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第30話 詰まるのです!

蛇足の番外編をこの回の次に1話付けています。

明日から第2章に入ります。

 ルケイドの家令が決まった…実は知り合いのおじさんが凄い人だったパターン。

 もう、来週から主人公はルケイドで良くない?


 詰まらない冗談はさて置き、屋敷の交換の話はブリュナーさんと王妃様には高評価を得た訳だが、肝心のルケイドのオヤジさんには話をしていない訳だ。


 爵位を失い貴族区画から立ち退きしなければならない人だから、それ程気を使う必要は無いかも知れないけど、一応現大家さんだからね。

 一応、筋は通しておかないと角が立つ。


 一度挨拶しに行かないとダメかな。

 次男がどうしようも無いボケナスだったし、判断力が今一つの良いところが思い付かない人なので、あまり会いに行きたく無いんだけどね。


「明日にでもカンファー家に参りますか」

「明日? そんなに急がなくても」

「いえ、カンファー家とルケイドさんの屋敷の扱いは伯爵様の中でも頭の痛い問題の筈です。

 新興貴族ですから財産が無くて当然ですし」


 恐らく支度金的なモノは伯爵様から少しは出してもらえるだろう。

 でも貴族の屋敷の維持費ってかなりの額になるだろうから、初年度は赤字スタートなんじゃないかな?


 それで悪い商人にお金を借りて、ズブズブの関係になってくってストーリーが生まれる訳よ…勝手な妄想だけどね。


「ウチの経済事情ってヤバくない?

 カラバッサとか開墾とか森のダンジョンに結構注ぎ込んでるんだけど」


 ルケイドが居るから、リミエン商会のことは言わない。表向きは俺は関係ない事にしてるからね。


 ブリュナーさんが懐からメモ帳を出し、真ん中ぐらいの所を開く。


「お預かり金は半分程使っていますが、親方様が色々と動かれた成果が上がって来ております。

 来月は大銀貨二百から三百枚近くの収入がある見込みです」


 三ヶ月程で五億ぐらいは使ってるのか。

 元々俺が死ぬまでに骸骨さんの遺産は使い切るつもりだったけど、月収三百万もあるなら大きな消費をしないと使い切れなくなりそうだ。


「何でそんなに入ってくるの?」

「文房具やマナバッテリーの売上の1%が親方様の収入になりますからね」

「えーと、それって占有販売権のある期間だけだよね?」

「いえ、三十年間は継続されますよ」


 特許権じゃなくて著作権みたいな扱い?

