episode8
麗が蘭に謝りに行った頃の放課後の教室。
陽が傾きかけた窓辺に梨々香は一人、机に肘をついていた。
今日、蘭にすべてを打ち明けた――抱えていた苦しさも弱さも――。
それを受け止めてくれた蘭の優しさを思い出しながら梨々香はふわりと笑みをこぼす。
(少しだけ、近づけたのかな……)
心が軽くなったようで頬にあたる風も優しく感じた。
だから次の日の朝、いつもより気さくに話しかけた。
だけど――
「……うん、別に」
「そう」
蘭の返事は、あまりに淡々としていて以前より冷たくすら感じた。
期待していたような昨日の続きを感じさせる雰囲気はなかった。
(あれ……? どうして……?)
胸の奥が少しだけきゅっと締めつけられる。
話しかけた自分が一方的に浮かれていたようで恥ずかしさと悲しさが同時に押し寄せた。
廊下を歩きながらふと蘭の後ろ姿が視界に入る。
他のクラスメイトに話しかけられても蘭はいつも通り――むしろ昨日の梨々香よりも柔らかい表情で対応していた。
(どうして私にはあんな風にしてくれないの?)
一瞬、胸に小さな嫉妬が芽生えすぐにかき消した。
それよりも今は蘭の変化のほうが気になった。
(私が本当のことを話したから蘭を困らせちゃったのかな……)
あの日のぬくもりは夢だったのかと思うほど、今日の蘭は遠かった。
梨々香は、教室の窓に手をついて呟くように自分に問いかけた。
「蘭は、今……私のこと、どう思ってるの……?」
切ない声が、窓の向こうに消えていった。




