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第54話 ドランの冒険 (後編)

 ドランさんが無事に地下水路のダンジョン管理者とコンタクトすることが出来た。

 随分適当な管理者であるが、スライムを地上に放ち監視出来る能力を持つことが分かり、ドランさんはこの管理者と上手くやればクレストの悪い噂を流している犯人が見つかるのではないかと期待したのだ。


『ものは相談ですが、』

《チビッ子の癖に固いやつだな。もー少し砕けた言い方出来ない?》

『身が水晶なので無理でしょうか?』

《それ、俺に聞くなよ。

 まぁいっか、相談って何?》


 少し身を乗り出すように体を前に動かす管理者だが、血肉は無いのでその表現が適切かと悩むドランだ。


『スパイムとやらを、私達にも利用出来ないものかと思いまして。

 諜報活動は仲間内では一番ですが、私の体は一つしかないので限界があります。

 おやつの時間と食事の時間に、屋敷の外に居る訳にはいきませんからね』


 ドランの理由が、どれだけ食い意地張ってるんだと管理者を呆れさせる。


《お前、青伝票で食ってる時があるだろ。

 特に咎められてもねえし、今のままでも構わないだろ?》


 管理者はドランさんのことも当然スパイムの連絡で知っている。

 最近のリミエンは変化が早くて見ているだけでとても楽しく、その変化をもたらせているのがドランさんの飼い主であることも勿論知っている。


『クレストさんの悪い噂を流している犯人を見つけたいのです。

 スパイムが居れば』

《なんだ、それなら知ってるぜ》

『怪しい人物をマーク…

 はい? なんと言いました?』


 管理者のクチから出た…クチではなく念話であるが…言葉が聞き間違いかとドランさんが確認する。


《お前らも目星は付けてるようだが、ズル賢いやつは自分じゃ動かないからな。

 ドランならマジックバッグがあれば瞬間移動が出来るんだから、ここにバッグを置いていつでも見にくればいい。

 スパイム映像を見せてやる》

『一緒に鑑賞しようとのお誘いですか、つまりボッチを卒業したいと言うことですね?

 いいですよ』

《何故か心にダメージを受けてる気がするんだが、気のせいか?》

『さぁ?

 人間の考えはよく分かりません』


 さすがチビッ子と言ってもドラゴンだけあって、そう言うところは実に容赦がないのである。


《ここは魔力百パーセントの空間だから、生きてる人間は入れないからな。

 全盛期のクレストでも恐らく無理だろう》

『クレストさんなら、魔力欠乏症も治ってもうすぐこちらに戻って動きだす筈です。

 今のクレストさんなら、ここにも来られるかも知れません…が、強すぎる魔力は人間の生殖機能系に働き掛けるらしく、また股間に付いてる物がムズムズするでしょう』


 管理者が自分の股間に手を当て、微妙な顔をするがドランにその表情は分からない。

 これが漫画なら汗マークを付けていただろうか?


《お前、結構なオーガだな。

 ま、今なら嫁二人いるから自分一人で処理しなくてすむから良いんじゃないか?

 むしろその方が助かる奴らも居るんだろうが。ハーレムが男の夢だった時代はもう来ないものか?》

『どうなんでしょう?

 そのせいで早死にするぐらいならノットハーレムを推奨します』

《水晶龍の推奨か…ヒヒヒハッフフハ~!

 ファガッ! いてて、顎が外れそうっ!》


 何処に笑うツボがあるのか全くわからないドランさんであるが、確かに骸骨の管理者にツボはない。


《ま、今はマジックバッグを持ってないなら次に来る時に持ってこい。

 お前が地下に着いたら、ここまで飛ばしてやるからさ》

『それは助かります。

 クレストさんがここに来て大丈夫かは、本人に聞いてオッケーだったら試しましょう。

 後は…そうでした、あの黒龍や赤熊の置物は何なのですか?』


 話は済んだので戻ろうかと思ったドランだが、あの広間にあった四体の像のことを思い出す。


《あの広間と像は俺がここに住み着く前からあったもんだからな、実は俺も知らねえんだよ。

 四聖獣かと思えばゴーレムなんて混ざってるし、何がなんだか訳が分からんだろ》

『四聖獣ですか…ですが、どれもクレストさんと関係があるのではないでしょうか?

 魔熊のことも知っている様子でしたし』


 魔熊についてクレストが明確に言った訳ではないが、会ったことがあるのか悪い熊ではないと述べていたことをドランさんが思い出した。


《魔熊の森付近には話の出来る管理者の居るダンジョンは無かったから、俺らにも情報が無い。

 俺と同じ骸骨が居たが、ずっと寝てやがったし、最近はダンジョン反応も無くなったからダンジョンクリアされたんだろう》

『ダンジョンネットワークと言うやつですか。

 偵察範囲の広いサポーターが居れば便利ですね』

《大抵がネズミ、スライム、コウモリ、ゴキブリを使うからな》


 アルジェンを産み出した魔界蟲本体さんが如何に優秀か、これだけでも分かるだろう。


『あの、ゴキブリ使うのはマズイんじゃ?

 ネズミもですけど』

《だろ? だからスライムを使うんだよ。

 あ、コウモリも何匹か飼ってるぜ。

 コウモリはたまにフクロウに食われるけどな》


 カラカラと笑う管理者にそろそろ暇を告げようとドランが前足を上げる。


『では、長居しましたが戻ります。

 次はクレストさんを連れて来ます』

《ダンジョン管理者のことは知ってるから大丈夫だろうが、ここの事をなんて報告させるんだ?

 このダンジョンが潰れると町はダメになることや、あの異常の原因をどうやって突き止めたのか聞かれるだろうな。

 安全宣言するにも納得させる理由がいるだろ》


 言われてみればそうかとドランさんが納得したが、それはクレストに任せれば良いと丸投げすることにした。


『大丈夫です!

 根拠はありませんが、何とかなります。

 人は考え過ぎたら禿げるそうですし』

《そりゃ違いない! 俺なんか考え過ぎて全身脱毛してるからな!》

『それは違うと思いますが、良いでしょう。

 近いうちにまた来ます。

 今日はありがとうございました』


 後ろ足で立ってペコリと頭を下げると、

《いいってことよ、暇潰しになったしな。

 次に来る時は何か食うものを持ってきてくれ》

と管理者が手を振った後に何かを食べる仕草を見せた。


 それからほんの一瞬か、辺り一帯の魔力粒子が眩しく光り、ドランさんが居たのは例の東屋の中だった。


『お腹が空きましたね。

 急いで戻ってご飯にしますよ』


 そう言うと、銀色の水晶の体を輝かせながらクレストの屋敷を目指して飛び立つのだった。

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