第49話 リミエンでトラブル?
骸骨さん、俺が風俗店に行ったのばらしやがった…エマさんは知っていたぽいけど、オリビアさんはショック!と言う様子。
「あの時は魔界蟲本体さんをアイテムボックスに入れてて、そこで魔力を放出しまくってクレストがおかしくなってたからな。
クレストは普段なら自己処理するんだろ?」
「それは…黙秘で…」
余計な事を言わんでよろしいって!
「で、魔力欠乏症が治ったと思ったら前より魔力量が増えてやがる。
お前、そんなんだとまたすぐに下半身に溜まるぞ。
その魔力は適当に処理しないとやべぇことになるが、オリビアも居るから何とかなるか…?」
あの時みたいに、また下半身のムズムズが止まらなくなるって?
それは…エマさんとオリビアさんにお願いすれば済むと言えばそうだけど…
「まあ、苦しい思いをするのはお前だから、俺は知らん。
二人と良く相談するこったな」
そこでエマさんとオリビアさんが何やら相談を始めたようだ。
「それなら私も混ぜて欲しいのです!」
「アルジェン、混乱に輪を掛けるなよ」
「二人も三人も変わらないのです!
パパが少しやつれるぐらいの影響しかないと思うのです!」
「影響ありすぎだょっ!」
無茶苦茶な理論だな。
でも、どうして魔界蟲から生まれたアルジェンが、人間の性行為にそんなに興味を持つのか不思議で堪らない。
「あっ、それとパパ、ミニッチュさんから気になる報告があったのです」
と言って、急に真面目な顔をするアルジェンだ。
「ミニッチュさんから?」
「リミエン方面で大きな魔力異常が発生しそうだと言ってるのです。
夜の間にリミエンでスパイ活動をしていて予兆を検知したらしいのです」
「…どっちに突っ込んだら良い?
とりあえず、スパイ活動ってなんだよ?」
確か、ミニッチュさんは地下を通ってリミエンから世界樹のもとに来て、データのやり取りをすることが出来るんだったな。
けど、スパイ活動なんかする必要はないだろ?
「パパの悪口を言っている犯人を突き止めて、たくさん甘やかして欲しいのです!
出来れば私もお嫁さんにして欲しいのです!」
「甘やかすのは構わないけど、嫁は無理だぞ。
嫁にならなくても、いつでもそばに居れば良いだろ。
好きなもの食わせてやるから」
「言質は取ったのです! 今日のお昼は焼き肉が食べたいのです!」
お手軽料理のリクエストで助かるよ。
手の込んだ料理はブリュナーさんにお願いするしかないもんね。
「と言っても、普段からかなり甘やかしてると思ってるけど」
「まだまだ足りないのです!
私が全力で戦えるバトルステージを作って欲しいのです!」
「火山噴火で壊れない施設なんて作れる訳がないだろ…さすがに無茶な要求だ」
でも、待てよ。
オリビアさんの偽炎・斬でも斬れないカカシを解析して、その機能を織り込んだ施設が作れるならそう言うのもありなのか。
それに俺が溜まった魔力を吐き出す場にもなるし。
「魔道具の専門家と相談だな。
通信魔道具と魔力絶縁体とで忙しいと思うけど、戻ったらお願いしてみるか」
「やったー!なのです!」
アルジェンが俺の顔に抱きつき、頬を擦り付けているのか何かくすぐったい。
「あの…魔力異常の話は?」
とオリビアさんが不満そう。
すまん、そっちは忘れるところだったよ。
「ミニッチュさんの報告によると、領主館の近くで異常が起きているそうなのです。
リミエンには地下にダンジョンがあるので、それに影響がないか心配なのです」
「領主館の近く? あの辺りは広場になってて、何も無い筈よ。
クレストさんが王都に行ってる間、ハーフエルフ達が工事魔法の訓練を毎日してたわね。
すぐ近くに広い空き地があって丁度良かったらしいわ」
エマさんは毎日領主館に通ってたから、練習を見てたんだ。
と言うことは、あいつらに馬車鉄道の工事の練習をさせたあの辺りが現場に?
