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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
真相を語る あるいは 語られる真相
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鹿野信吾は真相を語り始める

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


 

   鹿野信吾は真相を語り始める

   

 階段の踊り場に現れたバケツを頭に被ったブリキの花嫁――

 それが誰だったか?

 尾崎勝男か? 尾崎良美か? 佐藤良美か?

 

 私は良美ちゃんと勝男の区別が、顔を見てもつかなかった!

 

 いや……

 

 これはミステリーというフィクションの原稿だ!

 

 尾崎姓はやめないといけない!

    

 母家の二階にいた近藤夫妻……

 

 そこで殺害と斬首が行われて……

 

 階段の踊り場に現れたバケツを頭に被ったブリキの花嫁――

 

 それが誰であるかは客観的にはハッキリしている!

 

 カメラが映像を捉えているし、神の視点を持つ黒川も証言している。

 

 ただ、その時、鹿野信吾にはわかっていなかった、そういうことだ。

 

 ブリキの花嫁は半透明のポリ袋に生首を入れて提げていた。

 鹿野信吾は困惑していたはずだ。本来ならば生首はバケツに入れてこなければならなかったはずだ。しかし、母屋の二階にはバケツは一個しかなかった。ブリキの花嫁はそのバケツを頭に被ることにしたということだ。

 半透明のポリ袋の生首はカメラの映像でも誰だかはわからない。鹿野信吾も困惑していた。

 

 水沼と二人でブリキの花嫁を離れに追った。

 

 それが誰であるかはカメラの映像で明らか!

 

 しかし、鹿野信吾は混乱していた。

 

 第一部の十二章……

 

 鹿野信吾は本当に良美ちゃんが飛び出してくると思っていた。

 

 当初はブリキの花嫁は良美ちゃんだと思ってはいるが、違う可能性も考えていたかもしれない。

 

 水沼と同じく、やはり近藤社長の変装だったのかもしれない。そういう気もしてきていた。

 

 あの時はまだカメラの映像など鹿野信吾は見てはいないのだ。母屋の二階での出来事もどこまでが現実で、どこからが夢なのか自分でもわからなくなってきていた。

 

 ただ、鹿野信吾は本当に良美ちゃんが飛び出してくると思っていた。いや、そうなって欲しいと願っていた。

 

 今、第一部の十二章を読み返すと……

 

 良美ちゃんが全裸で飛び出してきた、そう書いている。

 

 しかし、良美ちゃんが全裸で飛び出してきたら困る……

 

 まったく馬鹿な話を書いている!

 

 十二章はなしだ!

 

 第二部、一章……

 

 水沼が母屋に戻り、二階の寝室を覗き、良美ちゃんが寝ているのを確認している。

 

 いや、寝ているんじゃない!

 

 ベッドにあるのは死体のはずだ!

 

 しかし、水沼はそれを知らない。


 第二部の二章……

 

 離れから良美ちゃんが飛び出して来なかったことで、鹿野信吾はようやく、ブリキの花嫁は良美ちゃんでなかったのではないか? そう思い始める。

 

 水沼が一旦母屋に戻っている間、鹿野信吾は一人で離れの裏に回っている。

 

 その時間――わずか数分!

 

 そこで果たして何をしたのか?

 

 水沼が帰ってくる。

 

 母屋の二階で良美ちゃんが寝ていた――

 

 水沼はそう証言する。

 

 しかし鹿野信吾にはそれに疑念が生じる!

 

 本当に良美ちゃんが寝ていたのか?

 

 死んでいたのではないか?

 

 しかし、本当のところはわからない!

 

 水沼と二人で離れの玄関のドアを開ける!

 

 そこに生首!

 

 間違いなく、近藤社長の生首がそこにあった!

 

 鹿野信吾と水沼二人でそれを確認している。

 

 水沼は最初それをおもちゃの生首だと勘違いしていたが、間違いなくそれは近藤社長の生首だった!

 

 正確に記せば、頸部で切断された近藤社長の頭部だった!

 

 密室の中に明らかな他殺体……

 

 近藤社長は密室で殺されていた!

 

 しかし……

 

 鹿野信吾はその密室殺人の犯人!

 

 どうやって彼は近藤社長を殺したのか?

 

 いや違う!


 鹿野信吾は近藤社長を殺してはいない!


 いや、それも違うかもしれない!


 やはり、近藤社長を殺したのは鹿野信吾かもしれない!


 しかし、彼は近藤社長の首は撥ねてはいない!


 それだけは確かだ!


 カメラの映像がどうであろうと!


 神が何を証言しようと!


 ああ、混乱が増すばかりだ!

 

 とにかく水沼は再び母屋に戻って行った。

 

 第二部、二章は、

 

 再度、ドアノブの針金が目に入る。ただ、巻き付いていて、その先がグニャグニャしている。とても蝶々には見えないが、ただ――

 元々蝶々の形をしていた針金を誰かが握り潰したのかもしれなかった。

 ――まるであのトリックを愚弄するかのように……


 それで終わっている。

 

 離れの玄関の前に一人残された鹿野信吾は何を考えていたのだろう?

 

 針金の蝶々は本来なら密室を構成する重要なパーツだったはずだ。

 

 それだ形状記憶合金だったという、チープで稚拙なトリックだとしても、針金の蝶々なしで密室を構成するのは不可能だったはずだ。

 

 それでも現場は密室だった。

 

 いや、密室でなければならなかった。

 

 その時、鹿野信吾はそのグニャグニャした針金を見ながら、密室の事ばかり考えていたに違いない。

 

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