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(閑話 骸骨さんの過去 Part.3 )

 剣の勇者と魔法の勇者に連れられ、逗はほ留していた村から馬で一日程の距離にあるダンジョンへとやってきた。


 馬で移動するより早く移動出来る俺達は馬を使わず自分の脚で走っての移動である。

 馬より早いし乗り心地を気にする必要も無い。

 俺にも『魔王』の称号が付いていて、はこれも勇者と同じくステータスをアップさせる事が出来る称号であった。


 岩山の中腹にポッカリと穴を開けたダンジョンは、いかにも、と言った雰囲気を醸し出している。

 入り口近くには大きな猪の骨なども散らかっており、付近に肉食系魔物が潜んでいると思われるが、魔物も自分より強い者には積極的に近付かない。

 勇者二人プラス俺の三人組は、そこらの魔物には決して手を出そうと思わせないだけのオーラのようなものを発しているからだ。


「到着! さぁ、とっととクリアして帰るわよ」

と魔法の勇者の間木野が俺を後ろから押す。


「マギノ、後ろから俺を撃つつもりじゃないだろうな?

 お前なら当たり前のようにやりかねん」

「セラさんだけなら構わんが、マギノは俺まで巻き込むからなぁ…」

「俺は撃たれても良いのか?

 さんなに嫌われてたとは、初めて知ったぞ」

「うそっ! 好かれてると思ってたのっ?

 どこにそんな空気があったのか教えて欲しいわよ。

 こっちは魔王には恨みしかないんから」


 勇者の二人の俺に対する扱いはこんなもの。

 まぁ、俺もとんでも勇者のコイツらと仲良くやるつもりは一切無いが。


「で、このダンジョンの下調べぐらいは終わらせてんだな?

 入ってすぐラスボスの登場が一番手っ取り早くて助かるが」

「すぐそこにエレベーターがあって、最下層まで行けるぞ。

 そこに魔界へのゲートが繋がってて、たま~に魔族が出てくるらしい」

「エレベーター…?」


 俺の中に転生した魂があることを二人は知らない。

 だからエレベーターと聞いてゲームみたいだとうっかり話すようなことはしない。あくまで初めて聞いた体を装おう。


「乗れば分かる。

 一気に下まで行ける便利な魔道具の乗り物だ」


 イッコウがそんなもんも知らないなんて馬鹿だなぁと言うニュアンスを匂わせながら俺に教える。

 へーえ、そうなんだ、凄いなぁ調子を合わせ、ご機嫌を取りつつイッコウを先頭にダンジョンを歩く。


 俺の後ろから間木野が付いて来るが、防御力の低い魔法使いなら普通は真ん中を歩くものだ。

 いくら勇者と言え、ダンジョンの中では何が起きても不思議ではないと言うのに、何を考えてんだか。本気で後ろから俺を撃つつもりかよ?


 地図を見ながらイッコウがエレベーターまで最短距離で案内し、狭いゴンドラに乗りこんだ。

 日本のビルにある綺麗なエレベーターではなく、ドアは格子状で壁が剥き出しの乗るのが怖いタイプの物だ。


「これがエレベーターか。どうやって動かすんだ?」

「コイツが操作レバーで、魔力を少し流して下に倒している間は下がり続ける。

 セラさん、やってくれ」

「えー、イッコウがやれよ」

「今は俺達の方が立場が上なの分かってる?

 セラさんを逮捕しない代わりに連れて来てやったんだぜ」


 どう考えても誰かが俺に罪を着せたようにしか思えないのだが、権力者から距離を置いた俺と権力者側の勇者達なら、コイツらの方が社会的立場が上だ。

 下手に逆らう訳にも行かないってもんだな。


「ハイハイ、やりゃ良いんだろ。

 どうなっても知らねえぞ」


 言われたレバーを握り、少し魔力を流しながらレバーを下げるとゴンドラが急発進、発射されたように一気に下がり始めた。 


「きゃっ! なんて運転するのよ!」

「馬鹿か! 魔力流しすぎっ! もっと抑えろ!」


 二人の勇者がそう文句を言うが、魔力を少しと言われてもゲームと違って数値管理が出来ないのだから仕方ないだろ。

 俺に操作を任せたお前らが悪いのだ。


「止めて! 地下にぶつかるっ!」

「レバーから手を放せ! マジ死ぬっ!」


 顔を引き攣らせて叫ぶ二人に舌打ちしてから魔力を流すのをやめると急ブレーキが掛かって体が浮き上がり、ゴンドラの屋根に頭をぶつけそうになったがギリギリ手でガード。

 勇者の二人も勇者を名乗るだけあってしっかり身を守ったようだ。実につまらない。


「おっさん! 俺ら殺す気かっ!」

「言われた通り、魔力を少し流しただけだ。

 ずいぶん速く移動する乗り物なんだな」

「ちがうっ! あんたの動かし方が極端過ぎんのっ!」


 それなら素直にお前が操作しろよ。

 素人に操作させるからこんなことになったんだろうが。


「地下百メートルはある筈なのに、何秒で来たのよ…ほんと死ぬかと思ったわ」

「勇者がこれぐらいで死ぬもんか。

 俺ら一般人より頑丈なんだろ?」

「…あんた、本気で言ってる?

