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(閑話 骸骨さんの過去 Part.7)

 間木野の前に魔方陣が復活したのを確認した俺は、咄嗟に恐竜のような鎧の魔装エレンガッセンに全魔力を注ぎ込んだ。   


 間木野が白リン弾と呼ぶ凶悪魔法が着弾する本当に僅かの差で、エレンガッセンが土色の恐竜の姿から金色のドラゴンへと進化を終わらせる。


 そしてエレンガッセンに着弾した間木野の攻撃魔法は装甲を大きく抉ったが、俺に即死させるだけのダメージを与えるには至らなかった。


「土壇場で金色に光るなんて、スーパー野菜人なのっ!?

 それとも連打が大好きな天馬の鎧の人?」


 現地人には絶対分からないネタでそう間木野が叫んだ時だ。

 デーモンロードの呪いを受けて自らの手で喉を握り潰そうとしていたイッコウが、ここで最後の時を迎えたのだ。


 そしてアイテムボックスを持つ者が死んだことで、異空間に収納されていたイッコウの持ち物が山のようにダンジョンにぶち巻かれて行く。


「先にイッコウが逝ったみたいだけど、すぐにアンタも!」


 白リン弾魔法の連射を中断し、勝ち誇ったようにアハハと間木野が高笑いをあげる。

 魔王は良いところが一切無いままに白リン弾魔法であの世へと旅立っており、今この場で生きているのは俺と間木野の二人だけだ。


「間木野! お前は絶対にやっちゃならねぇ一線を越えたんだ!」

「だから何よ! 今度はちゃんと残り魔力を気に掛けて連射したから私はまだ動けるわ。

 でもアンタはどうなの? 全身血まみれじゃないの。

 そんなんで私に勝てると思って? 接近戦しか出来ない格闘バカの癖に!」


 そう、確かに俺は格闘しか出来ないさ。

 でもな!


「俺にはテイムがあることを忘れてねえか。

 もう試合は終わってんだよ! 頭の上をよーく見てみなっ!」


 間木野の頭上を指差した俺に釣られて間木野が何よ、と怪訝そうな表情で顔を上げる。

 その先には戦闘終了後の後片付けの為か、無数のスライム達が集まっていた。


「そんなスライム! ファイアーボール!」


 掌にサッカーボールぐらいのサイズの火の玉を作り出した間木野が、天井に向かってそれを投げつける。

 天井一面が一瞬にして炎に焼かれ、スライム達は落ちて逃げる間もなく全滅する。


「スライムなんて何匹居ようが関係無いわ!」

と叫んだ間木野が突然地面から立ち上る炎に全身を包まれた。


「きゃっ! 誰が!?」

「俺は初代勇者だ!

 受けた魔法は返してやるぜ!」


 俺の体に眠っていた初代勇者の魂が俺とスイッチし、魔法適正(極)の力で炎の玉を間木野に乱射。

 人間離れした間木野の魔法抵抗力でも防御しきれないその連射に、間木野の体が少しずつ肉を削ぎとられ痛みに大きな悲鳴を上げる。


 間木野の魔法で受けた俺の体のダメージを、初代勇者が最上位治癒魔法のエクストラヒールで治療する。

 実は瀕死と言って良い程のダメージを白リン弾で受けていたが、初代勇者の特種スキルが痛みを軽減させることで体を無理矢理動かしていたのだ。


「腐った勇者は消毒だ!」


 初代勇者が俺の体の主導権を奪うと、イッコウが落とした星砕きを拾って間木野に斬り掛かる。


「スティールボディ!」


 自身の体を鋼鉄と化す防御魔法を唱えられた間木野の精神力には感心するが、残念ながら俺が手に持つのはこの世にあってはならない破壊力を秘めた剣である。


「この世に召喚されたことを悔やむが良い!」


 一気に間木野までの距離をゼロに詰め、星砕きを間木野の腹に突き立てる。

 ガキっ!と金属同士のぶつかる音がしたのはほんの一瞬。

 間木野の体は腹に大穴を開けてドサリと地面に倒れ、防御魔法の効果が切れた体から地が大量に溢れ出す。


 そしてイッコウの時と同様にアイテムボックスが維持出来なくなり、大量のアイテムが床一面に散らばったのだ。


「終わったか…後味の悪い戦いだな」


そう呟いた初代勇者が、役目は終わったとばかりに俺に体の主導権を戻してくる。


「人には見せない方が良いアイテムだらけだな」


 二人の勇者が持っていたアイテムの中には、国宝クラスの武具や様々なマジックアイテムが多数ある。

 イッコウが盗んできたと言う新貨幣の他に宝石類や派手な衣服も。


「とりあえず収納しとくか。星砕きなんて間違って使われたらこの星が危ないしな」


 別にそれらのアイテムが欲しい訳ではないが、先程述べた理由により全て回収しておいた。


「さて、帰るとするが勇者が死んで俺だけ戻ってきたなんて…俺、絶対疑われるよな…これ、まずいよな」


 大量の魔物と魔族の死体は戦闘の証拠となるのでこのまま残しておこう。

 だが勇者二人の遺体は置いて行く訳には行かないだろう。

 よし、町に戻ったら話の分かる偉い人を捕まえて、この場を検証してもらうことにしよう。


 正体不明の魔王の出現によって、二人の勇者が亡くなったと言うストーリーをでっち上げてもこれならそれ程おかしくない…よな?


 そう決めて、疲れた体に鞭打ってこの場を立ち去ろうと歩き始めたのだが、何かおかしい。

 何か忘れて…あ、魔界に繋がっていたゲートはどうなったかだ。


 確か戦闘に入る前には、魔王の後ろにゲートがあった筈だが、いつの間にか無くなっていたな。

 間木野の白リン弾を受けて消滅したのかな?

 まぁ、あんな物は無い方が良いに決まってるのだから、消滅したならしたで構わない。


 そう思って歩き出したのだが、突然背後から異様な魔力が溢れてくるのを感じて振り返る。


「ゲートがっ!」


 元々ゲートのあった場所にゲートが再び出現し、中から過去に感じたことの無い魔力を次々と放出し始めていたのだ。


「これは…まさか暴走か?」


 こんな状況は初めて体験するが、これが安全な状況とはとても思えない。


「なんか知らんが逃げるぞっ!」


 これはヤバいと本能的に逃げ出したのだが、充満した魔力が物理的な質量と粘性を持って全てを閉じ込めるトラップと化していたのだ。

 水の中でもがくように動くが、一向に前に向いて進めない。


 それどころから、ブラックホールのようにゲートが黒くぽっかりとクチを開けると、その場に倒れている魔族の死体をズルズルと吸い込み、次に俺の体を引っ張り始めた。

 必死に抵抗するが、回りの空気と一緒に掃除機に吸われるゴミのようにゲートに吸われ、遂には体が黒い空間に飲み込まれてしまった。


『…ここは? ブラックホール?』


 気が付いた時には周囲は真っ暗で、俺は体を動かすことが出来ないでいた。


 温度さえも感じることなく、ただただ時間だけが過ぎて行く。


 そしてどれだけの時間が経ったか、もう全然分からなくなって全てを諦めた時だ。


『ダンジョン管理者に任命されました』


 無機質な声のようなものが何処からともなく聞こえ、そして俺は自分の姿を理解した…


『骸骨になっとる!』


 そう、それから三匹のスライム達が現れる迄の長い期間、俺は動けぬ体でこのダンジョンと共に過ごす以外になくなっていたのだった。

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