(閑話 骸骨さんの過去 Part.6)
「はぁっ? セラドンが初代勇者の生まれ変わりっ?! 冗談やめてよ!」
魔界から現れた魔族の王の話を聞いて、間木野がそう否定する。
俺も俺の中に入っている別の魂がかなり強い人だと思っていたが、まさか初代勇者だとは思っていなかった。
「そんな冗談を言って何の特になる?
そちらに魔界を攻め込むつもりが無いのなら、我らも敢えて人間の世界に踏み入れるような無駄なことはせん。
オーガどもの口減らしになっただけでも万々歳である」
めっちゃ話の分かる魔王で良かった。それに引き換え、勇者どものクチの悪いこと。
「…そこの女…このダンジョンで初代勇者のその男を事故死に見せ掛けるつもりだったらしいな」
「アンタ急に何バラしてんのよっ!
ダンジョンでなら殺しても、証拠が残らないんだから当たり前よ!
それにイッコウだって新貨幣の持ち出しをセラドンに擦り付けるつもりだったんだし!」
…お前ら…さすがにそれはドン引き祭りだぜ。
そこまでの悪党と知れたなら、こちらだって遠慮ってものが出来なくなる。
「魔王セラドリック! 先代勇者か何か知らんけどな!
アンタに生きていられると都合が悪いんだよ!
つぅ訳で死ねゃ!」
と言うなり、極道勇者が星砕きを振り上げ俺に襲い掛かる。
「魔王に魔王! 白リン弾で、穴だらけにしてあげる!」
間木野がイッコウが居るのもお構い無しに凶悪魔法の発射シーケンスに入る。
「オリアス! 結界を!」
「『スプレッドディザブルマジックゾーン』」
魔王の後ろに隠れていたのか、ライオンのような頭の獣人の魔族がそう唱える。
すると間木野が展開仕掛けていた魔方陣が風化していくように形を少しずつ崩していった。
「何? 魔方陣が維持出来ないなんて!
何か卑怯な手を使ったのね!」
戦闘になれば卑怯もクソもないお前らのセリフかよ。
「こざかしい女魔法使いに邪魔されたくないのでな。
魔方陣は展開出来ぬようにさせてもらった。
まあ、魔方陣無しの低レベル魔法なら使えんことはないが、我らには通じんからな」
さっきのブレッドなんちゃらってのが、魔方陣を張らせない魔法だったのか。
強力な魔法を使わせないための限定的な処置なのだろうが、間木野の最強魔法はこれで封じ込められた訳だ。
それでも魔方陣無しでの魔法が使えるなら、何か手は残っていそうだが。
「マナが戦えなくてもな!
俺の星砕きで倒せない敵は居ないんだょ!
くたばれっ! デカブツ!」
デーモンロードの召喚した魔物は既に全滅し、ダンジョンにもイッコウが作った深い亀裂が幾筋か走っている。
「ガキが良い気になるな」
魔力を集めたのか、燐光を発するデーモンロードの両手が大きな音を立てて星砕きを受け止める。
「おいっ! 嘘だろ!」
予想外の出来事に、イッコウが目を見開いて驚くが、
「そんな子供騙しは我らには通じぬ。
星砕きのデータは既に取れている」
と、大した事をした訳ではないと言った様子でデーモンロードがそう述べる。
データが取れたからと言って、そう簡単に星砕きが受け止められるようになるとは思えない。
「この剣は、お前のようなキチガイに持たせるべきではない。
持つべき者は…初代…いや、現世には居らぬ」
デーモンロードさんよぉ、俺には相応しくないと言いたいのか?
それとも、俺の中で魂の状態の存在している今はダメだ、早く復活しろと言ってるのか?
「キチガイってのはなっ!
俺ら極道勇者にゃ最大の褒め言葉なんだぜ!
マナっ! ぶっぱなせ!」
「イッコウの分際で仕切るんじゃないわよ!
でもぶっ殺すのは大賛成っ!
やるなら魔力を完全に止めるべきだったと後悔しなさいっ!」
間木野のがそう叫んでアイテムボックスから取り出したのは、玩具のような大型の拳銃だ。
魔道具なので見た目だけでは性能は一切分からないが、デーモンロードや魔王に対する切り札として…いや、元々は俺に対する備えとして用意していたものなのだろう。
俺のこの恐竜アーマーを撃ち抜くぐらいの破壊力は覚悟しなければならない、そう思っておくべきだ。
「オリアスさん! 最大の警戒と防御を!
恐らく飛び道具だ!」
どうして俺が魔族の人にそんな注意をしなければならないのか…本当に良く分からないが、現在の敵は勇者二人だな。
「防御なんて無駄よっ!
44魔道マグナム!
動かないで! 弾が外れるから!」
銃を撃つには少々危なっかしい構えだが、両手で握ったマグナムをピンと伸ばした両腕で保持してトリガーを引くと、バンッ!と何かが爆発したような大きな音を立てて銃口から何かが煌めきながら発射された。
俺には火薬が発明されたなんて情報は入っていないので、間木野達が開発したのか、それとも軍の秘密なのだろう。
火薬なら魔法が封じ込められていても全然関係はない。
むしろ問題は間木野の腕の方だな。
発射時の反動で伸ばした腕が大きく跳ね上がり、とても連射が出来るものではない。
そして発射された弾丸は、デーモンロードが魔力で作った盾を貫通して腕を掠めて奥の壁に穴を開けた。
「この盾を貫いただと!」
と慌てるデーモンロードにすかさずイッコウが斬りかかる。
まず魔力の盾を二つに割ると、左腕の肘の先から切り落とし、右腕を狙うがそれは回避された。
だが片腕となったことでイッコウの容赦ない攻撃を受け続けるのは不可能になる。
左肩から斜めに剣を受け、まるでバターを熱したナイフで切ったように綺麗な切断面を作ると続けて右腕を同じように落とされる。
「『死への道ずれ』を…」
と最後に呟いたデーモンロードの首をとどめの一撃で断ち切ったイッコウが突然星砕きをゴトリと落とす。
「何を…やった…?」
額から脂汗を流しながらそうデーモンロードに問いかけるが、既に彼はこと切れていた。
「デーモンロードの特殊能力だ。
自分の命を絶った者に共に死の世界に旅立つ呪いを与えたのだ」
「きた…ねぇ…ぞ」
魔王が悲しむでなくそう言った時には、イッコウが自分の首を締めて顔の色を紫色に変えていた。
「オリアス、とどめを」
「承知」
ライオンの獣人のような魔族が腰の剣を抜いてイッコウに斬りかかろとしたところで、狙ったのか、それとも偶然なのか、間木野の放った二発目がオリアスの額を撃ち抜き、スイカのようにと言う表現の通り頭部が一瞬で弾けて失くなった。
「チャンス! 白リン弾っ!」
魔方陣の展開がオリアスの死によって可能となったとたんに、間木野が魔方陣を展開して凶悪魔法の連射を始める。
その標的は俺と魔王の二人であった。




