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第52話 ドランの冒険 (前編)

 丘の鯨団がエレベーターで地下に降りたは良いが、悪臭には勝てずにすぐに撤収することとなった。

 内部構造が知れたのと探索が出来た範囲に魔物の姿は見当たらなかったことしか成果は出ていないが、悪臭対策が必要になることが分かっただけでも一歩前進と言えるだろうか。


「そう言えば、クレスト君が何故か…まさかこの事を見越していたのか?」


 理由は知らないが、クレストが椰子の実の殻の灰を使用した商品を作らせていたことを知っていたライエルがそう漏らす。


「アイツがどうかしたのか?」


 鯨団のリーダーのバレイアがそう問うと、

「先に起きることが分かっていたかのような行動を取っていたことに驚いただけだ。

 後で商業ギルドによってみようか。

 悪臭対策はどうにかなるかも知れないからね」

と、かなり的外れの答えを返す。


 いくらクレストだと言っても、下水道に好き好んで入る訳はない筈であり、何故おかしな形のマスクを作らせたのかライエルは聞いていなかったのだ。

 この場にレイドルが居れば、その用途ぐらいは答えられただろうが。


 領兵達は悪臭相手にはどうにもならないと手を上げ、魔法士ギルドも一次的な浄化は可能でも継続となると魔力が足りないと探索を諦める。


 そして彼らがその場を立ち去った後、ミニッチュさんと合体して銀色の水晶のように見えるドランさんがパタパタと飛んでやって来たのだ。

 太陽の光を反射して良く目立つドランさんを警備兵が見張り台から見付けるのは簡単なことであった。


 いつもと違う姿に見えるドランさんに違和感を覚えたものの、法に触れることをしない限り自由にさせておくことと布令が出ている対象なので、隊長に報告はしたものの、特に止めることはしなかった。


 そのドランさんがミニッチュさんに誘われるままに東屋のような施設に入ると、三角形のボタンを魔力の流れを元に探り当てた。


『この下にダンジョンがあって、これは移動用の設備ですか。

 こんな物を用意すると言うことは、少なくともすぐに襲ってくるつもりは無いと考えて良いですよね』


 迷うことなく下に移動するボタンを押すあたり、見た目と違ってかなり出来るドラゴンである。


 そして地下に到着すると、ダンジョン管理者の使い魔として活動してきた経験を生かしてここのダンジョン管理者の居場所を突き止める。


『ミニッチュさん、居場所がわかりました、まっすぐ進みますよ』


 ミニッチュさんからの返事は無いが、気にすることなく迷路のようなダンジョンをずんずん進んで行く。


『このダンジョンは森のダンジョンとは違って空間圧縮も拡張もされていませんね。

 無用心だと思いますが…いや、違いますね、    これは異空間と現実空間を見事にマッチさせた、こだわりのダンジョンですね。

 維持するための魔力は地上の住民達から集める方法で運用しているなんて、手が込んでますよ』


 一人でそう感心しながら訳の分からない独り言を機嫌良さそうに念話で呟き、何度か角を曲がって太くない通路を進む。

 水晶の体のドラゴンだけあって下水の臭いなど何のその。


 そして半時間も経たないうちに怪しい広間に到着した。

 

『魔法陣と…あれはリングですかね?』


 広間は直径十メトル少し程の円形で、壁の少し手間まで魔法陣が描かれており、ドランはリングと言ったが相撲の土俵のような物が四つ、四角を描くように綺麗に並んでいた。


 その魔法陣には興味を示さず、まっすぐ一番手前の土俵?の上にドランが移動する。


『これは…ドラゴンで…すか?

 アーミンぽく見えますが』


 一つ目の土俵の上には、高さ一メトル程のアーミンに似た黒いドラゴンの像がある。


 ここを東と仮定し、南にあたる土俵には赤色の熊の像がある。木彫りでもなければ鮭も咥えていない。


 そして西になる土俵にはお座りした白い犬のような像がある。


 最後に北の土俵には、不格好にガッツポーズのゴーレムの像が立っていた。


『どれも怪しいとしか言えませんね。

 確か…青いドラゴン、赤い炎の鳥、白い虎、そして茶色の亀なら分かるのですが。

 それにしても…このゴーレムだけ魔力が感じられませんが、何か意味があるのでしょうか?』


 ここにクレストと共にキリアスで戦った仲間達が居れば、そのゴーレムに見覚えがあると言ったことだろう。

 残念ながら、ドランは壊れたゴーレムには一切興味が無かったので、残骸を見ていないのだ。


『それにしてもこれがアーミンだとしたら、赤い熊や白い犬も実在している魔物だと考えるべきでしょうかね』


 赤い熊と聞けば『魔熊の森』に暮らすあの魔熊を連想するところだが、ドランはその魔熊のことも知らないので、おかしな色の熊だと少し笑う程度の対応を見せる。


『ここの置物にどんな意味があるかは分かりませんが、今は置物より先に管理者に会いに行かないと。

 またダメドランと呼ばれますからね』


 アーミンに話をしに行くと出て行って、くしゃみでアーミンのクシャミで飛ばされたことをまだアルジェンにネタにされるドランである。


 ここはしっかりミッションコンプリートすることで、アルジェンに『どうだ!』と言いたい千歳児だった。


 四つの像の広間を出た先は、通路が行き止まりとなっていた。

 だが腐っても龍と言うべきか、あっさりその幻影の壁を何事も無かったかのように通過したのだ。


 その際、初めての攻撃的な魔力がダンジョンから放たれたのだが、ドランには全然効果が無かったようで、

『少しピリッとした。

 トラップでもあったのでしょうか?』

と気にしないで壁の先へと進んで行く。


『ここは真っ暗ですね、魔力節減中かも知れませんね』


 真っ暗闇の中でもドラゴンの行動には支障がない。

 キリアスのダンジョンで管理者のサポート役をしてきたドランが暗いからと言ってびびる筈が無いのである。


『おや、管理者はこの先のようですね。

 他人の管理センターに入るのは初めてですが…』


 ダンジョン管理者が居る場所はそのダンジョンで最も重要な施設であり、簡単に立ち入り出来る訳ではない。

 骸骨さんが寝ていたあの部屋も、本来であればスライムのウィズが入れる隙間など無かった筈なのだが、ゴブリラがはっちゃけ過ぎたせいで壁が崩れたのである。


 実は防御に徹したあの時のウィズは、彼が思っていた以上に高い防御力を有していたのだ。

 ダンジョンの壁にぶつけられてそこを抉るぐらいの破壊力を持っていたのだから。


 勿論そんな話はドランも聞かされておらず、好奇心でプライベート空間内に侵入したが悪いことだと一切思わない千歳児である。 

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