第46話 遭遇、骸骨さん
世界樹の神様『フラクヌス』の治療によって復活した俺だが、念の為にもう一日世界樹のそばで時間を過ごすことにする。
本当なら少しでも早くリミエンに戻って無事な顔を皆に見せてやりたいところだが、この体にもし何かあっても対処出来るのがフラクヌス様だけなのだから仕方ない。
魔力の扱いは少しずつ慣れて行くとして、問題は全く反応の無い骸骨さんである。
何処を探しても痕跡が見つからないので、俺の中から居なくなったのではないかと思うしかない。
じっとしていても暇なだけなので、少し辺りを歩いてみるかと思い立つ。
「ちょっと散歩してくる」
「それなら私も」
「当然私も付いていくわよ」
エマさん、オリビアさんの二人のがそう言って俺の手を取る。
マーメイドの四人とスオーリー副団長は留守番をすると言って俺達を追い出す。気を使っているつもりなのだろうか?
アルジェン達チビッ子達は、ミニッチュさんに乗って遊びに出ているのでここには居ないが、アルジェンには俺の居所は簡単に突き止めることが出来るので心配は無い。
天井さえなければ、ここがダンジョンの中だとは思えないような自然豊かな森が広がる。
ダンジョンの構成はダンジョン管理者が魔力を使って自由に変更可能なのだが、この森は世界樹が作り出したのではないのだろうか?
外の世界とそれ程変わらぬ森の中を歩いていると、前から場違いな成金スーツを着た人物が歩いてきた。
服はアイテムボックスに入っていた物のように思えるが、それは大した問題ではない。
問題があるとすれば、それは、
「クレストさんっ!」
とエマさん、オリビアさんが叫んだことぐらいか。
「違う…骸骨さんが出てきたのか?」
二人が俺と見間違える程そっくりな人物が居るとすれば、俺の遺伝子情報を利用可能なアルジェンか、もしくは神様か骸骨さんしか答えはない。
アルジェンは反対方向から笑い声が聞こえているし、神様がわざわざ成金スーツを着るなんて意味のないことはしないだろう。
そうなると、俺の体を取り戻した…そもそも俺自身も骸骨さんから体を貰ったようなものなので、そう言うとおかしな話になる…のは骸骨さんしか居ないのだ。
「もっと驚いてくれよ。面白くない」
と冗談そうに骸骨さんがそう言って笑う。
「その体はどうやって作ったんだ?
魔法でできるのか?」
「あぁ、これはクレールがベースになっている。
見た目はお前そっくりだが、スライム人間だぞ」
海賊の頂点を目指す主人公のように、言葉は発しないが手を延ばしてスライムアピールをする骸骨さんだ。
「お前の血液から情報を得ているからな、見た目はそっくりになって当然だろ。
飲食や生殖機能は知らん」
「飲食は良いけど、生殖機能は試さないでくれよ、マジで頼む」
俺の遺伝子情報を元にクレールを変形させたクローンみたいな体なら、生殖機能まで備えていても不思議ではない。
俺の覚えのないところで子供を増やすような真似は絶対厳禁にしないとな。
「いや、四人も相手にするのは大変だろ。半分受け持つつもりだが」
「何で四人だよ、二人で打ち止めにするつもりだぞ」
「そんなの無理無理、長いものには巻かれるしかねぇよ。
ま、暫くは二人で良いが妊娠したら自己処理するつもりか?
折角なんだから貰えるものは貰っとけ。それが上手な世渡りってやつだ」
「俺の顔して、まさかのハーレム容認派かよ」
まさか骸骨さんがハーレムに賛成だなんて、これっぽっちも思ってなかった、と言うか、今の状況で何でそんな話題を振ってくるんだよ?
「あのな、人ってのは自分の常識が通用しない相手は怖いんだよ。だから身を守る為に排除したくなる。
お前が家族のことを大事に思うのなら、リミエンの常識に沿った言動をすることだ。
そうしてお前もリミエンの普通の人間なんだと受け入れてもらうことが、家族を守ることになる。好き嫌いや我が儘を通すのはな、マイナスにしかならねえんだと早く気付けよ」
あれ? 骸骨さんの言ってることって意外と正論…?
