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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
真相を語る あるいは 語られる真相
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真相を語り始める鹿野信吾

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


 

   真相を語り始める鹿野信吾

   

 いや違う……

 

 恋人としての「彼女」――そういう意味ではない……

 

 男女の関係はなかった……

 

 姉良美とは男女の関係があったが……

 

 彼女とは男女の関係はなかったのだ!

 

 彼女……

 

 三人称の代名詞――いや……

 

 あのミステリーの冒頭を読み返すと確かに……

 

 砂利道を上っていくと、彼女――社長の婚約者が電話していた。

 

 そう書いた。二章だな。

 

 一章は、水沼のパート……

 

 ああ、あれも私が彼に成り切って書いた物だが……

 

 水沼は何の躊躇もなく「良美ちゃん」そう書いている。

 

 だが、私の方には葛藤があった。

 

 これはミステリーだから……

 

 しかも本格ミステリーのはずだったのだから…… 

 

 これは現実とリンクしたフィクション……

 

 本名を、実名を書くわけにはいかない!

 

 私は鹿野信吾――尾崎諒馬はメタ視点の作者……

 

 ミステリー作家が巻き込まれた殺人事件をミステリーとして書いている。

 

 書いているのが尾崎諒馬で、登場人物の私は鹿野信吾、そういうことだ。

 

 尾崎姓は近藤に……

 

 ただ社長夫妻の名前は本名、実名を使った。

 

 勝男に良美。

 

「尾崎勝男――尾崎メディボーグの社長をやっています。すべてに勝つ男、そういう父親の想いが込められた名前です。名は体を表す――まあ、そんなことはない、それは見ての通りで……」


 確かに社長はそう自己紹介した。

 

 尾崎を近藤に替えて小説に書いただけのことだ。

 

 姓の方は実名から替えたが名の方は実名をそのまま使った。

 

 良美……

 

 あの時……

 

 立派な階段の踊り場に彼女が現れた時……

 

 一瞬、姉良美のことを思い出したのだろうか?

 

 あの時、階段から突き落とした姉良美のことが私の脳裏を掠めたのだろうか?

 

 ずっと、良美、そう書いてきて……

 

 途中で良美ちゃんと書くようになった……

 

 水沼に合わせた、ただそれだけのことだ。

 

 私は信吾――鹿野信吾……

 

 事件の真相を書いている。

 

 ただ、それは私の記憶だ。

 

 いや、多重人格――解離性同一性障害で分裂した人格はほぼすべて統合されている。

 

 今はもうすべての人格は統合されている。

 

 だから真相を語れるはずだ!



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