第44話 とりあえず目を治してから…
世界樹の神様の治療が終わり、目を覚ましたは良いが見えかたがおかしい。
それに今度は魔力が漏れすぎて、魔王みたいになっているらしい。
「パパ! とりあえずヒーヒーフーなのです!」
「子供生む訳じゃ無いんだし…」
「どうやら、頭は正常みたいなのです。
魔力がノーコン過ぎて目が見えないとなると…魔力を押さえるサングラスを掛けるしか手が無いのです。きっと目から光線を発射するようになるのです」
どこかのアニメのヒーローかよ?
「そうならないように、訓練するよ。
で、魔力の放出を抑えるような道具はない?」
「おしゃぶり型のアイテムならすぐ渡せるのです」
「そんなのは却下だよ。
指輪とかアクセサリー系のは?」
「まふー…指輪じゃ普通過ぎてつまらないのです」
二十歳前でおしゃぶりなんか咥えられるかよ。
まだ電子タバコ的なアイテムなら救いはあるけとど、俺はタバコも吸わないし。
「あの…クレストさん!
目が見えないだけで、体に異常はないのね?」
そう聞いてきたのはエマさんだ。
「うん…変な感じがあるけど…多分魔力に慣れてないからだと思う…エマさん達から見てどう?」
「見た目は元通り…でも魔力が…普通を軽く超えてて笑うしかないわ」
「ホントね…前も凄かったけど、人間の持てる魔力なんて一桁は超えていると思えるわ。
アルジェンちゃん、クレストさんの中に何か入れたの?」
「私は特には…」
アルジェンが俺の頭、頬、胸…とあちらこちらを調べるように叩いていくので股間はガード。
「…パパからアーミンの魔力を感じるのです…いつの間に浮気したのです?」
「アーミンが来てたの?
あんな状況でっ…て、今はどんな状況?」
確か…夜中に突然急死するから仮死状態にするぞと骸骨さんに言われて、後のことは一切分からないんだよ。
元々世界樹の下に来る予定だったからここに居るのは正解だけど、エマさんとオリビアさん、それにアルジェン、ドランさん、カオリとスライム達しかここには居ない。
「あ、スライム達とのリンクが戻ってるっ!」
目はまだおかしいけど、俺の後ろにクレール、斜め前にラルムとピエールが居るのが分かる。
エマさんとオリビアさんも、魔粒子の集合体が人の形になっているのが認識出来る。
後ろを振り向いて見ると、世界樹はまるで太陽のように光り輝いていて直視は出来ず、手で目を隠す。
パタパタとドランさんが飛んで来るのと、カオリがシュッと触手を伸ばして俺の体に巻き付けて登って来るのも魔粒子の動きで確認出来る。
そう言えば、サウザスさんが精神体の魔物を見付けることができると言ってたのは、こう言う感じで見られるようになるのかな?
それなら俺も魔熊に入り込んだ魔物を…いや、魔熊は触ったら火傷では済まないから、精神体の魔物が見えるようなになっただけじゃ倒すのは無理だ。
魔熊の熱を奪わないと、まともに戦うどころじゃない。雨が降ったぐらいじゃ大して変わらないだろうから、環境破壊レベルの攻撃で冷やしてやらないと。
「あの、アーミンの魔力がクレストさんから出てるって、お守りに置いていった鱗のせいじゃない?」
たエマさんがまだ少しびびった感じの声で話す。
「王都で貰った一枚は上着のポケットに入れたから、それ以外にアーミンが置いてったってこと?」
「そうなの、痒い時に地面に転がったら鱗が剥がれるって言ってたわ…その三枚をクレストさんの体に乗せてったの」
ドラゴンの鱗の価値が一気に暴落するような情報はともかく、アーミンの鱗のせいで今度は魔力が多すぎる?
人並みのレベルが一番なんだけど、俺の魔力量って上下の振れ幅が酷すぎない?
「世界樹の葉が消えた時に鱗も一緒に消えたのかしら?」
「ドラゴンの鱗は魔力で出来ているので、マジックアイテムとしても使えるように出来るのです。
恐らくパパが治ってから魔力不足で困らないよう、魔力量が増えるような術式をアーミンが組み込んだのだと思うことにすれば良いのです」
「つまり、アルジェンにも本当のことは分からないんだね?」
「…黒龍は魔界蟲を餌にするような化け物なのです。
私達に不可能なことでも鼻歌ついでにやってしまうような変態なのです。
理解しようと思ってはいけないのです!」
アーミンに魔法の能力で劣っていると分かってか、少しアルジェンが落ち込んだように思える。
「アーミンにはアーミンにしか出来ないことがあるように、アルジェンにはアルジェンにしか出来ないことがあるんだ。
落ち込むことはないんだぞ。
まずはこの目を見えるように治さないと」
「そうなのですっ!」
私にしか出来ないことは沢山あるのです!
