二十数年前別荘にて 一
※ここからとあるミステリーの真相について触れます。未読の方は先に進まないでください。
二十数年前別荘にて 一
アルバイトである別荘に隠しカメラを設置する仕事を請け負った。
別荘はムラサキハシドイに囲まれた母屋と離れからなる、ちょっとチープな別荘で、ある大きな企業グループの一子会社の社長の婚約パーティのために建てられたと聞いていた。
カメラの映像を記録するサーバーは母屋一階の一番端の個室に設置した。そこで、黒川――企業グループ親会社のエンジニアと名乗った――にサーバーの説明をしている際に、子会社の社長が部屋にやってきて声を掛けられた。
「なるほど、ここで映像が記録されるんですね」
社長が黒川に目配せすると、
「お疲れさまです。では私はこれで――」
黒川は部屋を出て行った。
「それは変装ですか? サングラスとマスク」
私は色の濃いサングラスとマスクで顔を隠していた。事情があって社長に顔を見られるわけにはいかなかった。
「ちょっと眼の病気で――、あと風邪をうつさないように……」
「そうですか。しかし、ちょっと面白いですね。採用しようかな?」
「採用?」
「いや」社長は笑った。
と、カメラの映像に動きがあった。一人の女性が重たそうに――
ネグリジェを着た人物をベッドに横たえていた。母屋二階のダブルベッドだった。
「ふーむ、雰囲気ありますねぇ」社長は笑った。「しかし、まずいところを見られましたねぇ」
ネグリジェを着た人物は……
首がなかった。
「社長と名乗っていますが、実はまだ専務です。あの子は婚約者で、正式に結婚すれば――実はもう籍は入れてますが――社長に昇格なんですが……。今夜は婚約パーティですがね。ちょっとした惨劇が起こるんですよ。殺されるのはあの子か? 私か? さてどっちなんでしょう」
社長は妙に嬉しそうだった。
「殺される? 今夜?」
「あの――」社長は笑いながら「首無し死体、気になりますか? ちょっと二階上がってみますか?」
社長に先導され、部屋を出て廊下を歩く。立派な階段を二階に上がる。
ふと、先ほどの黒川のことを思い返す。
彼の右手……
小指がなかった……
流石に二階の首無し死体は作り物なんだろう……
そう願いながら階段を上がった。
しかし、カメラの映像では本物と作り物の区別はできなかった。




