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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
開幕――再び幕が上がる
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黒川と一緒にあの動画を見る

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。 




   黒川と一緒にあの動画を見る


 場所を人体標本室から私の部屋に移す。SEの部屋なので、何台ものパソコンが稼働している。空調も寒いくらいだ。

 モニターの前に黒川を座らせ、マウスを操作する。

 ある動画ファイルをクリックする。


「離れの殺害シーンです。強烈ですよ」私は観念した。


 その動画について、あのミステリーではこう書かれている。

 

 まず、首猛夫と尾崎凌駕が途中まで見ている。

 

 映像をコピーしたUSBメモリ

 

 に、

 

「もういいでしょう。次は――」首猛夫は少し迷った。「先にこっちにしましょう。密室トリックに繋がる核心の――。ただ、覚悟してください」

 首猛夫は深く深呼吸して次の動画ファイルをダブルクリックした。


 ベッドに仰向けに勝男が浴衣姿で寝ている……

「シングルサイズのベッドです。つまりここは離れの中です」

 勝男は微笑んでいた……

 嬉しそうに笑っていた……

 ベッド脇に誰かが立っている!

「ほら! 私です。私が手に――」

 ベッドに立っている人物の手には牛刀が握られていた。

「はっきりわかるでしょう? 私は密室の中にいた! そしてその手で!」

 牛刀が素早く勝男の首に――

 血が迸り……

 生首が……

 転がって視界から消えた……

「もう結構! 止めて!」尾崎凌駕が叫ぶ!

 動画はすぐに止められた。

 

 首猛夫はただ突っ立っていた。

 尾崎凌駕は黙っている。動画の続きを、とは言わなかった。

 

「ここまででわかるでしょう? つまり、私は密室の中に……」

「いや、もういいです」尾崎凌駕が首を横に振って両手で顔を覆った。

 かなりの間沈黙が続いた。

 

 そう書かれている。

 

 動画には続きがあり、それを首猛夫と尾崎凌駕は見ていない。

 しかし、私が後日勇気を出して続きを見ている。


 勇気を出してあの映像を見る

 

 で、


 おぞましい……

 

 黒服だか青服だかが恐ろしくて直視できない、そう言っていた――まあ、彼らは生成AIによるアバターなんだが――それがよくわかる。

 ただ、幸いなことにカメラの角度的に斬首されたその切断面は映ってはいない。

 何とかその悍ましい動画をそこまで見て……

 ちなみにここまで特に私が書き加えることはない。

 

 そして、その後はまだ文章化されていないシーン。

 

 犯人が勝男を斬首したあと……

 その血に濡れた牛刀はゆっくりと再び上に……

 逆手に持ち替えられて……

 勝男の胸に……

 首のない死体の胸に……

 突き立てられて……

 

 えぐられた……

 

 思わずそこで動画を止める。

 いや、最後までやはり確認しよう……

 

 犯人は若干の肉片を抉って……

 

 そこで動画は唐突に終わった……

 

 ――やはり残虐な映像だった……

 

 見たことを後悔したかもしれない……

 

 物語を構成し進展し説明するためのロボットである私はあと何を書けばいいのだろう?

 

 勝男は斬首されて殺された……

 しかし、確かに笑っていたようにも見えた。

 

 犯人は無表情だったかもしれない。

 

 

 そう書かれている。いや、そう書いた。


 確かに私はそう書いた。

 

 その動画を黒川と一緒に見る。

 

 そして……

 

 犯人の顔がわかるシーンで……

 

 思わず頭が混乱した。

 

 二十数年前なので、ハッキリとは言えないが……

 

 犯人は尾崎凌駕だった。

 

 オカシイ! 可怪しい! 

 

「どうしました? 犯人は誰です?」黒川が訊く。


「尾崎凌駕です」私は答える。


「なるほど、AIの推理は正しかったのですね」黒川が笑った。


 確かに――

 

 Q.離れの密室殺人の犯人が尾崎凌駕だったとしてですが、その殺害シーンは動画になって凌駕と藤沢と名乗った首猛夫が見ています 首猛夫の説明で


「ほら! 私です。私が手に――」

 ベッドに立っている人物の手には牛刀が握られていた。

「はっきりわかるでしょう? 私は密室の中にいた! そしてその手で!」


 と言っています。つまり「自分が殺した。ほら顔でわかる」と自白しているわけですが、実際の動画での犯人の顔は尾崎凌駕で、でも尾崎凌駕は失顔症相貌失認なので自分の顔がわからない ということでいいのかな?


 Gemini:

 はい、その理解で非常に鋭く、まさに作品の核心を突いていると思います。


 尾崎凌駕が離れの密室殺人の犯人であったと仮定するならば、ご指摘の通り、以下のような構図が浮かび上がります。


 殺害シーンの動画とその意味

 動画の犯人は尾崎凌駕自身:

 凌駕と首猛夫が見ていたUSBメモリ内の殺害動画に映っていた「犯人」は、他ならぬ尾崎凌駕本人だった可能性が高いです。

 

 黒川さんとAIとのチャットでAIはそう回答している。

 

「しかし、オカシイですよね?」黒川が笑った。「あなたはあのミステリーにこう書いている。


 犯人の顔はハッキリ映像に映っている。

 その顔を頭の中で二十数年老けさせれば……

 私は、この医療センターに尾崎凌駕を訪ねて来ていた藤沢さん――殺し屋首猛夫と名乗った藤沢さんの顔をトイレの鏡越しに見てはいる。

 犯人の顔を二十数年老けさせればその藤沢さんの顔に一致するような気もするが、顔が似ているか? は個人の主観でもあるので、何とも言えないかもしれない。

 

 と」

 

 ええ

 

 私は頷く。

 

 これはディープ・フェイク動画だ。

 

「私には尾崎凌駕の顔はわかりません。ですがあなたは彼の顔を知っている。二十数年経過してますが、彼の顔はあなたにはわかる。顔の認識に関する障害がなければ、普通そうですよね。あなたも二十数年前の私の顔を憶えていた――いや、私の双子の弟の顔を憶えていた、そうですよね。いや、私とも二十数年前に会っているかもしれませんね」黒川が意味ありげに笑った。


 私は眩暈がしていた。

 

 いや、正確には眩暈がしているふりをしていた……

 

 やはり、もう潮時かもしれなかった。

 

 まあ、もう少し足掻いてはみるつもりだが……

 


 

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