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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
介錯を期待するのはやめて真相を語ろう……
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淡々と真相を書く

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。 


  

   淡々と真相を書く

   

 ああ、探偵と神が事件について対話している。

 神は真相を見ているし、探偵も推理で真相に肉薄している。私は淡々と真相を書くだけだ。

 

 私は会長宅で三つの生首の首実検に立ち会った。真相を知っている私は違和感など感じてはいない。それは神である黒川も同じだろう。黒川の双子の弟――青山が同席していたかは記憶にないが、同席してたとしても違和感は感じていないだろう。黒川も青山も三人の被害者の顔を知っている。だから違和感は感じない。それは私も同じだ。

 しかし、私は殺し屋首猛夫に成りすましている。あの時黒川はそれに気づいていたのだろう。知っていて見逃してくれた。

 あのミステリーにもその成りすました殺し屋首猛夫としてあのシーンを書いている。もし本当に首猛夫が首実検に参加していたら感じていただろう違和感がある、そう書いただけだ。

 

 あのミステリーは嘘に塗れている。

 

 その嘘は私、尾崎諒馬=鹿野信吾が付いた嘘だ。

 

 離れのベッドの上のそいつの頭のバケツに良美――勝男の姉の良美の生首が入っていた、そういう嘘……

 

 実際にバケツを外した時……

 

 見えたその顔は……

 

 良美ちゃんだった……

 

 私は嘘を吐いた。

 

 いや、それは……

 

 とにかく謎は……

 

 解くべき謎は密室の謎……

 

 私はとにかくその生首を良美ちゃんではなく良美にしておきたかった。

 斬首されて殺されたのは姉良美だということを強調しておきたかった。

 

  それが真相です…… 了

  

 にこう書いている。

 

 私は良美を愛していた。

 離れのバケツの中の生首は良美だった。

 良美ちゃんではなく良美だった。

 その重さに私は耐えられなかった。

 

 私は水沼を憎んだ。

 良美を殺したのは近藤社長か水沼。

 近藤社長は死んでいる。

 殺し屋が始末してくれた。

 

 しかし、水沼は――

 

 それは私が何とかしないと……

 

 それでナタを手にした。

 

 それが真相です……

 

 

 そういうことにしたかった。

 

 だから私は……

 

 旧友のあいつ、水沼=坂東善を……

 

 ナタだったか……

 

 ハンマーだったか……

 

 いや、どちらでもいい……

 

 殺し屋首猛夫を打ちのめした彼を……

 

 そのどちらかの鈍器で私が殴打したのだ。

 

 ナタだったら、刃ではなく、背の方だったのだろう。

 

 とにかく水沼=坂東善は気絶した。

 

 その後は神たる黒川さんの書いたとおりだ。

 

 私はその後首猛夫に成りすました。

 

 首猛夫は別荘離れの玄関に置いてきた。

 

 別荘には灯油とガソリンを撒いて……

 

 蚊取り線香に火を付け、スタンドに立てて……

 

 上にマッチを数本置いておいた。

 

 時限出火装置……

 

 それで誰かが焼身自殺したように見えるはずだった。

 

 しかし、彼は死ななかった。

 

 黒川と青山が水沼=坂東善を彼の自宅に連れて行き、放火している。

 

 それで犯人が焼身自殺を図ったように見せかける。

 

 しかし、水沼も死ななかった。

 

 その夜、二人は焼け出されて救急搬送された。

 

 この医療センターに……

 


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