(閑話 骸骨さんの過去 Part.4)
魔界へのゲートが繋がるダンジョンで、キリアスへの侵攻部隊の第一陣を撃破した。
その後もオーク、オーガを中心にした部隊を何度か撃破しながらゲートを目指して奥へと進む。
「熊族は出てこないわね」
「熊の魔族か? そんなのが居るのか」
「そうよ、熊のモードと半熊獣人モードがある希少種。
間違って封印したから次の子が欲しいのよ。タフで苛め甲斐があるのよね」
間木野がそう言うと熊の縫いぐるみをアイテムボックスから取り出して見せる。
「その縫いぐるみが?
封印って、お前。そんなのが出来るようになったのか?」
魔族と言っても意志がある人の一種であり、そんな身勝手な理由で縫いぐるみに変えるなど鬼畜の所業としか思えない。
「ジジイの隠してた古文書にあったのよ。
私だって、まさかホントに魔族が封印できるなんて思わなかったし。
屋敷には魔導増幅器とか色々あったから、予想外に効力が出たのかもね。全部ブルートゥース化してたから、勝手に接続してアレコレ作動したのよ。私は封印までは、やるつもり無かったんだから。
ちょっと生意気だから、少し黙らせる程度でやったのよ」
何を訳の分からん弁解をしているのやら。
ゴメンで済んだら衛兵はいらないんだよ、ま、その衛兵は権力者の言うことしか聞かないけど。
「まだ私のやってることなんて可愛いものよ。
イッコウなんか新貨幣を一式丸々ゴッソリ綺麗に倉庫から持ち出したんだから」
「何で今そんなのバラスんだよっ!
黙ってりゃ誰にも知られないだろ。造幣局なんか暇なエルフの幼稚園みたいなもんなんだしょ!
ちょっと遊ぶ金を分けてもらっただけだ。どうせ俺らが稼いだ金なんだし、俺が持っていって問題無いだろ」
えーと…新貨幣が発行されるって話は噂で聞いてたが、そいつをイッコウが勝手に持ち出したと?
それって泥棒だよな?
本人は悪いことをやった自覚は無さそうなんだが、俺の解釈の方が間違ってるのか?
「アイテムボックスに入れときゃ誰にも見られないだ。完全犯罪ってやつ。
あー、セラさんも戻ってからその事絶対喋ったらダメだぞ。
もしチクったら、髪の毛全部むしり取ってやる」
「ケツの毛の間違いじゃない?
どうせ禿げても魔法で治せそうだけど。そうね、治せないように毛根破壊魔法を試してみるわ」
「なんて物騒な魔法を開発してんだょ!
どうせなら禿げ治療魔法を開発しろょ!」
この二人の勇者、マジで犯罪者だぞ。
帰ったらどうにかせねば、誰が不幸になるかわかったもんじゃない。
人を故意に禿げにするのは、誰がどう言っても悪質な犯罪である。そんな危険人物を放置して良い訳がない。
「で、ゲートの位置は分かってんだな?」
「あたぼうょ、キリアス調査兵団を舐めんな。
そこの角の先が広場で、そこにゲートがある。
ゲート前には護衛が沢山常駐してるが、雑魚はマナが燃やせば済むだろ」
「やだ、めんどくさい。
そう言うのはアンタら蛮族のお仕事よ」
「誰が蛮族だとっ!
セラさんはともかく、俺は野蛮じゃない!」
俺よりイッコウの方が絶対野蛮だろ。言わないけどさ。
それよりもだ、
「お前ら、敵の前で何を騒いでんだ。
敵が動き出したぞ」
様々な言語で雄叫びが上がり、ドタバタと角の向こうから大量の魔族達が走り寄って来はじめたのだ。
灯りと勇者達の怒鳴り声でこちらの存在がバレバレ…と言うか、隠すつもりは無かったのだが。
「マナ! 初撃にデカイの撃て!」
「アンタが命令すんなっての!
『|暗黒企業戦士の血飛沫《ブラッドストーム オブ ダークカンパニーソルジャー》』『パワハラセクハラモラハラカスハライッコウハゲビーム』」
「何、その技の名前っ!」
間木野の体の前に魔法陣が出現すると、それが回転を始め次々と蒼白い拳大の火の玉がバババババッと連射を始めた。ノリは回転式の弾倉を装着したマシンガンである。
「ハハハっ!死ね死ね死ね死ね~!