いやいや、そんな筈はないだろう。
「それさ、多分、かなりの魔力を毎日地面に流し続けたんじゃないのか?」
と骸骨さんがクチを挟む。
「あの、リミエンの地下にダンジョンってところはスルーなの?」
とオリビアさん。
言われてみれば、町の下にダンジョンがあるなんて不安になるかも。
この森のダンジョンが安全だから、すっかりダンジョンが危ない場所だと言うことを忘れてた。
「まぁ、ダンジョンと言ってもリミエンのは地下水路がダンジョンになったパターンだから、普通なら心配いらんさ」
「そうなんだ。骸骨さん、良く知ってるなぁ」
骸骨さんが物知りなのか、キリアスはそう言う知識も豊富だったのかは知らないけど、心配ないならスルーだな。
「それって、穴がダンジョン化するってやつの大規模な感じか?」
「魔力がある程度溜まってダンジョン管理者が定住するとダンジョン化が完了する。
穴は世界中にたくさんあるが、ダンジョン管理者が居ないからダンジョン化しないだけだ。
俺もダンジョン管理者やってたから知った話だ」
骸骨の姿で二百年以上も管理者をしてたんだから、ダンジョンネットワークで色々知ったのか。
「地下水路がダンジョン…それって、魔物が居るの?
たまに冒険者ギルドから掃除の依頼を出しているんだけど」
とエマさんが不安げな顔になる。
「恐らく掃除用にスライムを飼っているだろうな。
下水道が通っている所から井戸で水が汲めること自体、普通に考えておかしいだろ?」
それは俺も不思議に思ってた。
それと地下水路の壁や天井が崩落する可能性だってあり得たんだけど、それがダンジョンなら話は別になる。
基本的に何故かダンジョンは壊せない。
その設定が下水道に適用されるのだから、コンクリート製の下水道より信頼性があるわけだな。
「町の中にある排水路からダンジョンに汚水を流してたのね、贅沢な使い方だわ」
「骸骨さん、その地下水路ダンジョンにも管理者は居るんだよね?
随分人に優しい管理者だけど」
「そう言う管理者は、生前も良く出来た人間だったんだろうな。
人間でないと、共存なんてさせる訳がねえよ」
上下水道はコンラッド王国ができてから整備された筈だけど、それだとダンジョン化してからまだそう長くはないのか。
「溜まった魔力で汚水を浄化している可能性もあるのか…それならスライムは居ないかもな」
「そんなダンジョン管理者を、ハーフエルフ集団の魔法の訓練のせいで怒らせちゃったの?」
「工事魔法に恐怖を感じたのかも知れんな。
詳しいことは俺にも分からん」
と言うことは、俺が原因で管理者を怒らせたのかも。
「それなら、リミエンに戻ったらダンジョン管理者に会いに行くと良いのです!
きっと話せば分かるのです!」
「問答無用で襲い掛かって来るかも知れないぞ」
戦前の首相かよ、と内心思いながら冗談ぽく返事しておく。
「ところで、ミニッチュさんを使者にして手紙を渡すとかは無理なのか?
魔力異常を放置して良いかどうか分からないけど、早く終息させるに越したことはないだろ」
「ミニッチュさんにアイテムボックスは使えないのです」
そうなのか。
結構万能なのでミニッチュさんにもアイテムボックスあると勝手に思い込んでたよ。
「あの、ここで呑気に話していて大丈夫なの?
ドランさんも居るんだから、マジックバッグでリミエンに戻ってもらって、地下水路のダンジョン管理者に話を付けに行ってもらった方が良くないかしら?
私の持っているマジックバッグを使って良いから」
一番危機感を持っているのは、どうやらオリビアさんのようだ。
「ドラン一人だと心配なのです。
アーミんとやったように、ミニッチュさんと合体して一緒に行くと良いのです!」
黒水晶になったと言うあれか。
銀色のミニッチュさんだから、今度は銀色のドランさんに化けるのかな?
俺も黒いドランさんを見てみたかったよ。
『えーっ! 今度はミニッチュさんですか!』
「グジグジ言わないで、さっさと試すのです!
タイムイズマネーなのです!」
アルジェンにそう急かされ、ドランさんがパタパタとミニッチュさんの上に着地すると何やらミニッチュさんにレクチャーしているようだ。
『では、本邦初公開!
ミニッチュさんと合体してみる!』
ミニッチュさんがキラキラと銀色に輝く魔力の粒子となって姿を消した。
そしてドランさんも魔力の光で直視出来なくなる程の光を出しはじめ、それが終わると中に銀色の針が入ったような綺麗な水晶に早変わり。
『絶対成功しないと思っていましたが、こうも簡単にやってしまうとは、天才ですかね』
天才かどうかは知らないけど、プラチナルチルクォーツみたいな感じで高級感が凄い。
『では、早いうちに移動しますから、そのバッグをクレストさんの物にしてください』
新しい体に少し不安げなドランさんだが、オリビアさんにマジックバッグの中の物を全部出させて俺を使用者に変更させた。
『では、先に行ってきます!』
そう言うと、勢い良くマジックバッグに飛び込んで姿をけしたのだった。




