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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
真相を語る あるいは 語られる真相
85/97

戸籍謄本

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。 


 

   戸籍謄本

   

「ここに戸籍謄本があります」

 尾崎凌駕はポケットから紙を一枚取り出した。

 

戸籍謄本(全部事項証明)

 本籍地:xx県xx市xxx x丁目x番x号

 筆頭者:尾崎 勝男

 戸籍編成日:200X年5月xx日


 氏名     生年月日    続柄  婚姻日     備考

 尾崎 勝男  19xx年4月15日 本人 2002年5月10日 祐天寺良美と婚姻

                          2002年5月25日死亡

 祐天寺(ゆうてんじ) 良美 19xx年8月8日  妻   2002年5月10日 姓を「尾崎」に変更

                          2002年5月25日死亡

 証明事項:上記の内容が法務局の記録と相違ないことを証明します。

 発行日:200X年6月xx日

 発行役所:xx県xx市役所 戸籍課


 署名・公印:

 xxxx市長 印


「小説に書かれていることには嘘がある。まあフィクションですからね。大体現実の尾崎夫妻は小説上では近藤夫妻だ」


「確かに同じ日に二人とも亡くなっていて、亡くなる二週間程度前に席を入れている」黒川も頷く。「カメラの映像という絶対的、客観的情報は読者には伝えられないが、戸籍謄本はテキストですからね。謂わば失顔症の読者にも間違いなく事実が届く」


「で、ここに叙述トリックが――」


「なるほど!」


 頷き合う、黒川と尾崎凌駕。

 

 つまりは神と名探偵だ。

 

「良美ちゃんの本当の――小説で良美ちゃんと呼ばれた彼女の実際の、現実の名前がここにちゃんと記載されている」黒川が頷く。


「そしてそれは実際の戸籍謄本! そこにあるのは現実の情報! 間違いはない!」尾崎凌駕も頷く。


 私の顔を笑って覗き込む二人。


 勿論、それは私にもわかっている。

 

 尾崎諒馬は多重人格――解離性同一性障害。すべての人格はまだ統合されてはいなかった。

 

 私、精神科の主治医こそが尾崎諒馬の最後の――

 

 統合されるべき最後の分裂した人格……

 

 それは認めざるを得ない……

 

 良美ちゃんの本当の名前……

 

 それは……

 

 尾崎……

 

 












 

 

 

 

 

 

 

 勝男……

 

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