針金の蝶々
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
針金の蝶々
事件の一週間前、隠しカメラを設置するために別荘を訪れた。マスクとサングラスで変装して――
パーティーも招待されている私は顔を見られたくなかった。
そこで、生首のおもちゃと首のない人体模型が準備されているのを見て……
彼女……いや……
もう「彼女」と呼ぶのはやめよう。誤解されないように……
良美ちゃんが「針金の蝶々」の舞台を作り上げようとしているのを知ったのだ。勿論、純粋に私の執筆の応援のために……
いや、良美ちゃんだけではなく、社長の方も積極的だった。社長の方は応援というより、私のことを馬鹿にしていたのかもしれないが……
尾崎夫妻……いや、近藤夫妻と書くべきだな。
これはもうあのミステリーの解決編なのだ。
私は……
いや、これも鹿野信吾は……
そう書くべきだ!
* * *
パーティーに招待されあの別荘を訪れた時、ハリガネムシを見た。
気持ちの悪い……
ハリガネ……
そういえば、離れの玄関ドアノブに針金が巻き付いていた……
無造作に……
書かれなかったミステリー「針金の蝶々」は密室物で……
ドアチェーンに替えられた針金細工の蝶々が実は形状記憶合金だったという……
それは稚拙でチープなトリックだったのだけれども……
それが馬鹿にされているようで無性に腹立たしかった……




