。
ひと気のないベンチの横、舗装されたスペースで蘭はひとり音のない音楽に合わせて踊っている。
その姿を梨々香はじっと見つめていた。
言葉も、動きも、息遣いすら忘れたように。
その横顔に浮かぶ微笑み――それは、麗が今まで見たことのない表情だった。
いつも自分に向けてくれる、誰にでも優しいあの笑顔じゃない。
もっと深く、もっと個人的な、心からこぼれるような微笑み。
(私、梨々香の親友なのに、なのにこんな顔私知らない)
ダンスが終わりそっけなく対応する蘭と笑顔で話す梨々香。
自分の知らない間に知らない梨々香がそこにはいた。
胸にじわりと湧いた悔しさと寂しさを麗は押し殺すようにその場を離れた。




