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(閑話 骸骨さんの過去 Part.1)

「はあっ?! 俺が強盗犯で放火犯だと?

 ついにギルドタグシステムがバグったか!」


 ギルドタグの定期更新の為に久しぶりな町を訪れたセラドリックが、城壁前に立つ門番にそう食ってかかっているのはクレスト達が生まれる二百五十年以上前のこと。


「いや…俺もお前がそんなことしたとは思わないが…けどシステムを信じないと仕事にならん」


 セラドリックと顔見知りの門番もおかしいと思いつつも、正式に運用が開始されて五年以上経つがいままで何も問題を起こしたことの無いギルドタグによる冒険者データ管理システムを簡単には疑えない。


「称号は『魔王』だが、まぁこれは前からそう呼ばれてたから問題無いとして…強盗殺人、強姦、放火…お前いつのまにやらかしたんだ?」

「やってねぇし!

 それに、本当にそんなのやってたら、お天道様の下をこんなに堂々歩いて来る訳ねぇだろ」

「いや…お前にそんな常識はなぁ…すまんが上に報告はしておくが…」

「誰がどう考えても冤罪だからなっ!

 魔法の勇者め、ろくな魔道具を作りやがらないぜ…」


 門番も困ったなぁと言う顔をしながら、取り敢えずセラドリックにタグを変換する。

 だが、このような犯罪歴が出てきた者を黙って町の中に入れる訳にも行かないのが彼らの職務である。


「役人に確認は取ってみるが、暫くは中に入れる訳にはいかん。

 近くの村に逗留しててくれないか?」

「ちっ、分かったよ。

 それならバリスの村に居るから、なる早で確認したくれ。

 それと、そんなバグを起こ魔道具はもう使用禁止にしてくれ。俺以外にも冤罪でイヤな思いをする奴が出て来るぞ」


 手を振ってその場を後にするセラドリックは、仕方なく来た道を戻ることにした。

 共に連れているのは赤い首輪をした一匹の白い犬だ。


「すまんなライガー。旨い肉が買えると思ったんだが少し待ってくれ」

『仕方あるまい。人間の作るものに絶対は無い。

 だが…本当にバグだと思うか?』

「違うのか?

 バグでなければ…故意だろ?

 俺、人に恨まれるようなことやってる?」


 セラドリックが暮らしているのは南東部の小さな町の近くだ。

 今でこそ郊外で何頭かの魔物達と一緒に賑やかな日々をのんびり送る毎日だが、ここに来るまでには何度も激戦を潜り抜け、強力な魔物を仲間に従え、、自身も魔王と称される程の強さを身に付けてきた。


 そんな中で人間同士の争いにも巻き込まれたことは何度もあり、特に剣の勇者、魔法の勇者と称される当代最強の二人の巻き起こすゴタゴタの後始末に何度も追われる人生を送ってきたのだ。


 その二人を真正面から武力を持って相手に出来るのが、魔王と称されるセラドリックぐらいであったことが実は彼に取っては不幸の始まりであった。


 とかく二人の勇者は強いが性格が最悪である。

 召喚されて暫くは、この世界に慣れるまでの期間として色々な苦労もしてきただろうし、良いように利用もされたこともあるだろう。

 だが、それを差し引いても勇者の二人の横暴、我が儘は度を過ぎたものであった。


 だが、勝手に召喚したと言う負い目があり、武力でも二人を抑えることの出来ないキリアス王国側は二人に厳しい態度は取れないでいたのである。

 そんな中で、いつもセラドリックが貧乏くじを引かされて二人のが機嫌を取ったり、時にはパーティーメンバーとなって世話を焼いたりしていたのだ。


 当時、まだキリアス王国とは名ばかりの小国であったが、二人の勇者を前面に押し立て力押しで周辺各国を武力制圧し続ける軍事大国へと進路を取っていた。


 勇者二人は争い事が大好物であり喜んで蹂躙を繰り返していたが、セラドリックは人との争いは好まず戦争行為には参加していない。

 武力的に勇者と肩を並べるセラドリックが戦線に立たないことを批判する者も居るが、キリアスはセラドリックが居なくとも連戦連勝を繰り返す。

 転生時に与えられたチート能力あっての力押しであるが、神が与えたチート能力は同じ能力を持たぬ者には正に神業であった。


 そんな争いの続く中、魔法の勇者はもう一つのチート能力を使って次々と新しい魔道具を作り出した。

 自分の欲しい家電を作るのが目的であったが、元々プログラマーであった魔法の勇者は古代文明と称される時代の魔道具の解析を行い、それとプログラミングの技術を融合させて銀行のATMのようなシステムを作り出したのだ。


 とにかく貨幣を持ち歩くのが彼女はイヤだったのだ。

 スマホ決済に慣れた彼女がバカみたいに貨幣を数えて買い物を…無理であった。

 そのためにサーバーやらパソコンやらスパコンやら色々な物を作り出した努力は半端ないものがあるが、それは自分がラクをするための物であり、そう言う努力は苦にならないタイプだったらしい。


 そうして銀行カードと社員証を合体させたようなシステムを一人で完成させ、キリアスに普及させたのだ。

 彼女の死後も魔道具製作のチート能力持ちは何人かキリアスに出現し、そのカードシステムは少しずつアップデートされて行って現在使われているギルドカードシステムへと進化を遂げる。


