(閑話 骸骨さんの過去 Part.5)
凶悪な両手剣を十文字に振り抜き、銀色の鎧を纏った魔族の騎士を四つのブロックに切り分けたイッコウに軽くドン引き。
「お前! このダンジョン壊すつもりか!?」
「この星を壊すぐらい破壊力あるけどよ!
ダンジョンなら少々壊しても勝手に直るんだよ!
つうか、この剣はダンジョンでしか使えねぇ欠陥商品なんだよ!」
イッコウが言う通り、ダンジョンは破壊されても勝手に修復される機能がある。
だが、それでも目で見て分かるような速度で直る訳ではない。アハ動画で何処が変化していってるのか当てるクイズより難しい。
「雑魚は俺がやるから、ボスはセラさんに任せた!」
「ボス? あいつ、どう見ても魔王的なヤツだよな?
勇者のお前が倒す相手じゃねえのか!」
俺が指を差す先に立つのは、赤黒い肌に材質不明の奇妙な鎧を纏った、頭にユニコーンのような角を持つオーガっぽい魔族である。
「おい、勇者ども!」
「あっ、キリアス語喋った」
魔王(仮)が地の底から響くような低いドスの効いた声をしたが、それがまさかのキリアス語にビックリだ。
「人間どもが魔族語をパクったことを知らぬか」
「え? そうだったんだ、初耳!」
まさか魔族の偉そうな人にそんな事を教えてもらえるとは予想外も良いところだな。
「そこのエセ勇者ども、少々腕に自信があるからと偉そうにしているらしいではないか」
「ふんっ! つえぇ奴が偉い、それが自然の節理だと思わないか」
「ならば、お主より我やそこの…えぇと…よく分からんヤツの方が偉いことになる」
「よく分からんヤツって俺っ!? 扱いひどくない?」
まさか魔族からそんなダメ出しが飛んで来るとは、これまた予想外。
「…セラさん、ドンマイ、ドンマイ。
気張って行こーぜ」
「気にするって!
おい、魔王ぽい人! 俺の何処が良く分からんのか、きっちり教えてくれなきゃ帰してやらんぞ!」
「ぽい、ではなく我が現在の魔界の王である。
高々人間風情の分際で、魔王とデーモンロードに勝てると思ってか?」
こいつが魔王で、その横の悪魔みたいな見た目のがデーモンロードか。
「俺的には、そのゲートの無効化かダンジョン攻略さえ出来れば、おたくらに手を出すつもりはない。
話せば分かることもあるだろ?」
「ちょっとセラさん!
魔王が出てきて、じゃあねって帰る訳ないじゃないか!」
「いや、用事が終われば帰るつもりだが」
「ほらなっ! 人は見掛けに…魔族も見た目によらないって昔から言うだろ」
「何を勝手に格言ぽいの捏造してんだよ!
ダンジョン攻略ついでに魔王も倒すぐらいの気概見せろゃ!」
どう考えても、勇者より魔王の方が良く出来てる人じゃない?
「で、魔王の用事って何?」
「初代勇者が復活したと予言があってな。
もしまた魔界に攻め込んで来るようなら、先に潰しておくつもりだ」
「そうなんだ。魔界にも予言なんてあるんだな。
で、その復活した勇者ってどんな人か分かるのか?」
「あぁ、お前のようにおかしな恐竜もどきの鎧を来た格闘家だ…」
「え? 俺の鎧っておかしい?」
「セラさん、自覚無いんかいっ!」
即座にイッコウが突っ込むが、おかしいなぁ、結構いけてると思うんだけど。
「他に情報は無いのか?」
「うむ、勇者の育ての親であり、郊外の一軒家で魔物達と暮らしており、神狼に家事を押し付けておるらしい。
その魔物の中に、全身炎に包まれた希少な熊の魔族が居るとのことだ」
「…マジ?」
それって全部心当たりがあるんだけど。
「嘘! セラさん、初代勇者の生まれ変わり?
通りで、鬼みたいに強い訳だよ!」
「だが、普段は仮の姿で暮らしているそうだ…お前の中に初代勇者の魂が…信じられんが、そのおかしな姿はまさしく初代勇者…おつ」
「おつ言うな! 地味に傷つくぞ!
言っとくけどな、俺は魔界に攻め込んだりしないからな。世の中ラブアンドピースで満たされるべきだ!」
「いや、魔王が目の前に居て倒さない選択肢なんて普通無いだろ。
それともセラさんは魔界側に付くつもりなのか?」
うーん、別にキリアスに思い入れがある訳ではないし。のんびり暮らして行けるのなら、魔界側でも問題ない気がする。
「ここは融和政策と言うか国交樹立すべきだと思うが、イッコウはどうだ?」
「魔族相手に何言ってんだよ! そんなの許されるかよ!」
イッコウのお気には召さないようだな。
「仕方ない、セラさん、ここで死んでもらうぞ!」
と言うと、凶悪な両手剣を手にイッコウが俺に向かって来た。
「ふむ、ならば我らは現勇者を殲滅するか」
俺と組んでイッコウと戦う気になった魔王である。
デーモンロードが星砕きを操るイッコウの前に立つと、無数の小型の悪魔を召喚した。
良く分からないが、俺の意思は無視して勇者対魔王軍の戦争が今始まった…もう、めちゃくちゃ過ぎて俺にはどうにも出来ない気がする。




