ほんの少し予想及び期待からかけ離れていた
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
ほんの少し予想及び期待からかけ離れていた
首はあった。
生きている首、生首。
くだらない言葉遊び!
良美ちゃんは生きていてシングルベッドに浴衣姿で横たわっていた。
頭にバケツを被ってただじっとしていたのだ。
バスルームの首なし死体が人体模型だと気づいた時、ベッドの上は良美ちゃんがバケツを被って寝ているのだと予想し、期待したのだ。
第二部 太陽が眩しかったから
五章
続き……
しかしそれにもかかわらず、僅か数分のうちにショックを受けたように彼はふらつき脚がもつれていた。何かがほんの少し予想及び期待からかけ離れていたのだろうか? 彼はしばらくそのまま、立ったまま固まってしまった。
そう書いている。
僅か数分……
いや、数分で充分だった。
その数分で何があったのか?
勝男の最後の言葉
そこにこう書いた。
離れのシングルベッドに仰向けになり勝男は笑って私を見上げていた!
「あれを見ただろう? あのクーラー・ボックスの中を!」
私は勝男の言葉を呆然と聞いていた。
「でも、殺したのはこっちじゃない! カルディナを見たんだ。姉さんを殺したのはそっちなんだろう?」
勝男が不意にそう言った時――
私は何も言えず、ただ黙って勝男の話を聞いていた。
「サイコパスは病気だ! フィクションなんかじゃ何も満足できやしない。しかし、殺人は犯していないんだよ。確かにサイコパスだが人を殺めてはいない! ただ牛刀を他人に突き刺すその手の感触を欲しただけだ。姉さんの遺体を見て確かにゾクゾクしたさ。しかし、殺人は犯してはいない。やったことはただの死体損壊! 法定刑は懲役3年以下!」
それでも私は何も言えない。勝男は更に続ける。
「妻は二階の寝室で死んだ。いや、そっちが殺したのだ! そっちでも瀉血処理を止められたはずだ。医学的技術は必要ない。ただチューブを――腕に刺さっている針を引き抜いて、そこを押さえればよかった。その程度なら素人でもできただろう? 確かに妻の瀉血処理を開始したのはこっちだが、そっちはそれを止めなかった。殺したのはそっちなんだよ。仮に瀉血処理で死ななかったとしてもだ。その後、確かにこっちは妻の胸に牛刀をぶち込もうとしたが、そっちはそれを止めなかった。一旦はこっちの腕を押さえはしたが、それをそっちは自ら緩めたんだ。妻を殺したのはそっちだろう?」
確かにそうかもしれない……
「そっちこそが二人の良美を殺したんだ。姉の良美と妻の――」
それが勝男の最後の言葉だった。
いや、勝男の最期の言葉にしたかった。
離れのベッドにサイコパスの勝男が仰向けになって私を見上げている。勝男の顔から笑いの表情が消えたが、その後の数分は私にとって地獄だった。
その後の数分は地獄だった――
勝男への殺意
という章に彼に抱いた殺意を吐露している。
私は勝男を――良美ちゃんの顔をした勝男を斬首して殺害した。




