episode11
蘭side
陽が傾きはじめ、空は茜色に染まりかけていた。
蘭は一人、公園の静かなステージで踊っていた。
身体は正確に動いているはずなのに、何かが足りない。
リズムの中に入り込めない。
(どうして……来てくれないの)そう思ってしまう自分の自分勝手さに嫌気がさした。
何度も踊りながら、何度も周囲を見渡した。
でも、梨々香の姿はなかった。
昨日のあのやりとりが頭をよぎる。
自分の感情をぶつけすぎたこと。
梨々香の言葉も聞かず怒ってしまったこと。
(私、また……梨々香を傷つけてしまった)
雨の中、ずぶ濡れになってまで自分を待ってくれた梨々香。
秘密にしていた過去を打ち明けてくれた梨々香。
あんなにも心を開いてくれた梨々香の話をどうして聞けなかったのだろう。
「ごめんなさい……」
小さく呟いた声は、夕焼けの中に溶けていった。
梨々香side
夜の校舎に灯る明かりの下、梨々香はプリントをめくりながら心ここにあらずだった。
(蘭……今日もいるのかな、公園)
毎日部活、生徒会に日々の勉強、そしてテスト対策。
最近帰るのが遅くなっていた梨々香は両親にスケジュールを管理され公園に向かう時間を取れないまま数日が経っていた。
「蘭に、謝りたいのに……」
ペンを持つ手が止まる。
あの日、ちゃんと説明できなかったこと。
麗が公園にいたのは偶然だったこと。
私が誰にも言いたくなかった“秘密”を、蘭にだけ打ち明けたんだって、伝えたかったのに。
でも時間は過ぎていき、蘭はきっと、自分のことを信じてくれなくなっている。
(どうして、私はいつも……大切な人を、苦しめてばかりなんだろう)
そんな思いが胸の奥を締めつける。
そのままノートを閉じると梨々香は小さくつぶやいた。
「蘭に会いたい……」
しかしその願いは叶うことなく梨々香と蘭は夏休みの間一度も会うことなく新学期へ突入する




