推理する主治医とそれを見守る二人
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
推理する主治医とそれを見守る二人
なるほど! やはりそうなんだろう!
つまらない!
生首! 首は生きている!
やはりそうだ!
くだらない言葉遊び!
ベッドの浴衣姿のそいつは生きた良美ちゃんだったのだ!
いや、良美ちゃんなのか……
良美なのか?
旧姓祐天寺良美なのか? 姉良美なのか?
ただ、それだけのことだ!
尾崎諒馬=鹿野信吾に階段から突き落とされた姉良美は死んではいなかった!
それで別荘にこっそりやってきていた!
クーラーボックスの生首がやはり何らかのトリックだったに違いない!
いや? しかし、姉良美のアソコには特徴的なホクロが……
水沼が母屋の二階でアソコを見ている!
そうか! わかった!
良美ちゃんとは男女の関係はなかった!
尾崎諒馬=鹿野信吾はそれを繰り返している!
確かに二人に男女の関係はなかったのだろう!
しかし、良美ちゃんの初恋の相手は尾崎諒馬=鹿野信吾だった!
良美ちゃんは尾崎諒馬=鹿野信吾と男女の関係になりたかったのではないか?
しかし、実際に尾崎諒馬=鹿野信吾と男女の関係にあったのは姉良美の方だった!
だから……
良美ちゃんは姉良美に成り代わりたかった!
そうに違いない!
アソコのホクロだって!
刺青でそっくりに!
逆に姉良美の方は――手術でホクロを除去していれば!
水沼との夫婦関係は冷え切っていたのだ!
水沼は妻の良美がアソコのホクロを除去していたのを知らなかったに違いない!
良美ちゃんと姉良美は入れ替わっていたのだ!
「もういいんじゃないですか? それで気がすんだのなら」
声で振り返ると、二人が……
やれやれ……
そんな顔で……
「念のため訊きますが、あなたは誰です?」
私は主治医です!
尾崎諒馬=鹿野信吾の主治医です!
精神科の――
「なるほど」黒川が言った。
「小説の登場人物が『私は主治医です』そう宣言すれば、その人は主治医になってしまうわけですね」尾崎凌駕も笑う。
「困ったことに、読者は失顔症ですからね、謂わば」
「まあ、叙述トリックということで」
この二人は何を言っているのだ!
私は主治医で間違いない!
これは私の患者の尾崎諒馬=鹿野信吾が書いたミステリーで……
精神科の治療の一環――文芸療法――で、彼が書いたミステリー……
「しかし、そのミステリーは現実の事件とリンクしている」黒川が言った。
「確かにあの事件は二十数年前実際に起こり、尾崎諒馬は現場にいた」尾崎凌駕も頷く。
「私も最後駆け付けましたよ。そして勝男の顔もしっかり見ましたよ。離れに飛び込む前にね」
「ウェディングドレスで? バケツを手に提げて?」
「ええ」黒川が頷く。
そして、離れは密室だった! ドアチェーン越しに勝男の生首が――
「おや? そうでしょうかね? それより、密室など興味なかったのでは?」尾崎凌駕が可笑しそうに訊く。
密室なんてつまらない!
それは確かです!
逆に訊きますが――
虚無への供物の……
どれでもいい! 四つの密室のどれでもいい!
密室の謎が明かされた時、本当に面白い! そう思いましたか?
「まあ、確かに!」黒川が笑った。
「そうかもしれませんね、確かに」尾崎凌駕も同意する。
「まあ、それはそれとして、密室の謎は解けたのですか? 主治医さん?」
くだらないことです!
「お聞かせ願いますか?」




