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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
開幕――再び幕が上がる
17/71

黒川の感謝

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


   黒川の感謝

   

「動画に映っていた犯人――離れで勝男を斬首して殺した犯人は首猛夫だったんでしょう? 藤沢と名乗ってここに来ていた首猛夫の顔は、二十数年老けさせたその犯人の顔だったんでしょう? つまり、今見た尾崎凌駕が犯人の動画はディープ・フェイク動画……」黒川が言う。

「ええ、そうですね」

「誰が作ったんです?」

 私は答えない。

「AIになってしまった尾崎諒馬か? 若しくは……」黒川が笑った。

「とにかく誰かが、AIを駆使して、動画の犯人の顔を尾崎凌駕にすり替えた。二十数年若くして――。それは確かですね」

「私がメールしたAIとの会話――AIの小説の解釈に動画の方を合わせた、と」

「そうですね。でも無理ですね」

「無理?」黒川が訊く。

「私があのミステリーに書いた。犯人の顔を二十数年老けさせればその藤沢さんの顔に一致するような気もする――、その一文が……」

「何とも言えない、ともありますが」

「いや、何ならまだサーバーにオリジナルが残っているので、それを一緒に見てもいいですよ。私はつい最近の首猛夫の顔を知っているし、あなたは二十数年前の首猛夫の顔を知ってる」

「ほう、オリジナルが残っているとどうしてわかるのです? ディープ・フェイク処理後にオリジナルは消したかもしれませんよ」

 私は何も答えない。

「いや」黒川はポケットから何やら取り出した。「実は私もあの動画のコピーを持っているのです。動画をコピーしたのは首猛夫だけではなく、黒服もね」

 黒川の手にはUSBメモリがあった。

「まあ、無理に一緒に見なくてもいいですよ。私がオリジナルを見ているということを認めてくれれば」と黒川。

「ええ、認めてますよ。で、どうするんです?」

「また、人体標本室にもどりませんか? そこで話しますよ。とにかく私は勝男を殺した犯人に感謝してるんです」

「感謝? やはり勝男がサイコパスだったから?」

「ええ、青山――青服つまり私の弟の小指を切断したのは子供の頃の勝男です。私も……詳細は言えませんが、酷いけがを負わされています。子供の頃の勝男にね。だから、殺してくれて感謝しています」

 私は何も言えなかったが、少し安心した。

 どんな命でも等しく尊いが、やはり……


 そうした感情を持つのは仕方がない……

 

 勝男の死は――いや、殺害は祝福されているのかもしれない……

 


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