 制度に文句を付けても仕方ないけど、そんな話は聞いてない。

 それを言うと、レイドルさんには聞かなかったお前が悪いと言われるだけだろう。


「なので、オヤツ代をケチる必要はございませんね」


 遊びに夢中でここまで話に入って来なかったチビっ子達だが、それを聞いて一斉にワーイ!と手を上げ喜ぶど、みんなしてブリュナーさんに飛び付いた。

 どうやらブリュナーさんもあの子達には甘々らしい。


「ですが、ドランさんには週に一度ぐらいは森のダンジョンに狩りに行って欲しいですね。

 ラビィ殿も新人冒険者の護衛任務など受けるのはどうでしょう。

 お二人とも良い能力をお持ちなのですから、遊んで食べて寝ての繰り返しだけでは勿体ないかと」


 オヤツあげるから、少しぐらいは働けってことですか。


「週に一回ならええで」

『私もそれぐらいなら問題無いかな』


 出来ればお休みの日を週に一回にして欲しいけどね。


「私はどうすれば良いのです?」

「アルジェン殿は、親方様の傍で護衛をしてくだされば問題ないかと。外に出てもそう騒がれることは無いでしょうからね」


 ラビィとドランさんに仕事があって、自分に仕事を任されなかったのがアルジェンに不満だったらしい。


 カオリは我関せずだけど、カオリには種をたくさん作ってもらうつもりだから問題ない。

 ついでにカオリジュニアが生まれるなら、薔薇回廊の管理をジュニアに任せられないか相談したいものだ。


「あなた、本当にカンファー家の御屋敷に引っ越すの?」

とエマさんが不安そうな、それでいて少し嬉しそうな顔を見せる。


「問題ないみたいだし、そのつもりだけど。

 エマさんは何か気になるの?」

「…あの…お風呂とかおトイレとか最新になってないよね?」


 広さは十分でも、設備的には旧式だったか。

 カンファー家には改築するお金が無いだろうから…うん、俺が出すしか無いのか。


「分かった、改築させてもらうように交渉するよ。

 俺も今の家に慣れてしまったから、不便に逆戻りしたくないから」


 人は一度贅沢に慣れると、前の暮らしには中々戻れないもんね。



 夕食の後の雑談も終わり、お風呂に入って自室に戻ってくる。

 カオリは王妃様と一緒にお風呂に入ったらしい。カオリでも薔薇風呂の効果があったらしく、王妃様がご機嫌だった。

 エマさんとシエルさんがその後に入っている最中だ。


「さてと、アルジェンに頼みがあるんだ」


 パジャマに着替えてカオリとお手玉投げで遊んでいたアルジェンに声を掛ける。


「何でも言って欲しいのです」

「うん、ありがと。

 王都で倒したスライムの魔石を吸収して、魔力欠乏症を治したいんだ」

「…レアスライムの魔石を吸収です?

 それで魔力欠乏症が治るとは思えないのです」


 カオリの投げたお手玉をノールックで受け止め、すかさず投げ返すとは、視野角が凄く広くて反射神経がバッグってことか?


「骸骨さんに教えてもらったんだ」

「出て来たのです?」

「いや、倒れてる時に会った感じかな」


 あの人が俺の何処に居るのか分からないし、会いに行こうと思って会える訳でもないだろう。


「あの魔石は特殊な感じがするのです。

 下手に手を出すと、パパに危険が及ぶ可能性があるかも知れないのです」

「そうなの? 元の俺の一部みたいな物なんだよ」


 二つに分かれた俺の半分だから、遺伝子的には適合率が百%だと思う。

 魔石に遺伝子があるのかどうかは知らないけど、魔力には人それぞれに固有のパターンがあって、それでアルジェン達は人を離れた場所に居る人を感じ分けているそうだからね。


「ドラゴンの骨でも斬れる技で斬れなかった変態魔石なのです。

 恐らくガードをガチガチに固めて、簡単に吸収されないようになっていると思うのです」


 素直にアイテムボックスから魔石を取り出してくれたけど、両手に持つとそんな事を言って渡すのを躊躇っている。


「変態かどうかはともかく、一度試しても良い?」

「やるなら先っぽだけにするのです。

 下手に入れると痛いし傷が付くのです」


 誤解されないように言っとくけど、物理的に入れる訳じゃないからね。


「魔石の吸収に先っぽとか関係ある?」

「個人の感想であって、効果には個人差があると言うやつなのです」

「詐欺商品の広告みたいだな」


 アルジェンが俺の差し出した手のひらに魔石を乗せて頭によじ登ってくる。


「パパなら分かると思うけど、魔石から吸収出来る魔力量は、体内の魔石の性能で決まるのです。

 その魔石が壊れている状態で魔力を吸収するのは、危険な行為なのです」

「…マジで?」

「血栓に更に大きくなる成分を与えるようなもので当然なのです」


 言われてみれば確かにそうだな。

 魔石が壊れると魔力に分解されるから、物理的に何か残る事はない筈だけど、血管の中に魔力粒子となって流れている魔力が何処で固まるのか分からない。


 元のあった位置に出来れば問題ないけど、血管を塞ぐように出来たら心筋梗塞か脳梗塞か…。


「なので、もしやるとしたら世界樹の下でやるのをお薦めするのです。

 あそこなら本体さんも居るし、世界樹が手助けしてくれるかも知れないのです」

 

 魔界蟲本体さんに外からサポートを受けられるの?

 それなら何となく大丈夫そうな気がするけど、勿論根拠はない。


「でも…」


 珍しくアルジェンが言葉に詰まっている。

 何か気になることがあるのかな?


「もしパパの魔力が元に戻ったら、パパの中に入れなくなる気がするのです」


 アルジェンを出し入れすること自体が危険なことだと教えてやれれば良いけど、それを正面切って言うのは躊躇ってしまう。


「そうなると折角KOS(ナイトオブシルバー)をデザインしたのに、使えなくなるのです」

「ソイツは色を変えただけのパクリだから仕方ないよ。

 素直に諦めようよ」

「でもセキネさんを倒すには、絶対KOSが必要だと思うのです。

 向こうもチートな装備を使っているので、普通にやって勝てるとは思えないのです」


 出来ればセキネさんとは二度と会いたくないんだけど。

 出来れば鋼鉄王による倒して欲しいけど、サシで遣り合ったからあの人の異常な強さはよくよく分かっている。

 鋼鉄王が無傷で勝てる保証は無いし、勝てると保証出来ないのだ。


「アルジェンが外からKOSを操れるようになれば、稼働時間も延ばせるんじゃない?」

「中に入って操る感覚が楽しかったのです。

 マスタースレーブ方式からリミテンドースイッチに代わってしまうのです」


 それはそれで楽しいと思うよ。


「俺の体に不安がある状態を放置出来ないから、スイッチかジョイスティックで我慢してくれ」

「ワンプレーに大銅貨一枚投入させるつもりなのです?

