私が求めたもの
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
私が求めたもの
いや、私は単に密室トリックを求めたのだ!
小道具としての針金細工の蝶々は存在しない……
密室成立に必要なのは……
殺人……
生首ではなく……
首無し遺体だった……
床のウェディングドレスの上に近藤社長の生首が……
社長がブリキの花嫁となって離れに飛び込む。
ドアはチェーンで施錠されている。
そして、社長の生首が床に……
密室殺人……
私はナタで密室を破って突入した。
離れは密室でなければならなかった。
中に犯人――良美ちゃんがいてはいけなかった。
それでは本格ミステリーが台無しになる!
だから……
シングルベッドの上のそいつが……
生きた良美ちゃんではなく……
首のない遺体だったら……
その時、私は首無し遺体を求めていた!
密室殺人ではなく、密室でよかった……
密室に死体がある必要はなかったが……
密室を破った以上、中に誰もいてはいけなかった!
ドアチェーンで施錠した本人が中で生きていては密室に成らない!
死んでいなければ……
しかも、状況から首のない……
明確な他殺体でなければならなかった!
幸い、良美ちゃんは男だった!
首がなく、誰だかわからなければ……
それが近藤社長の遺体だと……
読者に……
ああ、私は現実の殺人事件を目の前にして……
読者の事を考えていた!
うまく書けば……
うまく読者を騙せれば……
叙述トリックとして成立させれば……
気が付いた時、私の手には血に塗れた牛刀があった。




