表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
介錯を期待するのはやめて真相を語ろう……
46/96

神と探偵の会話(首猛夫の感じた違和感)

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


 

   神と探偵の会話(首猛夫の感じた違和感) 


「離れのベッドから転がり落ちたのは良美ちゃんの生首だった、と。良美ではなくて」探偵が言った。

「尾崎諒馬=鹿野信吾は嘘を吐いていた、と。バケツの中に良美――勝男の姉の良美の生首があった、というのは嘘だった、と」神も同意する。

「ふーむ、しかし神であるあなたはこう言った、『半透明のポリ袋に入っていた生首は良美ちゃんでないのは確か』、そうですよね?」

 神は笑って答えない。

「あなたは本当にこのミステリーにおける神ですか?」

「探偵のあなたは推理もせずにただ神に答えを求めている、違いますか?」神が冷ややかに突き放す。

「求めよ、さらば与えられん」探偵がすました顔でそう言う。

「まさか、神にただ求めれば、答えが与えられるとでも?」

「違うのですか? この小説は『求めよ、さらば与えられん』そういうタイトルになっている」

「いえ、神()求めよ、ということではないのですよ。神()求めよ、ということなんです」

「なるほど、正解に辿り着く正しい情報を与える神を求めて、あとは自分で何とかしろ! そういうことですか」

「そうでなければ、本格ミステリーに探偵は不要でしょう」

「厳しいですね」

「例えば、数学の方程式の解を求めよ、そうあれば、自分で解け! そう言う意味ですよね? 決して解答を見ろ、という意味ではない。つまり、自分で、求めよ、と」神が笑う。

「さらば、つまり、神は嘘のない情報だけ与えてサラバと去っていくわけですね」探偵も笑う。

「与えられん、は与えられない、の意味」

「与えられないから自分で解け、と」探偵は考え込む。

 神である黒川は黙って頷いた。

「まあ、すべては解けているのですがね。考え込んだわけではなく、考え込んだフリをしただけで」探偵が笑う。

「密室の謎も?」

「ええ」探偵は微笑んだ。「ですが、それより先に首猛夫が感じた違和感とやらについて話しませんか?」

「会長の前で生首三つの首実検のあのシーン?」

「ええ」


 探偵、尾崎凌駕は話を続けた。

 

 会長の前での首実検のシーンは二つあります。

 この「求めよ、さらば~」では、

 

 黒川からのメール 生首三つと最後の仕上げ

 

 に、神である黒川さんが書いている。

 

「ええ、私が書いてメールしてますね。それがそのまま採用された」


 探偵が話を続ける。

 

 あなたはそのシーンに何故か、首猛夫が一緒に首実検に参加しているようには書いていないのですが、それは何故?

 

「特に意味はないですよ。青山――私の弟もいましたが、特に書いてないのと同じです。ただサラリと書いただけです。くどくならないように。ただ、書きにくかったのかもしれませんね」


 つまり、その時は彼が本当は殺し屋首猛夫でないことがわかっていた?

 

「ええ、最初別荘の駐車場で生首の入ったゴミ袋を手渡された時には彼が首猛夫だと思いましたが、その後、あれ違う? そうは思いましたね。流石に……」


 それでも黙っていた? 

 

「私とすれば勝男を殺してくれた犯人は誰でも歓迎します。その彼がそれを本格ミステリーとして書いているのなら、それは尊重します。私があのシーンに首猛夫のことを書かなかったとしても、特に嘘の記述をしているわけではないでしょう? 神は嘘を書いてはいけないのです」


 わかりました。

 

 では、首実検には会長とあなた黒川さんと首猛夫――いや、首猛夫に成りすました尾崎諒馬=鹿野信吾が参加していた。実は誰も違和感を感じてはいなかったが、尾崎諒馬=鹿野信吾は首猛夫に成りすましていたので、首猛夫がそこにいたなら感じただろう、違和感を書いたわけですね?

 

 あのミステリーの

 

  生首が三つ


 に、こうある

 

 まず、娘良美の生首を愛おしく抱き寄せ、頬刷りをした。数分間そのまま泣きじゃくっていた。

 次に、息子勝男の生首をじっと睨みつけていた。しかし、やはり最後はその頬を撫でて「すまん、親の責任としてこうするしかなかった。許してくれ」そう言って泣いた。

 最後に、嫁の良美ちゃんの生首にそっと触れ、「悪いことをした。本当に申し訳ない」それだけ言った。

 

 この時のことを文章にすると何もおかしなところはない。読者もそう思うだろう。

 しかし、これだけは書いておく。

 

 この時、首猛夫は妙な違和感を感じていた。

 小説を読んでいる今はその違和感は消えているのだが、その時は確かに違和感を感じていたのだ。

 首猛夫は二人の良美の生首を――その耳の形をじっと見比べていた。

 

 これはもし本当に首猛夫が首実検に参加していれば、違和感を感じただろう、とそう言う意味で書いている。

 

「そうですね。耳の形と繋がりますが……」


 探偵は話を続ける。

 

 要するに良美と良美ちゃんの生首が首猛夫には逆に感じたわけですね。水沼=坂東善は離れで生首を二つゴミ袋に入れて、母屋二階の寝室の扉の前に置いている。その中身を首猛夫は見ているわけですが、中身は勝男の生首と勝男が半透明ポリ袋に入れて、更にバケツにポリ袋ごと入れて離れに持ち込んだ生首が入っていた……

 首猛夫は尾崎諒馬=鹿野信吾の話で、それが良美――勝男の姉良美と勝男の生首だと思った。勝男の顔は写真で見ているが、姉良美の顔は知らない。知らない顔の方を姉良美と認識した。

 更に母屋二階の寝室のベッドの上の生首もそのゴミ袋に入れて三つの生首を纏めた。勝男の妻の旧姓祐天寺良美の顔も知らないので、二人の良美――姉良美と妹良美の生首を耳の形で区別した。それでいいですよね?


 二人の良美は耳の形が違っていたわけですよね。それで区別はついた。二人の顔を知らない首猛夫にも……

 

「でも、逆だったんでしょう? 尾崎諒馬が嘘を吐いたから、二人の良美の生首を首猛夫は逆に認識した。だから首実検の際に会長の行動に違和感を感じた、それで辻褄が合うじゃないですか?」神が、何がおかしいのか? といった顔で言った。

 

 しかし――

 

 どうしても私、探偵尾崎凌駕の記憶では……

 

 二人の良美の耳の形は似ていたんですよ。

 

「なるほど」神が笑った。


 耳の形と私の記憶の問題なんですが……

 

「求めよ、さらば与えられん」神が笑った。


 ふーむ。神は答えを示さない。ただ言えるのは……

 

 尾崎諒馬=鹿野信吾は嘘を吐いた……

 

 そういうことだけですかね?

 

「ええ、実際、殺し屋首猛夫は首実検に参加していませんしね」神は涼しい顔でそう言い切った。「それに耳の形の違和感が解けたところで密室の謎は解けないでしょう?」


 いや、解けますよ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