 一般人が勇者の私達を殴り飛ばせる訳が無いでしょ…どう考えてもあんたの方が強かったんだから」


 それも昔のことだからなぁ…今は二人の方が俺より強いんだしさ。

 まぁ、躾と称して散々殴って来たから今でもコイツらにとって俺は怖い存在なのかも知れないけど。

 弟子の成長がこんなに嬉しくないとは、マジ異世界半端ねぇ…ほんとに師匠の首を取れる実力を身に付けたキチガイどもだからな。


 ま、そんなことはあっちにポイ…で、ゴンドラのゲートを開ける。

 灯りは間木野が照明の魔道具と魔法の両方で確保しているが、照らせる範囲はそう広くはない。一階部分は天井がうっすらと光っていたので照明を使わなくても見えていたのだが、エレベーターで降り始めると光石の層がなくなって真っ暗になったのだ。


「あら…今日は先客が居たみたいね」

「魔族がキリアス侵攻を開始したそうだからな、そいつらに間違いないぜ」


 間木野の照らす先にオーガのような魔物が数匹、それと指揮官と下士官ポイのが現れた。

 ワキャワキャと魔族の言葉で喋った後、オーガ(仮)を先頭に立てて俺達に襲い掛かるが、

「セラさん! やっておしまい!」

とイッコウが俺に指示を出す。


「俺一人? 無茶言うなっ!」


 通路幅の都合でオーガは三匹しか同時に攻撃出来そうにないが、意外にも良い装備品を身に付けている。

 魔界はこう言った装備品が豊富にあるのか、それとも侵攻の為に用意したのか。

 武器はオール金属製のメイス、鎧は金属で補強された硬い革鎧である。


 対する俺は基本的に無手であり、メイスの一撃など食らえば即御陀仏だ。

 そんな凶悪な武器をガンガン撃ち下ろすオーガ達にどう戦えと?


「セラさんならデコピン一発だ!」

「そうそう! 歯ぁ食い縛れ!からのやくざ胯間キックと抉るようなレバニラパンチで圧勝よ」


 言っておくが、そんな攻撃はしたことがない。


「好き勝手を言いやがる。親の顔が見てみたいぜ…異世界だから無理だけどな。

 仕方ない…『魔装…エレンガッセン』」


 アイテムボックスから魔粒子状態で保存してある魔力の鎧を取り出して装備する。

 どことなくゴツゴツした鎧を着た恐竜のような姿に変わり、防御力はミサイルの直撃でもへっちゃらなレベルにまで跳ね上がる。


「出たっ! セラさんの恐竜アーマー形態っ!

 これに勝てる魔族なんて居ねえんだよ!」


 なぜイッコウが威張って言うのだ?

 少々呆れながら、チートアイテムのエレンガッセンでオーガのメイスをガンガン受けながら一体ずつ殴り倒す。

 俺の武器はこの拳だからな。

 握ると恐竜の爪のようなものが魔力によって形成され、普通にグーで殴りつける何倍ものダメージを与えることが出来る。

 見た目は何とも言えないが、勇者達の装備を除けば当代最強と言える代物である。


 メイスで何度殴っても全然びくともしない俺に、オーガ達だけでなく後ろの指揮官までもがアレ?なんだコイツ?と言う顔を見せるが、お前らにそんな余裕が在るのは今のうちだ。


 全てをぶち破る破壊の拳が瞬く間に残りのオーガどもを地に伏せさせると、指揮官と下士官が怯えた様子で逃走の体勢に入る。

 ここで間木野が高熱の特製火炎弾で指揮官を燃やし、剣を抜いたイッコウが下士官を一撃で仕留めたのだ。


「お前ら、最初からそれやってくれや」

「やだょ、あの鎧のオーガ、なかなか燃えないからイヤなの」

「俺はセラさんのその格好が見たいんだ。

 うん、やっぱり面白い、何度見ても笑えるし」


 俺だってこの鎧の見た目には慣れるのに苦労したんだし…正面切って笑うのはこの男だけだがな。


「…お前らなぁ…で、コイツらは魔界からの先行部隊なのか?

 オーガは雑魚かも知れんが、間木野が燃やしたのは指揮官ぽいぞ」

「そんなのは良く分からんし。

 魔界に乗り込んで魔族を皆殺しにするのが手っ取り早いだろ」

「はぁ? 魔族皆殺しなんて何を考えてんだ?

 ゲートを潰すだけで今回はミッションコンプリートなんだろ? 無駄なことすんなよ」

「そんなのツマンナイ。

 折角魔界にアクセスできんだぞ、征服しないでどうすんだよ?」


 魔界からこっちにアクセス出来なくなれば済む問題だろうが。一体どこから魔族皆殺しなんて発想が出てくるんだよ。


「魔界には変わったアイテムがありそうだし、絶対面白いって」

「魔族の魔法に興味あるのよねー。

 ごちゃごちゃ言ってないで、ゲートを探すわよ。

 イッコー、さっさと行きなさいよ」


 コイツらにとっては魔界もそこら周辺国と同じ扱いか。

 魔族には色々と居るから、そう簡単には行かないた思うのだが。


 間木野に命令されたイッコウが抜いた剣を肩に乗せて歩き出し、その後を間木野が付いて行く。


「おっさん、早く来いよ、置いてくぞ!」

「私らに逆らうと、戻ったら牢や行きだからね。分かってる?」


 二人の勇者がそう俺に声を掛けると、俺を無視して歩き出す。

 全く気楽な二人だな、と溜め息を付きつつとぼとぼと後を追って進む俺だった。 



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