エマさん、オリビアさんもその言葉に頷いてるし。
「お前的には難しいかも知れんが、二人を娶ると決めている以上、三人、四人もそう変わらんとゴリ押ししてくる奴らが出てくる。
断れねえ相手から押し付けられる前に、きっちりガードを固めるんだな。
エマ、オリビア、お前らはクレストがそうなるべきだと理解しているよな?」
理解しているが、そう簡単には納得行かないのも当然のこと。
「友達同士が嫁同士になるだけだ。
サーヤ、カーラは友達枠だが、あいつらもそれはそれって納得済みだしな」
「あの…骸骨さんって?」
「えっ? 俺の中に居た人だけど」
「それは何となく分かった。
そうじゃなくて、何で骸骨さんなのかなって?」
あっ…そうだょ、エマさんには骸骨さんの正体…と言うか、俺の秘密を教えてないからどうして骸骨さんって呼ぶのか分かる訳がない。
何て答えたら良いのかな?
「信じる、信じないは二人の自由だが、俺は一度死んで骸骨になっている。
そんな俺の魂が何故かクレストの中に迷い混んだって訳なんだが、俺の名前がガイ・コースケ・ル-トンだったんで、死んでた事と掛けてガイコツさんって呼ぶようになったんだ。酷ぇ話だろ」
咄嗟に良くそんな嘘が出るもんだ。まさか骸骨さんって詐欺師だったんじゃ?
「ガイ・コースケ・ルートン?
…あの…それって多分、初代勇者の名前だよね?
本当に?」
「だから信じる、信じないは任せるって言ってんだよ。
俺もクレストと同じように違う人間の魂を持っていたからな、クレストの情緒不安定はそのせいなんで俺が出たから落ち着く筈だぜ」
「そうなのか! そりゃ助かるっ!」
どうして初代勇者の名前を持ち出したのか知らないが、骸骨さんが出て行ったことで情緒不安定が無くなるのなら大歓迎だよ。
「ちなみにだが、俺の本当の名前はセラドリック。
生前には魔王の称号を勇者どもに付けられたが、魔王と呼ばれる程のことはやってねぇ。
勇者にとって目の上のたんこぶだったから、そう呼ばれるようになっただけだ。
その魔王と呼ばれるようになった理由が勇者の魂だったとは、どんな冗談なのやらだ」
「…骸骨さん、記憶が戻ったのか?」
骸骨さんは嘘を思い付きでそうペラペラ喋るような性格ではないから、俺と別れたことで記憶が戻ったのかもな。
「あぁ、かなりな。ショック療法ってやつかも知れんな。
残念だが、クレストの記憶は恐らく俺がクレストの中に入った時に壊してしまったようでスマン」
俺の記憶はスライムの時にはかなり欠損していたから、骸骨さんのせいじゃない。
恐らくスライムの能力の限界を超える情報量があったせいで、オーバーした部分が消えてしまったのだと思う方が気が楽だ。
ぶっちゃけて言うと、昔のアニメや古いコミックの情報は消えても良かったのに…それを言うと、アルジェンが怒るだろうな。
「それは気にしてないから心配するなよ。
で、骸骨さんはもう俺の中に入ってこれないんだよな?」
「ほほぉ、それをお望みなら入れてやろう」
「ばかっ! 俺はノーマルだっ!」
骸骨さんが股間とお尻を隠しながらそんな冗談を言うので、女性二人が目を隠す。
「クレストさんは渡しませんからねっ!」
「そうよ! 男性同士なんてダメですからっ!
…でも元はスライム?…この場合は…?」
「オリビアさん! そこ、真剣に悩まなくて良いからね! 軽く流そうょ、骸骨さんの冗談だから!」
「ふむ、それなら男二人、女二人のくんずほぐれつでも試してみるか。いや、俺とクレストなら四人までは相手に出来そうだ」
「冗談もほどほどにしろよっ!」
体を持った途端になんて事を言いだすのやら。
俺の体に居た時も楽しんだ癖にさ…骸骨さんもやっぱり男だから楽しみたいんだね?
「スライムはごめんなさい!」
「エマさん! 本気にしたらダメ!」
体調不良でかなりペースが乱れました。