 が、そうなるより前に管理者権限を持つ魔法の勇者はある人物のデータを勝手に書き換えた。

 その相手が魔法の勇者に取って目の上のこぶとも呼べるセラドリックである。

 魔法の勇者であれば、どんなデータであっても改竄のし放題…


 と言う訳で、冒頭のシーンとなった訳だが、まだセラドリックは魔法の勇者の仕業だと気が付いていない。

 いくら魔法の勇者が腐っているとは言っても、まさか勝手にデータを書き換えて人を貶めようとするなどとは思ってもいなかったし、もし調べその事がて分かればいくら勇者でも申し開き出来ないだろう…と考えているのだ。


 だが、証拠を残さず改竄するような手法を思い付いたからこその実行であり、いくら調べても魔法の勇者が改竄した証拠は上がって来ない。


 結果、村に逗留するセラドリックに捕縛命令が出てしまったのである。

 しかし動員された衛兵達も何故セラドリックを?と不思議に思いつつの行動であり、なんと不思議な光景が展開される。


 一応捕縛する前に容疑を述べるのだが、

「セラドリック様、強盗殺人とか強姦とか放火の容疑なんで、一応捕らえさせてもらいますけど…やってます?」

と、隊長も顔を頭を傾げる。


「記憶に無いが、寝てる時にやったと言い張られるなら自信はないぞ。

 と言うか、あんたらもおかしいと思うなら来るな」

「いえ…ルールなので…」


 おいおい、ルールって言うのなら、どこの現場で被害者は誰か、そう言うのをきっちり揃えてから捕らえに来いよ、と思うのだが。

 残念ながらこの時代の警察機構はかなりいい加減で衛兵の質はこんなレベル。

 捜査能力なんて期待するだけ無駄なのは前々から知ってるが、いざ自分が被疑者となるとさすがにこれは納得が行かない。


「俺が誰をどこで殺してどこを燃やしたんだ?

 説明してくれないと、俺もハイハイとついて行けないぞ」

「それはそうですが、ルールなので」


 うわ、これは腹が立つを通り越して呆れてしまう。


 困った顔の衛兵達だが、その後ろから一組の男女がやって来て事態が急変する。


「勇者様がた!

 どうされましたか?」


 派手な服を着た剣の勇者と、やたらセクシーな衣装の魔法の勇者の二人組である。

 三十才を超えて、大人の色気をプンプンさせている魔法の勇者はキャバ嬢か何とか姉妹かと言いたくなる。

 恐らく体も魔法でかなり弄っているのだろう。


「魔王セラドリック。

 そなたには逮捕命令が出されているが、実は我々と行動を共にするなら罪には問わないことになった。

 なに、たいしたことではない。ダンジョンを一つ、攻略するだけの簡単なお仕事だ」

とイヤらしい顔を見せるのは、剣の勇者だ。

 名前は確か、北神一孝、ホクシンイッコウだったな。


「魔界に通じるゲートがあってな、少しばかり魔界の品も手入れられるそうじゃ。

 出て来る魔物はA五ランク揃いらしいけど、イッコウ、セラドリック、そして私が居れば雑魚も同じよ」


 そう言って笑みを浮かべるのは魔法の勇者の間木野真那、マギノマナというどこから見ても魔法の申し子のような名前である。


「セラさんもアイテムボックス持ちだろ、今から行って大丈夫だよな?」


 イッコウは俺のことをセラさんと呼ぶ。

 俺はこの世界生まれで世良なんとかと言う名前ではないが、どうせ転生者なんだろ、と勝手に決めつけているのだ。

 確かに転生しているが公表はしていない。

 この世界に馴染む為に不便な生活に耐えて暮らしていたので、俺が転生者だと彼ら以外は信じていないのだ。


 だが、アイテムボックスと言うスキルはどうやら転生者しか知らないが転生者特典らしく、それでバレたのだとか。


「そのダンジョンを攻略すれば、本当に逮捕されないんだな?」

「ああ、俺がそう国王に働きかけたからな」

「嘘言わない、それを言い出したのは私よ」


 つまりコイツら、俺を動かす為にワナを掛けたってことか。

 魔界に通じるダンジョンはキリアスでも最も難易度の高い危険な場所である。

 だが、人間をやめていると言って良い勇者達が居れば、攻略はそう難しくないと思われる。


「分かったよ、付き合うから俺の家族には手を出すなよ」


 家族と言うのは魔物達のことである。

 俺は四十を過ぎているが独身なのだ。この世界の女性とはどうも合わないらしく、身の回りには魔物ばかりが増えていく。


「ライガー、俺が戻るまでうちの管理を任せたぞ」

『仕方ない、早く戻って来い』


 ライガーは白い犬に見えるが、実はかなり知能の高い狼の魔物である。

 フェンリルとは違うらしいが、レアな魔物であることに間違いはない。


 ライガー一匹でも騎士十人以上の戦力を持つのだから、衛兵達も怪我をしたくなければ、下手に俺の家族には手を出さないはずである。


 こうしてイヤイヤながら、急に二人の勇者と共にダンジョンアタックに向かうことになったのだ。

 




 




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