episode7
スマホの通知がなる。
そのたびに梨々香はため息をついていた。
田中先輩:今週締め切りの書類は提出したの?ほかの人に聞いたら織谷さんが出したという話だけれど、なぜ私に確認がないのかしら
毎日来る田中先輩からのLINEに梨々香はため息をつきメッセージの通知ごと切ってしまう
返信しなければ明日の部活で嫌味を言われることは明白だったがそれでも梨々香はスマホをベッドに投げ生徒会の仕事にとりかかった。
次の日テニス部の部室ではやはり今日も田中先輩の指導という名の嫌味が飛んでいた。
「織谷さんは、副キャプテンなんだからさ。
部活に顔出すだけじゃなくて、もっと積極的に後輩の面倒も見なさいよ
それから昨日のメッセージは見たかしら。見たのならどうして返信がないの?」
「はい……すみません」
もう何度目になるか分からない言葉を、梨々香は困ったような笑顔で返す。
口調は穏やかでも、田中先輩の言葉にはいつも棘があった。
特に麗がいないときには、それがひどくなる。
へとへとになりながら帰路につきベッドへ倒れこむ。
──通知音が鳴った。
また、先輩かもしれない。
そう思うとスマホを開く手が止まる。
誰から来たメッセージかも確認せずに梨々香はポケットにスマホをしまった。
ふと、帰り道の掲示板でなつまつりのポスターが目に入った。
カラフルな紙に「星羅市 夏の夜まつり」と太い筆文字。
(蘭と……行けたら、きっと楽しいだろうな)
自然と、そんな未来を想像してしまう。
人混みの中で、蘭が手を取ってくれて。
いつもの静かな公園とは違う、きらきらした場所で──
でも、その小さな想像は、すぐに現実に押し流される。
「織谷先輩、実は相談したいことがあって、一緒に帰ってもいいですか?」
後輩の声に、梨々香はハッとして微笑んだ。
「うん、勿論。相談したいことって何かな?」
──蘭の顔が頭の中から遠ざかる。
ポスターのことも、さっき思い浮かべた未来の景色も。
全部、また「あとで」で流されていく。
スマホの中で、蘭がどんな気持ちで待っているのかも知らずに。