今からアルジェン式アーユルベーダでパパの目を治すのです!
余分な魔力を目から排除するのです!
トコトコトコって感じで魔力をあっちにポイなので…違うのです!
それじゃドコドコドコな感じなのです!」
アルジェンが指導者に向いてないの、忘れてたわ…
それから結構な時間が過ぎて、お腹が空いてきたと思えるようになってきた頃、やっと魔力を見るモードから普通の目のモードに切り替えることが出来るようになった。
「疲れた…けど、エマさん、オリビアさん、アルジェン、ドランさん、カオリ、ラルムにピエル、うん、みんなはっきり見える!」
見えて当たり前だったのが急に見えなくなると、人生お先真っ暗だからね。
やっぱり五感はどれも失ったらダメだと改めて思う。
「普通に見えるようになったら、次はその視界にさっきまでのマナビジョンモードと併用して見えるようになると便利なのです!」
「それは追々やってくよ。
休憩させてよ。マジ疲れた」
肉体的には疲れていないが、魔力が暴れまわる感じでかなり扱いにくく、コントロールにかなり気を使わなければならない。
精神的な訓練が苦手な俺には、繊細に魔力を操ることが出来るようになるための訓練は鬼門と言えるだろう。
魔力量にものを言わせてブイブイやってる方が絶対ラクだ。
ここで手助けしてくれたのはオリビアさんだ。
ルーチェに魔法を教えているだけあって、魔力の扱いを教えるのはアルジェンよりよほど上手…魔界蟲に教えを乞うこと自体が誤りな気がするのは気のせいか?
ゆっくり休憩して適当に訓練をして、気が付けば時間的には夕方近くか。
「強い人とアヤノ達が来てるのです!」
俺たちよりずっと感覚の優れているアルジェンがいち早くスオーリー副団長一行の到着を察知し、ドランさんと二人でパタパタと出迎えに飛んで行く。
「副団長まで来たのか。
王妃様の帰りの護衛役だから、俺が戻るまで仕事はなかったってことかな?」
「そうね、王妃様は王都とリミエンの商店の橋渡しをするつもりでリミエンに滞在していると思うからね。
単にあなたが治るまで遊んで過ごしているなんてことは無い筈」
「でも約二週間も余分にリミエンに滞在してて良かったのかな?
王都には王妃様の仕事があると思うけど」
「それなら多分、シャーリン王女に任せるつもりで来てると思うわ」
エマさんも短期間に王妃様のことが良く分かってるみたいだな。
王妃様はかなり頭の回転も早いようだし、実践主義的なところもあるから、自分が居ない状況を作ってシャーリン王女の教育もしてやろうと考えていたに違いない。
それが元々は約二週間だったのが、俺のせいでプラス二週間になった訳だが。
もしシャーリン王女にまた会う機会があったら、絶対文句言われるよな。
それからそう待つ間もなく、副団長達がカラバッサを牽いて到着した。
「クレスト! 元気になったようじゃな!」
と真っ先に副団長が俺に近寄り、頭をパシパシ叩く。
「前より魔力が増えておらんか?」
これでもオリビアさんの指導の成果でかなり漏れ出る魔力をセーブ出来るようになってる筈なんだけど。
「アルジェンから聞いたが、もっと魔力を抑えられるようにならんと町には戻れんぞ。
強すぎる魔力は当てられるだけで体調を悪くする者もおるからのぉ」
それを利用して攻撃したことが一度だけある。
あの時は意図しての攻撃だったが、今は副団長に魔力汚染みたいな扱いを受けている訳だ。
「ヘイヘイ、もう少し今の体に慣れてから帰りますよ」
「そうせい。せっかく最奥まで来てトンボ帰りは敵わんからな」
遊んで帰るつもりかよ…。
「クレストさん、無事に治って良かったわ」
「だから心配無用だと言ったでしょ」
「そう言うセリカが、一番しょげてたんだよ」
「クレたんは毎回何かやらかしてくれるけど、こう言うのは今回限りにしてよね。
リーダーもセリカもサーヤも凄い落ち込んでたんだから」
マーメイドの四人がいつものように一言ずつ述べていく。
みんな一様に疲れている感じと、ほっとしたって言う感じに見える。
うん、副団長を相手にするのに疲れたのだと思うことにしよう。
「よし!
今日は久々にうまい飯を食おうじゃないか!」
そう副団長が声を上げて腕を突き上げた。
「アルジェンスペシャルを希望するのです!」
アルジェンがアイテムボックスから食事のためのセットを出しては、皆で仲良く並べ始める光景に生きてて良かったと素直に思う俺だった。




