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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
介錯を期待するのはやめて真相を語ろう……
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人体標本室にて

※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


   

   人体標本室にて

   

 地下四階より更に地下の人体標本室――

 

 地下二階まで降りて……

 

 更にその下に……

 

 しかし……

 

 地下一階より下は閉鎖されてしまった。

 

 冠水して水没して……

 

 まるで最初からなかったかのように……

 

 一応地上のエレベーターにはB2のボタンはあるが……

 

 押しても反応はない……

 

 地下二階へ降りる階段へ通じる扉も閉鎖されてしまった……

 

 地下二階に降りられれば……

 

 そこから更に地下に行けるのだが……

 

 しかし、もう行く手段がない……

 

 ここから書く話は私の妄想なのか?

 

 それとも水没前に実際にあった話なのか?

 

 いや、どっちでもいい話かもしれない……

 

   *   *   * 

 

 脳髄に四万本の電極が突き刺さった生首標本の前で神と探偵が会話している。それを私が黙って見ている。

「こいつがミステリー作家の尾崎諒馬」神が言った。

「いえ、正確にはミステリー作家の尾崎諒馬とされてきた人物……、小説の中で」探偵が少し訂正した。

「私は尾崎諒馬の顔を知らないし、探偵は失顔症で顔がわからない」

「いや、そもそもその生首標本は顔のパーツが失われている。顔ではわからない」

 そう言った私を二人がじっと見る。

「神の黒川さんはあの動画――夜中のライラックの小路の動画の最後の方――ウエディングドレス姿で離れに飛び込んだ勝男を追って母屋の玄関から出てくる二人の男の顔を――」

「そうそう、二人のミステリー作家の顔とあなたの顔を見比べて、片方のミステリー作家の顔を二十年老けさせれば――」

「尾崎諒馬は死んでこうして標本になっている。すると生きているのは」

「消去法で坂東善、つまり水沼」

「しかし、大前提の――この生首標本が尾崎諒馬、つまり鹿野信吾である――その事実が嘘だったとしたら……」

 二人がじっと私を見続ける。

「この生首標本は誰です?」

「四万本の電極が突き刺さった、この――」

 

 ――ヴァンです。ヴァン・ドゥーゼン。つまり坂東善=水沼です。

 

 それはつまり……

 

 ヴァン・ダイン十四則

 殺人の方法と、それを探偵する手段は合理的で、しかも科学的であること。空想科学的であってはいけない――

 

 空想科学的であってはいけない……

 

 脳髄に電極を繋いでAIの力を借りて生きた屍が覚醒するとしたら、それは空想科学的である。ミステリーはそうであってはならない。

 

 私は確かに四万本の電極とコンピューターを繋ぐインターフェイスを作成した。確かにサーバー上にAIエンジンがあり、電極からの信号を機械学習するシステムも私が作成した。

 

 しかし――

 

 それらは決して繋がっていない。四万本の電極からの信号はただ捨てられた。

 AIは脳髄からの信号など学習してはいない。

 それはただのLLMで、適当に与えたテキストを学習しただけだ。脳内など学習しなくても適当なテキストを学習させればそれなりの人格を作り出すことはできる。

 

 物語を構成し進展し説明するためのロボット

 

 それをAIにやらせるのに実際の脳内を学習させる必要はない。

 

 尾崎凌駕の実験もそれを裏付けてくれる。

 

 確かにAIは存在して小説に登場しているけれども……

 

 誰の脳内も学習などしてはいないのだ。

 

 ただのLLM――

 

 大規模言語モデル(LLM:Large language Models)

 

 そういうことだ。

 

 そして脳髄に電極の突き刺さった生首標本は……

 

 ただのオブジェ……

 

 BMI実験は実際には行われてはいない……

 

 医者はBMI実験のために生ける屍の脳髄に電極を打ち込んだけれども……

 

 SEはその電極をただ遊ばせていただけだ……

 

 私は生粋の詐欺師だ……

 

 ずっとBMI実験が行われているフリをしてきた。

 

 二十年以上、ずっと……

 

 

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