やはり話を少し飛ばす
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
やはり話を少し飛ばす
事件そのものの真相を語るのはもう少し後にして、話を飛ばす。
私と彼と殺し屋と……
という章に、
「しっ、いいから聞いてくれ。だからその犯人は別にいるんだ。恐らく、どこかに隠れて俺たちの決闘の様子を窺っているに違いない。だから――」
「だから?」彼も少し落ち着いた口調でそう促す。
「俺たちが決闘しているフリをして、相撃ちで倒れれば、きっと真犯人が出てくるに違いない。そう思わないか?」
「なるほど」
そう書いた。
ナタとハンマーで殴りあって相打ちになり気絶するフリをした。
そして殺し屋首猛夫が現れて……
その後のことをこう書いた。
私、水沼はあの時、殺し屋首猛夫と入れ替わったのだ!
そうなのだ。殺し屋首猛夫が、気絶しているフリをしている私、水沼を運ぼうとした際に私は彼にとびかかった。
殺し屋に飛び掛かり、武器を奪った。ナタだったか? ハンマーだったかは記憶にないが、とにかく殺し屋を打ちのめすことに成功したのだ。
これは確かに実際にあったことだが……
私は水沼ではない。
尾崎諒馬=鹿野信吾だ。
水沼が殺し屋を打ち倒すことに成功したのは確かだが、私=鹿野信吾が彼=水沼に成りすまして書いている。
私は自殺するつもりはまだなかった。
仮にするにしてもまだやるべきことが山のようにあった。
次の
マスクとサングラスで変装
という章で、
私は気絶している殺し屋首猛夫と自分の服装を交換した。彼もそれを手伝ってくれた。
そう書いた。
真相を書けば、殺し屋と衣服を交換した私というのは尾崎諒馬=鹿野信吾で、それを手伝った彼、というのは水沼=坂東善だ。
更に、
そして自殺するつもりの彼をおいて、自分と彼の車の鍵を持って――
更には生首が三つ入ったゴミ袋を提げて――
別荘の駐車場で黒川と相対した……。
そう書いている。
彼、水沼は自殺するつもりはない。
では、どうなったのか?
いや、それは後で書くとして……
黒川に顔を見られた私だが、幸い彼は尾崎諒馬の顔も、殺し屋首猛夫の顔も知らなかった。
「黒服です。ここで待っていました。任務は遂行したのですか? 勝男を殺してその首がここに?」
そう言った彼、黒川に便乗して私、尾崎諒馬は殺し屋首猛夫に成り代わったのだ。




