表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/68

第42話 王城と商業ギルドにて

 ダンジョン最奥にオリビアも無事に?到着することが出来た。

 精神的には多少のダメージを受けたかも知れないが、恐らく許容範囲。


「クレストさんの容態は?」

と、出迎えたエマにいの一番にそう質問する。


「それと、葉っぱに覆われているのは…エマさんがやったの?」

「違うわよ。そんな子供みたいなことはしません。

 容態は安定していると言えば良いのかな?」


 外から見た感じでは殆ど変化が見られない。

 良く言えば悪化していないと言えるが、ただそれだけ。


「それより予定より随分早い到着だけど、何か危険なこと、したんじゃない?」


 エマにそう問われ、オリビアがアルジェンと口論しているドランにチラリと視線を送る。


「普通じゃ出来ない体験をしてきたわょ。

 しばらくは鎧なんて着たくないかな」

「空を飛べる鎧?

 いつも樹を伐るのに使ってるやつのこと?」

「えぇ…何故かモチーフがカミキリ虫なのに、斧を持ってるアレよ…着たら飛べるとは知らなかったわね」

「でもカミキリ虫なら飛べるでしょ?」

「本物の虫ならね…エマさんも飛んでみる?」


 オリビアの疲れた様子にエマは首を横に振る。

 ノラ何とかと言うバンパイアに空を飛ぶ魔法を掛けてもらい、一度だけ飛んだことがある。

 そして地に足がついていないと不安しかないと実感しているからだ。


「クレストさんが治ったらお願いしてみるわ。

 ビアレフが量産出来たら、荷物の輸送も楽になりそうだから」


 そのビアレフはミハルが居ないと運用出来ないし、ミハルが貯めた魔力を消費して生み出すものなので何体も同時に動かすことは不可能だ。

 それにビアレフタイプの魔道鎧を増やすには、先にミハルのような魔物を増やす必要があるが、ミハル自身もウルトラレア級の魔物なので確保するのは難しいと言うレベルではない。


「そうね、早く治ってくれないと…」


 クレストならビアレフの増産に賛成するだろうと、そこは気軽に考えることの出来るエマはクレストに毒されていると言って良いだろう。



 クレストの容態が急に悪化したとの情報は、王城内でもすぐに拡散していた。

 しかも運悪く王妃がその時にリミエンに滞在していたのだ。


「サリーはしばらく帰ってこないだろうな」

「恐らく…さて、どうしたものですかな?」


 国王の執務室で国王と宰相の二人が眉間に皺を寄せながら、今後の対応を検討している最中にドアがノックされた。

 二人に来ると予想されていたのはエリック皇太子であり、その予想は見事的中…と言うか、ノックの仕方で分かっていたのだが。


「国王陛下、クレスト殿に異変が起きたと言うのは、事実でしょうか?」

と入るなりエリック皇太子が確認を取る。


「あぁ、それでアーミンがドランさんに呼ばれて出て行ったらしいからのぉ。

 アーミンに治療が出来るのか、それとも移動の脚に使うのかは聞いておらぬが」

「デマではなかったのか…詳細に関しては?」

「今は何も分かっておらぬ。

 アーミン本人がなるべく早く戻って来ると言ったそうだが、そう願うしかあるまい」


 クレストをマスターと慕うアーミンがそう簡単に戻って来るとは、この場に居る誰もそう思わなかったのだが。

 クレストありきで立てていた今後の計画を至急修正せねばと頭を悩ませているところに、アーミン帰還の連絡が入ったのだ。


 白いオコジョに戻ったアーミンが廊下をパタパタと飛んで渡り、執務室へとやってきてメイドにドアを開けてもらう。


『今しがた戻ってきたぞ。

 詳細は伏せるが、マスター・クレストは治療の出来る者に預けてきた。

 が…悪ければ五分五分と言うところだな』


 可愛い姿とは裏腹に喋り方は実に偉そうであるが、ドラゴンには人間の理屈が通じないのだから誰も注意はしない。

 むしろ子供が大人ぶっているようで、微笑ましいと思われているのだ。


「そうか…アーミンがこれだけ早く戻ってきたと言うことは、助かる確率の方が高いと考えて良いのだろ?