 それなら両替機が欲しいのです。

 それと今から十連コンボの特訓を始めるのです」

「俺、アーケードゲームじゃ無いんだけどね」


 そんな馬鹿な話をしながらも、クアッドコアスライムの魔石から魔力を吸収しようと試みる。

 だが他の魔石と違って魔力が全然流れてこない。


「プロテクトが掛かっている感じで吸収出来ないや」

「きっとお約束の結界的なヤツで、魔界蟲の泉に投げ入れて浄化すると使えるパワーアップアイテムなのです。

 浄化は周回プレーを強要されて、プレーヤーが離れて行くパターンなのです」

「だから、これはゲームじゃないの」


 前世の記憶を共有出来るのは有難いけど、真面目な話の時にオチャラケするはやめて欲しい。


 ここで頭に薔薇を刺してエマさんが部屋には入ってきた。


「カオリちゃんのお風呂のお供に最高ねっ!」

「カオリ、のぼせてないよね?」


 二人の長風呂に付き合ってるからカオリが心配。


「お湯がローズヒップティー代わりなのかな?

 ずっと元気だったわよ」


 つまり自分の体から出た成分を吸収しながらまた出すって言う、薔薇成分の永久機関な訳?


 ベッドに腰掛けたエマさんから甘く良い香りがフワッと漂う。

 視線を動かすと魅力的な女性の胸の膨らみについ下半身が反応し、エマさんに腕を回してしまう。


「昨日もしたし、今日は倒れたばっかりなんだからダメ!」

「えーっ、大丈夫大丈夫!」

「パパ、そう言う時に先っぽだけって言うのです!

 サイレントサークルっ! 準備オッケーなのです!」


 パタパタと飛んでは照明を消して回る出歯亀妖精擬きに苦笑しながら、エマさんを抱き寄せる。


「本当に大丈夫なの?」

「エマさんが魅力的過ぎるからイケないの」

「もう、そう言う時はクチが上手いんだから」



「父さん、ちょっと良い?」


 自宅に戻ったルケイドが久し振りに父親に話し掛ける。

 家の処分を巡って大喧嘩してから、同居しながら別居している状態がずっと続いていたのだ。


 そんな息子は今やリミエンの中でも大注目を浴びるまでに成長し、反対に父親さ自分の無能さにしょぼくれている。


「この屋敷のことなんだ」

「カンファー家として維持するつもりは無い。無駄に広くて敵わんよ。

 来年、お前が男爵位を得るのが決まっていても、この屋敷を維持し続けるのは厳しいだろうな」


 家を手放さざるを得ないことは、幾ら出来の悪い父親でも理解出来ているようだ。


「うん。その事でクレストさんから提案があってさ。

 今のクレストさんが住んでいる屋敷とこの屋敷を交換しないかって」

「彼の屋敷と?」


 一度だけ訪ねて行ったクレストの屋敷は、二十歳前の青年が買い取り改築したとは思えぬ物件であることを思い出す。


「リビングで土下座したが、脚が痛くならなかったな」

「…何をやってんだか。と言うか、よその家のことで思い出すのが土下座って悲しくない?」

「ディアーズが馬鹿をやったせいだ。仕方ないだろ」

「そう言う教育をした自分のせいだと思うけど」


 自分のことを棚に上げて、兄貴だけを悪者にするのは違うよね。


「で、屋敷を交換して彼がここに住むのか?

 彼は爵位を持たないが、それは問題ないのか?

 我々が彼の屋敷に住むのは問題ないが」

「それは大丈夫らしい。王都での子爵位を受けるのに相応しいぐらいの活躍をしたらしいから。

 内容はそのうち正式発表があるそうだから、楽しみにしててよ」


 公式発表と違うことを言うのはマズイから、そう言う事で今は誤魔化しておこう。


「それなら良いとして。

 我々が向こうの屋敷に移動するとして、お前は何処に住むんだ?」

「同じ屋敷だよ。

 家令以外に屋敷を管理してくれる人が必要だけど、雇うお金が無いから家族を頼るしかないんだし」


 ラスティおじさんが家令になってくれるか分からないけど、出銭を減らすには外部の人を使うより家族を使うべきだからね。

 父さん達が心を入れ替えて働いてくれることを祈るだけだね。

 だらしないとラスティさんの豪腕が炸裂するらしいから、教育係にもちょうど良いと思う。

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