第47話 骸骨さん、そりゃねえだろ…
森の中でクレールから体を作ったと言う骸骨さんと出会った。
服こそ成金スーツだが、それ以外は俺にそっくり…と言うか、完全な俺である。
スライムって実は万能細胞で出来ているのかもね。
「それで、初代勇者の魂を持つのは本当なのか?」
特に興味は無いが、これ以上ハーレム談義に付き合うつもりも無いので話題を変えようと思う。
「そうだぜ。と言っても普段は俺の中でグースカ寝てるがな。
アイツはキリアス統一と魔界からの侵攻の阻止でやりきった感満載で、特にすることもないから滅多に起きちゃこねぇよ」
「それって、まるで俺と骸骨さんとの関係みたいだな。
それで、骸骨さんは今の体の方は大丈夫なの?」
「それなら慣らし運転は終わったぞ。慣れるまでは、関節がおかしいことになってたけどな、
ほれ、こんな感じでな」
「えっ!?」
骸骨さんがニコニコ笑いながら、腕を反対方向のあり得ない角度に曲げるパフォーマンスを披露して俺達をドン引きさせる。
「キモッ! 夢に出そう!」
「クレストさんにそっくりだけど、あなたが人間じゃないのは分かったわ…」
「どっちが本物か分からない時は、そうやって確かめれば良いのね」
エマさんはまだ骸骨さんに適応出来ていないようだが、オリビアさんは家畜を扱っているからかもう適応してるわ…スライム人間が家畜と同じとは思えないけど。
「それで、骸骨さんはその体で何をするつもりだ?」
「別に悪いことはしないさ。
クレールがこのダンジョン管理者の手足になってるから、俺もその役目を果たすつもりだ。
まぁ、下半身がうずくようなことがあれば、何か考えんとな」
元はスライム…でも俺と全く同じ体なら、生殖機能もしっかり有してるよな?
ここで確かめるのは憚れるけどね。
「頼むから、俺の知らないところで子供を作ってくれるなよ」
「ギルド職員や移住者の女性には手を出さないでね!」
「それなら、また俺の魂だけクレストの中に戻れるか試してみるか?
クレールも俺が抜けたらスライムに戻るか確かめてみたいしな」
魂って、そう簡単に移動出来るものなのかな?
クレールの中に骸骨さんが移動したのは、治療で大量の血液をクレールに流したからだと思うのだけど。
また同じような事をしないと移動出来ないのなら、ありがたいような、ありがたくないような…。
アルジェン達みたいに、全身を魔力粒子化することが出来れば意外と簡単に移動出来るかも知れないか。
「ムム! ムムムッ!」
「急に始めんなよ。で、出来そうか?」
「話し掛けんな!
精神集中、一球入魂、万事休す!
きゅうきゅうにょりつりょう!」
「アルジェンみたいな奴だな…それ、何の意味があるんだよ?」
俺の問い掛けに答えず忍者みたいに指を立てる骸骨さんだが、何の前触れも無く突然服を着たスライムに化けた…まるで透明な材料で作ったマネキンである。
「あっ、消えた!」
そう呟いた俺の中から、
『どうよ? ちゃんと移動出来ただろ!』
と少し威張ったような口調で骸骨さんが言ってくる。
その声は念話と同じものなので俺にしか聞こえていない。
「クレストさんの中に、ガイ・コースケさんが入ったの?」
「どっちかと言うと、セラドリックさんの方なんだけど、残念ながら入ってきたよ」
「そう…あの人のせいでクレストさんに悪い噂が流れてるのよね…」
「そうだけど、骸骨さんのお陰でキリアスから予定より早く脱出出来たんだし、根は悪い人じゃないんだよ。
それに魔王セラドンだから」
『魔王とか、セラドン言うなっ!』
怒られた…。
「じゃあセラドリックさん、頼むからクレールに戻ってくれないか?」
『なんでだ? お前、このあと無茶苦茶アレやるんだろ? 俺も混ぜろょ』
「しないし! 冗談言うなって!」
『お前、馬鹿か。今がチャンスだろ。二人もその気だし、スオーリー達もそのつもりで送り出したんだろ、そこは汲んでやれよ』
それは多分、骸骨さんの思い違いだよ。
エマさんもオリビアさんも、俺が心配で付いてきただけだって。
副団長たちも、単に散歩と言うか、デートをさせてやろうと、気遣いしただけに間違いない。
『俺の方が人生もエッチも経験豊富!
女の喜ばせ方を知らねぇガキはすっこんでな、それにお前も二人が相手だと倍以上気を使うだろ?』
そりゃ…確かにどちらも経験豊富とは言えないけどさ、そう言うのってズルくない?
と言うか、アレやるとは限らないだろ?
『それか前半、後半で入れ替わるのもありだな、よし、そうするか』
「勝手に決めるなって!」
『俺が中に居る時はな、自由にお前の意識のコントロールが出来るって事を忘れるなよ。
それに俺は魔王だからな、それぐらいやって当然だろ。
命の恩人に対する礼だと思って勘弁しろや』
ぐぬぬ…言い返せねえっ!
