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バケツの中身(予想し、期待したもの)

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。



   バケツの中身(予想し、期待したもの)

 

 第二部 太陽が眩しかったから

 五章

 

 ――まず、やらねばならぬのは……

 誰か隠れてはいないのか?

 それが一番重要だったはずだ。

 

 そう書いている。

 ブリキの花嫁は良美ちゃんで近藤社長の生首をバケツに入れて離れに持ち込む――そうなっているつもりだった。

 しかし、二階にバケツは一つしかなく、階段のいちりとせも幻になった。

 ただ、水沼がブリキの花嫁を近藤社長だと信じてくれたらまだ大丈夫だった。

 

 第一部 月は笑うが……

 十二章

 

 良美ちゃんがウェディングドレスを脱ぎ捨てて即座に離れから飛び出して来てくれさえすれば……

 そんな僅かな時間に近藤の斬首が行えるはずはなく、良美ちゃんの犯行でないことは立証される――そういうトリックになるつもりだった。

 密室はどこにも存在しないが、良美ちゃんを助けるトリック……

 

 しかし、良美ちゃんは飛び出して来なかった。

 

 ――良美ちゃんも誰かに殺されたのか?

 そう考えた。

 

 誰かがまだ離れの密室に隠れているのではないか?

 

 そう思ったのだった。

 

 これを書いている今でさえ、混乱している。

 

 そうも書いている。

 

 そうだ。ずっと混乱していた。

 

 ――良美ちゃんがブリキの花嫁だと思っていたが違うのかもしれない。

 

 そのバケツの浴衣のそいつが生きているのではないか? そう思った。

 

 いや、生きていてほしいと思ったのだろうか?

 

 そうも書いている。

 

 ベッドの上に横たわるそいつが何者なのか? それはわからないが、良美ちゃんであったなら生きていてほしいと思っていた。それは間違いない!

 

 混乱と恐怖でベッドのそいつの頭のバケツに触れることもできず、先にバスルームの首無しのそいつを確認した。

 

 そう、思い出した。今、割とハッキリ思い出した。

 しかし、やはりこう書こう!

 手術痕はあったのだ。それは間違いない。自分が知っている良美の手術痕と同じ形の傷跡が確かにあった! 

 

 いや、手術痕などなかった。

 いや、あったのかもしれない。

 

 それはどちらでもいい!

 

 ただ手触りと温度で、それが人体模型なのがわかった。ただそれだけだ。

 

 そして今度はベッドの浴衣姿の頭のバケツに手を掛けた。

 鹿野信吾はそのままふらふらと倒れるようによろけた。バケツを取ると鹿野信吾の予想通りの光景が現れたはずだ。そして更にそれは期待通りだった。

 

 そう書いている!

 

 確かにバケツに手を掛けて、その中を確認した。

 

 予想通り!

 期待通り!

 

 確かに、ドアチェーン越しに見た離れの光景は本格ミステリーそのものだった。

 

 生首という祝福された死がそこにあった。

 

 AIはこう考察している。

 

 実際とフィクションの違いについての考察

  予想され、期待された光景との対比


 鹿野信吾は「首なし死体」を発見する前から、その可能性を予想し、さらにはミステリー作品として期待しています。

 しかし、実際にそれを目の当たりにすると、彼はショックでふらつき、精神が耐えきれず意識を失うほどの恐怖を感じています。

 これは、頭の中で構築したフィクションと現実の残酷さがいかに違うかを象徴しています。

 

 確かに一瞬、バケツを取ると「首なし死体」が現れることを予想し、期待もしたかもしれない。

 

 しかし、実際は――

 

 首はあった……


 それも予想し、期待していた。

 

 予想通り、期待通り、首はあった。



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