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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
神と探偵の対決?、いや、対話?
24/96

耳の形

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。




   耳の形 

   

 尾崎凌駕「まずは、耳の形について話しませんか? 丁度ここに――」

 

 黒川「二人の良美、若しくは良美と勝男の生首の標本」

 

 尾崎凌駕「ええ、正確には小説内でそう紹介された生首標本」

 

 黒川「つまりはこの二つの生首は事件とは無関係?」

 

 尾崎凌駕「ええ、この人体標本室にはいくつかの生首標本がある。そのうちの二つを適当に並べただけです。演出というか、雰囲気づくりに」

 

 黒川「このミステリーは嘘に(まみ)れているわけですね。そういえば、死刑囚の手記に、あの時、人間の生首を自宅に持ち帰った私は、早速、脳とそこから続く頚髄の入出力特性と首の表皮に現れる電位データの相関を取った、とか書かれていますが、あれも嘘です」

 

 尾崎凌駕「生首三つはただ冷蔵庫に入れられた?」

 

 黒川「ええ、そして気絶していた佐藤稔を部屋に放置して放火したのは私と私の双子の弟です」

 

 尾崎凌駕「すべての罪をその佐藤稔――水沼、坂東善に(なす)り付けた? 酷い神だ」

 

 黒川「そうかもしれませんね」

 

 尾崎凌駕「話を戻しましょう。耳の形について――」

 

 黒川「正直、他人の耳の形を意識することなんてあまりないですが……」

 

 尾崎凌駕「二人の良美、佐藤良美と尾崎良美、旧姓だと尾崎良美と祐天寺良美の耳の形は似ていた?」

 

 黒川「いや、似てはいなかった気がしますよ。姉良美と勝男は血が繋がっているので似ていたはずです」

 

 尾崎凌駕「私が佐藤稔宅で二人の良美に会った時――まあ、その後、そこで姉良美の方を殺めてしまったわけですが――私は失顔症なので、耳の形に注意を向けてみたのですが、似ているように思いましたよ。二人は母親は違いますが、父親が同じ可能性は残っています」

 

 黒川「なるほど、とにかく、障害ゆえに耳の形には注意を向けていたと……。だから自信がある?」

 

 尾崎凌駕「耳の形など意識していない神と、意識している探偵の争いですかね? どっちが正しいか? ここで私が絶対に正しい! などと主張すると、完全な自己陶酔と支配欲、とか思われそうなので――あ、それより」

 

 黒川「何でしょう?」

 

 尾崎凌駕「会長宅で三つの生首を並べて会長が首実検するシーンがありましたよね。その現場に黒川さんあなたも立ち会っていた?」

 

 黒川「ええ」

 

 尾崎凌駕「特に違和感はなかった?」

 

 黒川「ええ。あ、しかし――」

 

 尾崎凌駕「殺し屋首猛夫は何か違和感を感じた?」

 

 二人が当然のように私の方を見る。

 

 私「……黙秘します」

 

 私は二人にある提案があったのだが、やはり勇気が出なかった。

 それでしばらく沈黙が続いた。

 

 尾崎凌駕「いいでしょう。次に行きましょうか?」

 

 黒川「次は?」

 

 尾崎凌駕「チョーカーについて」

 

 

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