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(閑話 骸骨さんの過去 Part.2)

 かなり強引なやり方で俺を無理やりダンジョンに連行していく勇者の二人。

 キリアスは一応法治国家だと思っていたが、結局勇者の悪事を放置する国家に過ぎないらしい。

 召喚したは良いが、自分達の手に終えなくなった勇者に好き勝手に弄られ、法なんてあって無いのと同じと言わざるを得ないようだ。


 それなら最初から勇者召喚なんてやるんじゃなかった、と思う権力者も中には居るかも知れないが、周辺の勢力圏でも同じ召喚が何度も行われているのだからキリアス王国だけが召喚しない選択肢は無かったのだろう。


 その勇者召喚だが、やり方は古代遺跡にある召喚陣に生け贄を多数並べて…実はその生け贄とは人間であり、その生け贄を確保するために戦争を仕掛けたり仕掛けられたりしているのだが、これは一部の者しか知らない事実である。


 自分自身は生粋のこの世界の生まれで、実は母親がエルフと呼ばれる種族である。

 父親は俺が子供の頃に戦争に出て戻ってきていない。顔もろくに覚えちゃいないが、母親曰く腕利きの戦士だったそうだ。

 俺の能力は両親から受け継いだ基礎能力と、転生者の能力を併せ持つことでそこらの人間より遥かに高いレベルにある。


 俺と言う人間の中に、俺とは違う転生者の魂が同居しているような状態に慣れるまでは、あちらこちらで独り言を喋るかなり危ない子供に思われたことだろう。

 ただ、その魂が完全に俺とは別人かと言えば答えはノー。前世の俺の魂が宿っていると言うことが分かってびっくりだ。


 前世の魂との二人三脚で俺は修行を繰り返し、いつの頃からかトップレベルの冒険者と目されるようになる。

 その頃、ちょうど二人の勇者が召喚されて話題になっていたのだが、当時は自分には関係の無いことだと特に興味を持たなかった。


 だが、その二人が次第に実力を付け始め、問題行動を取り始めると手を焼いた国から俺の元に依頼が来たのだ。

 それも『二人の勇者をどうにかしてくれ』と言う、捉えようによっては抹殺もやむ無しとも取れるような依頼であった。


 まだその頃の俺は、召喚に生け贄が必要なことなど知らなかったし、勇者と呼ばれる者達に大した感心も興味も持たず、ただ噂話で性格が破綻していると聞いているだけの存在であった。


 俺より十歳程若そうな二人は無礼そのもの、礼儀も知らなければマナーも糞食らえを地で行く性格であり、しかも武力だけは超一流…何もかも最悪である。

 

「なんだよ、おっさん」

「私らに文句ある? たかが冒険者の分際で頭が高いんじゃないかしら」


 初対面の勇者二人が俺に初めて投げ掛けたのがこのセリフである。


「どうやら躾がなってないらしいな。

 国からお前らをどうにかしてくれと依頼が来ているが、少々殺意が沸いてきた。

 召喚されたことには同情するが、だが、それだけだ」


 年上に対する敬意の念さえゼロの二人に、俺は礼儀を教えることにした。


「プッ、殺意だと?

 おっさん、馬鹿か」


 ケラケラと笑う剣の勇者の腹に特殊な移動術を使って急接近、魔力を纏わせた右ストレートをボスッと撃ち込む。

 質の良いチェインメイルを装備していたようだが、俺の拳に防具など意味は無い。

 ゲホッと噎せて腹を押さえる剣の勇者を見て俺を敵と判断したのか、魔法の勇者がすかさず魔法の炎で俺を焼き付くそうと巨大な火の玉を放つ。

 だが飛び道具である魔法攻撃は、その核となる部分に魔力の衝撃を与えてやれば自壊する。


「甘いッ!」


 魔法の火の玉は俺に着弾する直前に構成術式を分解されて消滅する。

 魔法の勇者と呼ばれるだけあって、威力は中々のものだが如何せん経験が足りないのだ。


 それは剣の勇者も同じこと。

 チート能力とスキルの恩恵に胡座を掻いて得た強さでは、本気の修行を繰り返した俺の足元にも及ばない。


「おいおい、勇者と呼ばれるからどれだけ強いのかと思えば、お前らただのガキじゃねえか。

 それで本当に勇者なのか?」


 念のために確認するが、勇者を語って偽物になっても大したメリットは無いだろう。

 黒目、黒髪の人間はキリアス近辺では生まれることはなく、一目で違う人種だと判別が付く。


「いてててて…おっさん、何者だ?

 まさか魔族じゃねえだろうな?」

「ただの人間だ。

 真面目に修行したかしないかの差が出ただけだ。

 お前らは恵まれた能力を持ってるだけで良い気になって、大して修行をしていないだろ?」

「なら…きっと前世は魔王だったんだろうな、鬼みてぇに強い…」


 現代日本から来た一般人が、急にスキルを与えられてもこの中途半端なシステムの世界では持て余すだけである。


 スキルの有無は決定的な能力差を人の間に生み出すのだが、それは一部の知識系スキルを除けば努力である程度の差は埋められる。

 しかし、例えば同じ剣術のスキルにもランクはあるし、相性の良し悪しもあればスキルの組み合わせにより更に驚く結果をもたらすこともある。


 それに俺にはもう一人の俺が持つスキルを使う事が出きるのだ。

 それは剣の勇者と同じ剣術(極み)である。

 このスキルは他の戦闘系スキルのブースターともなり、俺が本来持つ格闘術スキルの能力を最大限に引き出せる。

 それがあっての移動術や魔法の無効化である。


「ありえねぇ…現地人の癖にチート持ちなんてっ!」


 そう悔しがる剣の勇者の頭をゴツンと殴る。


「ガキがいつまでごねてやがる。

 勇者か腐れ外道か知らんが、年上にまともなクチも聞けねえくそガキは俺が徹底的に指導してやる」


 出来ればこんなくそガキどもの相手など込めん被りたいところだが、キチガイに刃物を持たせているような状況を放置する訳にも行かないだろう。

 こうして俺は時々勇者達の相手を押し付けられることになったのだ。


 そんな関係がそれから十数年も続き、当初は圧倒的だった戦力差は次第と埋まってきた。

 年齢的な理由と、決定的なのは『勇者』と言う称号の性能がその理由である。

 この世界では二つ名や称号が身に付いても基本的に影響は無いのだが、勇者の称号だけはそれを持つ者のステータスを飛躍的に跳ね上げる性能を持っていたのだ。


 恐らくこれは、望まぬ召喚により異世界転移させられた者に対する神様からの詫びのようなものなのだろう。


 その頃には俺は保護した魔物達を飼育することに生き甲斐を見つけ、郊外に居を構えてくらすようになっていた。

 くそ勇者達は戦争が開始されれば喜び勇んですぐに戦地に飛んで行く。

 そう、この頃のキリアスは戦争さえあればあの二人はうまくコントロール出来るような状態となっていたのだ。

 それが良いこととは思えぬが、少なくともキリアス国民に取っては勇者が役に立つ唯一のイベントであり、厄介払いの為に戦争を起こすのかと溜め息しか出ないのが心ある人達の反応であった。


 更に言えば、キリアスの周辺地域でも勇者召還が積極的に行われるようになり、キリアスの二人の勇者は戦争を進める上で必要不可欠なピースとして重用されるようになっていく。


 そんな二人は必然的に軍の中枢に入り込み、次第に権力を増していくことになるのだが、その時の俺はそんな事には構うこと無く、どこかのムツゴ◯ーおじさんのように魔物達と楽しく日々暮らしていたのだった。

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