密室へ突入する鹿野信吾
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
密室へ突入する鹿野信吾
そして、第二部、五章!
ついに鹿野信吾は離れの密室に突入する!
この時、鹿野信吾は確かに混乱していた!
空想した夢の世界――針金の蝶々とも、良美ちゃんを救うために夢想した第一部、十二章とも違う現実の世界がそこにあった!
足元の床に広げられたウェディングドレス!
その上に生首――まちがいなく本物の近藤社長の生首!
正確に書けば、首で切断された近藤社長の頭部!
近くにビニール袋――恐らく近藤社長の抉られた心臓の一部が入ったビニール袋!
そして血の匂い!
間違いなく殺戮は行われたのだ!
それでも……
――まず、やらねばならぬのは……
誰か隠れてはいないのか?
しかし、誰も隠れていはいなかった!
奥のベッドの上の探索が恐ろしくあったのかもしれない。毛布で隠れて見えない胸から上が果たしてどうなっているのか? その確認が恐ろしかった。
確かにそうだ!
それで、右手のバスルームのドアを開ける。
しかし――
バスルームには誰もいない!
ネグリジェ姿で頭にポリ袋――それは人体模型だ!
今は混乱してはいない!
問題は――
ベッドの上……
浴衣姿で頭には――
バケツ……
とにかく確認しないと……
再度ベッドに近づく。毛布から飛び出している頭の部分にはバケツが……
しかし、やはり、バケツに触る勇気が出なかった!
これは近藤の死体で間違いない……
しかしあの時、心のどこかで「これは良美かも」そう思っていた!
バケツの浴衣のそいつが生きているのではないか? そう思った!
しかし、それはミステリーでは絶対にあってはならないことだった!
これは近藤社長の死体で間違いないのだ!
近藤社長の首無し死体でないといけないのだ!
これはミステリーなんだ!
密室の中に、首を切断された……
自殺は有り得ない他殺体!
しかし、バケツ頭のそいつの胸を――呼吸の有無を見定めようとしていたのではなかったか?
そして、それを確認して……
ほっとした? それとも ぞっとした?
いや、両方だった!
ぞっともし、ほっともした!
良美が寝ているこの離れに近藤がウェディングドレス姿で入っていった。近藤の生首があって、バスルームに首のない死体がある。そうするとベッドの上のバケツ頭は当然……。
――違う! そうじゃない! そんなはずはない!
そう書いているな……
確かにバスルームの首のないそいつは死体ではなく、人体模型だった!
やはりベッドの上は近藤社長の首なし死体でなければならない!
バスルームに戻り、血の付いた牛刀を右手に持ち、狂ったようにネグリジェの胸の辺りに突き立てた!
血がほとばしり、返り血を……
いや、大して返り血は浴びていない!
多少誇張して書いただけだ!
牛刀を持ったままバスルームを出ると床に転がっている近藤の生首を鷲掴みにした。
そうだ! それは紛れもなく本物の近藤社長の生首だった!
首で切断された近藤社長の頭部だった!
今度はベッドの浴衣姿の頭のバケツに手を掛けた!
そのままふらふらと倒れるようによろけた。
バケツを取ると予想通りの光景が現れた!
更にそれは期待通りだった!
生首……
生きている首……
生々しい首……
良美ちゃんの顔がそこにあった!
いや、良美ちゃんではないような気もした!
どっちなのかわからなかった!
その顔は満足そうに笑っていた!