 いや、そう思わせてもらおうかの」


 予想外に軽症なのか、それとも治療に不安が無いか、そうでなければ午前に出て午後に戻って来られる訳がない、そう国王は考えることにした。


「それであれば、アーミンもマジックバッグを使った移動が出来ると言うことが知れたのは、不幸中の幸いと言えるな」

『残念だが、我一人では移動は出来ぬよ。

 ドランに入らねば、我でもマジックバッグに弾かれるのだ』


 少しドランは凄いだろ!的なオーラを発しながら語るアーミンは、意外と同族意識が強いと見える。

 仲が悪いより仲が良い方が周囲も幸せなので、敢えて誰もそこに触れることはしない。


「そうか、ドランさんはまだコドモドラゴンなのに大したものだな。

 うむ、次に来た時にはオヤツを少し増やしておいてやるかの」

『それなら我の分も頼むぞ』

「勿論、お主の分もだ」


 戦っても勝てる相手ではないのだが、食べ物でご機嫌が取れるのなら安いもの…結局誰もがその結論に到達してアーミンには甘々な対応になっていくのだ。


 本当ならもう少し詳しくクレストの話を聞きたいところだが、本人に話すつもりが無いと察して素直に諦めた国王の判断の早さは一流と言える。

 もっとも、詳細に語られたところで国王達には理解不可能なので、お互い無駄な時間を消費することになるだけだ。

 アーミンもそこのところを理解しているので話さないのだ。


「しかしサリーはこの件にかこつけて、本気でリミエンに逗留するだろうな」

『サリーとは人間達を仕切っておったオーヒのことか?

 恐らくマスター・クレストが戻るまではあの屋敷に残るだろうな』

「…やはりか、こうなるとテコでも動かん。

 サリーの代わりはシャーリンに勤めさせるか」


 王妃にもそれなりの仕事があるのだが、国民の前に出るような機会はそうはない。

 大抵はそこらの貴族の婦人の対応なので、若いシャーリンにはまだ荷が重いのではないかと不安になる国王だが、王妃が戻ってから望みを一つかなえてやるのを餌にし、上手く働いて貰おうと算段を巡らせる。


 話は終わったと執務室を出て行くアーミンを見送った三人は、一日も早いクレストの回復を心から願うのだった。



 昨日、商業ギルドでクレストが倒れたことは、ガバルドシオン、キャプテンクッシュ、そして他のクレスト関係者の耳にも入っている。

 ガバルドシオンに関しては、バルドーとガバスの親方二人組が何とか皆を纏めることに成功して大きな混乱は生じていない。


 キャプテンクッシュは新商品の開発をガバルドシオンのキッチンで行っている関係上、こちらもそう問題は無いようだ。


 だが、まだ職場となる温泉旅館が出来ていない状態でクレスト不在となった舞台関係者達は、必然的に大きな混乱に巻き込まれるしかなかったのだ。


 バッシロ・シアスタ夫妻、役者志望のアリア(転生者)、男性アイドル候補のアルバス君、音楽家のガルディ、そして楽器職人のバリス、そして問題児のアイリスの七人である。


 彼らは皆がブリュナーによってアパートに部屋を用意され、クチ約束だけだが数ヶ月は家賃免除で住まわせてもらっているのだ。

 それがもしクレストが急逝するようなことがあれば、居住権だけでなく掴み掛けている新天地での職まで失うかも知れないのだ。


 それだけ現在のリミエンに於けるクレストの影響力は大きく、本人が思っている以上に彼らの支えとなっているのだが、自分に何かあったときの保険をかけていなかったと気が付くにはもう遅い。


 ここでクレスト不在の穴埋めとして商業ギルドが目を付けたのがルケイドである。

 クレストと話も合っているし、クレストも何かとルケイドには目を掛けていたので人選として妥当というか、他の者ではアイドルグループのアの字も出てこないのだから辞退するのは目に見えている。


 リミエン黒龍事件の翌日には商業ギルド三階の建国百周年記念 特別対策本部に招かれたルケイドに対し、レイドルがクレストの後を継ぐよう頼みこんだのだ。


 既に薔薇回廊の手伝いを頼まれているし、呼び出しが来た時には丁度紅のマーメイドがアーモンドの栽培をおねだりしていたところだった。


「ひょっとして、僕はリミエンで一番忙しい十五歳になりませんか?」

「昔から、仕事は忙しい者の元に集まるものだと相場が決まっている。それが改めて立証されただけで、何もおかしくない」


 本心からそう思っているレイドルが静かに紅茶を啜ると、

「クレスト君の執務室に薔薇関係以外の資料は揃っている。

 書きかけの設計図も有って中々楽しい場所になっているはずだ」

と、勝手に人の秘密を打ち明けるような顔を見せる。


「伯爵様用新型馬車、高速回転機構、穀物処理装置、印刷機、製紙機のラフスケッチなど、宝の山に違いない」

「穀物処理装置? 精米機のことかな?

 それに印刷機と製紙機って、気が早すぎるよ…でも見てみたいし…分かりました、クレストさんが復帰するまで代打に立ちます」


 好奇心に負けたルケイドが、忙しすぎると泣きたくなるのはそう遠く未来の話である。

だいぶ良くなったと思ったら熱が出た…中々コロナが消えなくて大変です…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