探偵に完全復帰する尾崎凌駕
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
探偵に完全復帰する尾崎凌駕
「やはり、姉良美を殺したのは、あなたではないのでしょう? 尾崎凌駕さん」神が笑った。
「さあ、どうなんでしょうね」探偵も笑う。「このミステリーは嘘に塗れている、ですかね?」
「今の発言は――」
「いえ、この件はここまでにしましょう」探偵が神を遮る。「仮に私が嘘の自白をした――つまり、姉良美殺害の犯人ではない、として――」
探偵は話し始めた。
彼自身が事件の中心にいたことで、客観的な「探偵」としての立場を保てなくなったことを示唆しています。
どこかでAIがそう言っていましたよね? AIの言う彼とは私、尾崎凌駕です。私が事件の中心にいた、つまり犯人だったことで客観的な「探偵」の立場を保てなくなった――そういうことで私は失踪したわけですが……
しかし、私が姉良美殺害の犯人ではない、としたら……
更にその後の私の手記にある「かもしれない」が単なる憶測――いや明確な嘘だとしたら……
私はあの事件のすべてにおいて客観的な立場に戻れるわけです。
「なるほど」神が笑った。「ここで完全に探偵に復帰するわけですか?」
しかも失顔症の私は読者と同じ情報を持っている。
探偵も笑って話を続ける。
作者――いや、記述者である尾崎諒馬=鹿野信吾――彼は藤沢元警部という架空の人物に成りすましてみたり、更には実は殺し屋首猛夫に成り代わっていたり……
それで最後はSEの佐藤さんだと……
ある意味やりたい放題ですが、その彼は殺人犯だったと自白しているわけです。
ほぼすべてのパートは殺人犯自らが書いている。
そもそもあれはアンチ・ミステリーなのかもしれません。そうであれば、名探偵でも推理は不可能でしょう。探偵が欲しいのは客観的な事実のみ!
そこで、密室トリックの解明のために神を尋問したいのですが、いいでしょうか?
いえ、読者のために尋問させてください!
嘘を吐かない神を!
「つまり?」
求めよ、さらば与えられん
「なるほど、探偵は事件について嘘の証言をしない神を求める、と」