だからと言ってナニの最中に入れ替わるなんて、そんなの許して良い訳無いだろう。
まさかフィニッシュの直前で入れ替わるつもりじゃないよな?
「あの…骸骨さんのセラドリックさんって…本当に魔王のセラドリックなの?」
俺が骸骨さんにどう反論しようかと考えていると、エマさんがそう聞いてきた。
魔王セラドリックはわりとコンラッドでは英雄的存在だし、気になるのは当然だろう。
単に勇者が外道過ぎて、相対的に骸骨さんの方が良く思われているだけじゃないかって今の会話で思えてきたんだけど。
まぁ、俺も骸骨さんには興味あるから話を聞かせて貰おうか、
「おーい、骸骨さん! 二人に教えてやってよ…あ、俺も聞きたいから、クレールモードで頼むわ」
『仕方ねぇ、教えてやるか。
その代わり、いつかお前の代わりにやらせてくれよ?』
「二人が許可したらな」
どれだけそっちに餓えてんだよ…かなり溜まってるなぁ…あ、でも骸骨さんは体が出来たばっかりだろ?
まだ溜まる程の時間は経ってないと思うけど…そう言う問題じゃないのか?
骸骨さんがおかしな真似をしないように、このダンジョンに風俗店を作って貰うおうか…いや、骸骨さんの為に作るのはちょっと違うよなぁ。
ルーファスさん達用に夜のお店を…生活が落ち着いたらそう言う方面の問題も出てくるのか…確か風俗って嘘かも知れないけど最古の商売と言われてるんじゃなかったっけ?
衣食住が足りて、仕事もあってお金が入るようになれば、性活もしたくなるのは人間なら当然なんだよね。
公営にして上手く経営出来れば、リミエンとしても悪い話ではないのだけど、さすがにダンジョン内の居住区域に夜の町を作るスペースは無いか。
そんな事を考えている間に、涙滴形に戻っていたクレールがズルズルと俺の姿に戻っていった。
まるで液体状から人の姿に変わる某映画に出てくる敵のように…そして…全裸で俺達の前に骸骨さんが立つ。
「キャッ!」
と、顔を反らすのはオリビアさんだ。
エマさんは…何処をチェックしてんだろうね…恥ずかしいです…
「早く服着てよ」
「脱ぐ手間省けただろ」
「だから、今はやらないのっ!」
腰に武器を提げていたら、絶対ぬいてたぞ。
あ、今ならアイテムボックスも使えるから、後でアルジェンに預けてある荷物を回収しとかないと。
「あっ! 繋がってる!」
と思わず叫んでしまったのは、そのアイテムボックスがアルジェンのそれと繋がっていたからだ。
繋がったと言うより、同じ異空間を共有していると言うべきか。
「その成金スーツじゃなくて、着るなら普通の服にしてくれ」
と、アイテムボックスから地味な衣服を一セット取り出して、ボディービルダーのようなポーズを取る骸骨さんに手渡す。
「やらないのか…残念」
本気でそう思っている骸骨さんの頭に思い切りチョップをかますが、ギリギリのところで腕を出して受け止められた。
「俺に喧嘩を売るには十一年三ヶ月早ぇよ」
「随分中途半端だな。その根拠は?」
「聞くなよ…ノリに決まってんだろ。
アイテムボックス使えるなら寛ぎセットと食いもん出してくれや」
「アイテムボックスじゃなくて、『格納庫』スキルだからな」
勇者にしか使えないと言われているアイテムボックスを、俺が使えるなんて言える訳がないだろ。
「やっぱりアイテムボックスだったんだ。
ガイ・コースケさんの魂がセラドリックさんに宿って、それでクレストさんにもアイテムボックスが使えるようになったのね」
エマさんがそうだったのか!と得心の行った顔をする。
「じゃあ、俺の『描画』スキルもガイさんのスキルなの?」
「あぁ、それは魔法の勇者のスキルなんだ。
俺が死んだ時に剣の勇者と魔法の勇者も一緒に死んだんだ。
だが、俺はダンジョン管理者としてあるダンジョンに呼ばれて行ってな、その時に勇者二人の能力も取り込んだって訳」
「えーと…つまり俺は初代勇者と骸骨さんと、勇者二人のスキルを持ってるって訳?」
俺自身にはスキルがなくても、四人分のスキルがあるってことだ。
通りでアレコレとおかしなスキル構成になってた訳だ。
「そう言うこと。勇者三人、魔王一人の合体したのがクレストって訳だな」
「…それであんなに魔法がポコポコと使えたり、素手で戦えた訳ね。
反則過ぎて笑うしかないかも」
「そうね…魔法の勇者のスキル…道路工事、火山噴火、治癒魔法…色々と出来る訳よ。やっと納得できたわ」
骸骨さんの言葉に、エマさん、オリビアさんの二人がそれなら当然よね!と頷くのだった。




