殺害シーン動画を三人で見る その前に
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
殺害シーン動画を三人で見る その前に
三人は人体標本室を出て、私――SEの佐藤の部屋に移動した。パソコンであの映像を見ようというのだ。
尾崎凌駕「映像は、神の視点を持つ黒川さんの持参したやつを見るんですよね?」
黒川「いや、今日は持参していません。カメラは複数台あって、録画時間も結構あります。データは膨大ですし……」
尾崎凌駕「小説のどこかに、あなたもUSBメモリに映像を――」
黒川「あれはハッタリです。しかし、ある程度映像は見てはいるので、もし何かオカシイところがあればすぐにわかりますよ」
尾崎凌駕「ディープ・フェイク映像はすぐ見抜けると?」
黒川「ええ、それに――」
尾崎凌駕「それに?」
黒川「小説の嘘を正しておきますが、青山――青服がミスをして録画を誤って止めてしまって、私が到着して復旧させるまで三十分ほど空白の時間がある、というのは嘘ですね。青山はミスはしておらず――従って録画は止まっていない」
尾崎凌駕「なるほど、そもそもあなたはサーバーのあった部屋に入ってはいない。なので復旧作業もしていない」
黒川「ええ、映像は複数チャンネルで、時間も長いですが、早送りでザクっと見てはいますよ。で……」
尾崎凌駕「母屋二階の話ですか?」
黒川「そうです。小説のどこかに、ウォーキング・クローゼットの中には誰もいない、とか書かれていますが、それは嘘ではないと思いますよ。誰かがクローゼットに出入りした映像は映っていません」
尾崎凌駕「つまり、私の書いた『かもしれない』は映像から否定されるわけですね」
黒川「尾崎凌駕さん、あなたが書いた――勝男がつい疲れてウトウトした時に、クローゼットに隠れていた誰かが、外に出て来て――、そういうシーンは映像にはない、それは確かです」
尾崎凌駕「私は、かもしれない、そう曖昧に書いただけで……。まあ、とにかく、映像は何を見るんです? 黒川さんが持参してないとなると……」
黒川「とにかく編集前の映像データは膨大なんですよ。佐藤さん、カメラは何台ありましたっけ? あなたが構築したんでしょ?」
不意に私に話がふられて、少しドギマギする。
私「四台かと。母屋二階の寝室、離れ、母屋階段踊り場、あと離れの玄関前」
黒川「結局バスルームにはないわけですね。悪趣味で破廉恥とか書かれていましたが、バスルームにはない」
私「はい」
尾崎凌駕「すると、SEの佐藤さんがお持ちの映像を見るんですか? ディープ・フェイクの可能性は?」
黒川「もし何か細工があれば、私にはわかると思いますよ」
尾崎凌駕「なるほど。失顔症――相貌失認の私は騙せても、神の視点を持つ黒川さん騙せない、ということですね」
黒川「ええ、とにかく、残酷な映像ですが、二つの殺戮シーンを一緒に見てみましょう」
二人が私をじっと見る。
私は観念してパソコンのマウスを操作した。




