プロローグ
桜がまだ校門に散り残る季節。中高一貫である私立星羅学園の高等部は格式ある制服と石造りの校舎が映える由緒正しきお嬢様学校。
そして1年A組、織谷梨々香
文武両道で誰にでも優しい、けれどどこか触れがたい雰囲気を持つ茶髪の少女。
そんな彼女の隣には、金色の髪を高く結った美少女――横浜麗。
そんな2人はテニス部に早々入部し、入学早々その実力で話題をさらっていた。
だが、梨々香の心は時折ふっと遠くを見る。
誰にもいえない彼女の秘密。
優等生として期待されること。それでも笑って「平気だよ」と返してしまう自分。
そんなある日。
下校途中の公園で、ふと目にした少女。
――一条蘭。
誰もいない場所で、きれいな黒髪を揺らしながら独り音もなく踊っていた。
静かに、けれど何かに抗うように。美しく、でもどこか苦しそうに。
「……綺麗。」
思わず呟いた声に、蘭の体がぴたりと止まる。
鋭く振り返った視線は、まるで刺すようだった。
「……見ていたの?」
「うん。ごめん。でも、すごく、綺麗だったから。」
「勝手に見ておいて勝手に褒めないで。」
冷たい声に梨々香は少しだけ笑った。
そうして始まる、2人の物語。




