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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
真相を語る あるいは 語られる真相
77/97

そして、母屋の二階で

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。



   そして、母屋の二階で

 

 そして、母屋の二階……

 第一部、八章か……

 鹿野信吾はバケツを被った良美ちゃんを近藤社長だと思い込んでしまった。近藤夫妻は顔を隠してしまえば、区別が付かなかった。勿論、裸であれば、すぐにわかっただろうが……

 

 第一部、十章……

 

 ……のこと、絶対に許さない。

 

 良美ちゃんが言ったその言葉……

 良美ちゃんが許せなかったのは、近藤社長でもあり、鹿野信吾でもあったのだろうか?

 

 実際に母屋の二階で何があったのか?


 それは第一部では何も明かされていない。

 

 第五部、懸命に思い出す鹿野信吾

 

 そこでようやく明かされる。

 

 そうだ! 鹿野信吾は懸命に記憶を辿って、それを書いた!

 

 良美ちゃんは近藤社長に瀉血処理を施していた。

 ベッドに横たわる近藤社長。

 

 第一部の十章の続きはこうだ。

 

 そうも書いているが、結局ここでもアンチ・ミステリーに逃げている!

 

 ミステリー作家失格……

 殺人事件は描けない……

 

 それは逃げだ!

 甘えだ!

 

 さらに進んで、

 

 第五部、母屋の二階の出来事を回想する鹿野信吾

 

 そこでようやく母屋の二階での詳細が明かされる。

 

 しかし――

 

 書かれているのは夢の世界かもしれない。

 

 鹿野信吾はクーラー・ボックスの中を見て……

 

 そして気を失った。

 

 おそらく、ショックで別の人格が……

 

 鹿野信吾は夢と現実が区別つかなくなっていた。

 

 鹿野信吾の記述は信用が置けない。

 

 鹿野信吾は良美ちゃんと近藤社長の区別が付かなくなっていたのだ。

 顔を隠してしまえば、どちらがどちらか、それがわからない。

 服装で区別――そうも思うが、

 

 近藤はウェディングドレスを脱ぎ、ネグリジェに着替えた。良美ちゃんがそれを手伝っていた。いつの間にか、良美ちゃんも浴衣からネグリジェに着替えていた。

「まあ、変態だと思われるなら、仕方がない。私はやはり夜はこれで眠りたいんですよ。良美とお揃いです。かわいいでしょう?」


 そう書かれている。

 近藤夫妻の区別は服装ではつかない!

 

 顔を隠してしまえば、全裸にでもならない限り、鹿野信吾には区別はつかない。

 

 だが、後半、客観的な記述が……

 

 解決編、母屋二階の殺害シーン

 

 USBメモリの動画を見て記述されたそのシーン

 

 ダブルベッドに鬼の面を被った妻良美……

 ベッド脇にマスクとサングラスの勝男……

 

 ああ、二人とも顔を隠しているな!

 

 少し戻って!

 

 解決編、映像をコピーしたUSBメモリ 続き

 

 そこに記述がある。

 

 ダブルベッドに目が虚ろな……

 ネグリジェを着て、腕には――

 チューブが繋がっている。チューブは真っ赤だ。

「ベッドはダブルベッドです。奥にウォークインクローゼットの扉も見える。つまり、映っているのは母屋の二階です。勝男が瀉血処理をしてます。ベッドに寝ているのは妻の良美です」

 尾崎良美――旧姓祐天寺良美がダブルベッドに横たわっていた。浴衣を着てダブルベッド脇に立っているのは勝男だった。

「ほら、わかるでしょ? 先ほどみた二つの動画、あれにも顔がハッキリ映っていた。勝男です。これから妻の良美が……」

「もう一人……ベッド脇に……」尾崎凌駕が口を挟む。

「ええ、呆然と見ている男――佐藤稔、つまり尾崎諒馬=鹿野信吾です」

 そこで首猛夫は動画の再生を一時停止する。そしてじっと尾崎凌駕の反応を見る。

 尾崎凌駕はただ食い入るように画面を見ている。そして黙っている。

「続けますよ。残酷なシーンですが……」

 尾崎凌駕は返事をしない。首猛夫は一時停止を解除した。

 勝男がマスクとサングラスで顔を隠す……

 妻の良美にも鬼の面を付ける……

 

 それは記録された映像に基づく客観的な記述!

 

 立ったまま気絶を繰り返す鹿野信吾の信用できない主観的な記述ではなく、客観的な記述!

 


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