対セラドン究極魔法!白リンダンダン!」
おいっ! 俺を殺す為にそんな恐ろしい魔法を開発しただとっ! 最後にダンダンなんて言ってお茶目を演出してるが、白リン弾は使っちゃダメなヤツだからなっ!
その白リン弾魔法の威力は凄まじいの一言で、オーガの胴体にくっきり丸い穴を開けたかと思えばその後ろのオーガにも同様に穴を開け、一発で三匹ぐらいは倒せる恐ろしさだ。
「いつかセラドンを倒す為に血反吐を吐いたつもりで覚えた禁忌魔法の味はどう?」
「それっ! 何処に突っ込んだら良いんだょ!
俺は敵じゃないからな!」
「怪しい奴は皆そう言うのよ! アハハ! 死ね死ね死ね~」
「バカっ! こっちに撃つな!」
ハイになった間木野が見境無く魔法を連射し、バタりと倒れた時には広場に終結していた魔族達はほぼ全滅…。
「はぁ…やっと魔力切れか」
とイッコウが溜め息をつく。
「お前ら、本気で俺を殺すつもりかょ?」
「あん? 当然じゃん。どこに召喚勇者より強いチート現地人が居るんだよ?
どんなに強かっても、現地人は最後にゃ主役に倒されるのがお約束なんだぜ」
イッコウが腰に手を当て、そう威張るが現地人ね。
俺も魂は地球出身なんだけど、召喚者じゃないから現地人扱いか。
「まだお前らに殺されてやるつもりは無い。
が、お前ら卑怯だから、何をやるか分からんな」
勇者と呼ばれる人種と、こんな殺伐とした関係を持つのはこの国じゃ俺が初めてじゃないか?
恐らく今後も出てくることは無いだろうが、将来のことは分からない。
「それより、残った奴らはマジで強そうだが、間木野はどうなんだ?」
「白リン弾を撃ったら暫くクールタイムに入るから当てにはならんぜ」
「イヤ、そうじゃなくて倒れてるから邪魔なんだが…接近戦だから関係無いか」
俺とイッコウで残りの魔族に剣と拳で攻撃を開始する。
「ここはダンジョンだからな、思いっ切り最大戦力投入と行きますか!
『星砕き』」
イッコウがアイテムボックスから取り出したのは、シンプルな両手剣だ。
だが、その名前はとても剣に付けるものとは思えないのだが。
まずイッコウが剣を向けたのは、全身銀色の甲冑を纏った騎士のような相手だ。
「くたばれっ! アースクラッシュ!」
騎士は慌てること無く左手のナイトシールドでイッコウの上段からの打ち下ろしを止めようと差し出した。
ガキーンと金属同士のぶつかる大きな音が響き、剣はシールドで止められるか反らされたと予想したのだが、イッコウの振るった剣はなんとシールドを真っ二つに切り裂き、騎士の左腕をゴトリと切断したのだ。
勢い余った剣は地面に到達し、ドゴッと音を立てて亀裂を作る。
「伐られるなら縦と横! どっちか選べっ!」
と魔族の騎士に怒鳴るイッコウだが、言葉が通じないのか、それとも腕を切断されて痛みで叫ぶことしか出来ないのか、騎士から返事は無い。
「時間切れだっ! 十字攻撃!」
そう言うが早いか、イッコウの剣はビュッと音を立てて真横に振り切り、そして流れるように動いて真上から真下に振り下ろされて地面に亀裂を作った。
伐られた魔族は脇腹のところで上下に分かれ、そして正中線で横に綺麗に切り分けられた。
「どうだっ! 対魔王の究極兵器の威力はよっ!」
「お前な! そんなので俺を斬るつもりだったのか!」
「これぐらいじゃないと、セラさんは殺せないだろ!」
「アホかっ! 三回死んでお釣りが来るに決まってるだろ!
そんな危険物を振り回すな!」
何だょ、この勇者達の異様な戦力は!
ドラゴンだってイチコロだぞ、こんなので斬られたらさ。




